忍峠の入り口には金比羅大権現の石塔が八個程建っているが、これは昔”木流し”が盛んだった頃、松崎の人達が身の安全と商売繁盛を願って四国の金比羅さんにお参りし講中を結んで建てたものだと云う。金比羅はインドから渡来したものでサンスクリッド語ではクンヒーラと言い、ガンジス河の鰐を神格化したもので、仏法の守護神で水に関係ある金比羅と鰐が融合し、日本に登場しては河川や海上の水難救助の守護神として木流しや海運業者漁業に営む人達の守り神となった。
猿ヶ石川の木流しは昭和3年7月が最後となったが、それこそ昔の遠野-附馬牛間の木流しは組合道路が開通するまで松崎の忍峠を越えるか、矢崎を通る狭い道しか無かったので材木を運搬するには川を利用するしかない為に猿ヶ石川は木流しの場となっていた。昔、土方の賃金が四十銭の時に、木流しは一円も貰える手間の高い仕事だったらしい。
南部イカダ流し唄
1.エー 朝の目覚めに川の目見れば
流れも良ければ風も良い
2.エー 今日も下れよあの茶屋こ迄
日暮れ恋しい夜の夢
3.エー 木流し宿替え材木下に
後に残るは切れ草佳
4.エー 居たか居ないか今此所通る
居たら出て合え語り合え
5.エー 三日三晩の飛沫の旅よ
愛宕茶屋子の灯が恋し