誰も登るなと云われた山頂は、整備され祀られている。登るまでの過程は、下記↓を参照。
http://dostoev.exblog.jp/8452464/二郷山(637)は、綾織の南に面し、人嫌いの山であると云う。何故かといえば、二郷山へと登ると祟りを成すとして、昔から登山のならわしが無いというのだ。霊山として昔から伝えられ里人が恐れた為なのか、誰も山道を通さなかったのである。それは「遠野物語」でも紹介されている二つの物語が二郷山の霊的存在を、大きくしている為なのかもしれない。
二郷山に火入れした翌日には、必ず雨が降るという言い伝えもある。二郷様が、山を踏み荒らすのを嫌うそうなのだ。二郷山の神様は白き竜神にて、火を忌み嫌い、その証に雲を呼び雨を降らすとも…。とにかく里人は、二郷山を恐れ畏こみて伝える。最近になり、野山に蛇が少なくなった気がするのだが、この綾織でもまた蛇を目撃する事が無くなってきた。しかし蛇を見たいのなら二郷山と伝えられている事から、未だに二郷山は人嫌いの山であるからかもしれない。
遠野物語拾遺 37話
綾織から小友に越える小友峠には祠が祀ってあるが、この辺りの沢には稀に人目に見える沼があるという。その沼には、海川に棲む魚の種類はすべていると伝えられている。もしこの沼を見た者があれば、それが元になって病んで死ぬそうである。
遠野物語拾遺 165話
綾織村の17歳になる少年、先頃二子山に遊びに行って、不思議なものが木登りするところを見たといい、このことを家に帰って人に語ったが、間もなく死亡したということであった。 遠野物語37話(別バージョン)麓の里の某は、これほどの有名な山なのに登山しないとは勿体無いと、登山道を開拓しようと、家の者の止めるのもきかずに二郷山に入った。山腹で昼食を取りし後、飲み水を求めて沢に下り行く途中、思いがけなくも直径5、6尺ばかりの壺を埋めたような小池を発見した。池の底には小豆粒ほどの白石が敷きつめられており、清涼な水は何処から湧いて何処へ流れ流れているのか疑問に思った。その池の水は水晶の如く澄みきり、その中に青、白、赤、黒、黄などの魚が泳いでいたと云う。某は、魂を抜かれるほどに立ち竦みその池を見つめていたが、明日には友達を誘って、この魚を獲り、自分の池に放してしまおうと、手頃の柴を目印に立てて帰ったのだと。
翌日、友人ら2、3人を誘って二郷山に登ったと。しかし目印の柴はあったが、小池も五色の魚もかき消すように失せていたと云う。何度も探したがついには叶わず落胆しているところに山の頂上より金床の如くの雷雲が現れ、たちまち里の上空いっぱいにその雷雲が広がったと思ったら、激しい稲妻が走り始めたので、恐ろしくなって一目散に山を降りて家路に帰ったそうな。
某は、家に帰るや体がだるくなり、熱も上がってしまったと云う。それ以来体調が優れず、その年のうちに死んでしまったと伝えられている。そうこの山は、誰も登ってはならぬ!山である。