阿修羅王堂の下に、底なし沼があったという伝説がある。この底なし沼に入ったら決して助からず、しかも死骸も上がったためしが無いとされる。それはこの沼に主がいて、一年に一度人身御供をあげていたのだと。もしも供えないと、その年は大荒れに荒れて凶作になってしまうのだそうな。それで明治時代になってから、人の代わりに稲を供えていたという。秋になると、この地域の人々はこの沼に対し、我先にと稲を投げ入れるという。
また沼の色は紺青色をなし、その付近の家々から牛・馬・鶏等を捕らえられ、甚だしきに至れば苗代を荒らし、水田を枯らす等、奇怪変化の事が多かったので、それから毎年苗を三把を沼に投じて、この沼を祀る様になった。しかし、この地域の者でこれを怠る者があれば必ず神罰があり、その苗が初秋には所を異にして現れると云う。