
遠野市文化財指定されている慶長10年「遠野妙泉寺真乗作」の駒形版木と一対の、早くから遠野早池峰神社から護符として広まった版木の1枚である。

この版木では衣を纏った人物が馬を曳いている図柄であるが、この人と思われるのが実は猿という事だ。「河童駒引き」で知られる馬と河童の話は遠野にも伝わるが、元々河童は川から這い上がると猿となるという説もある。元々河童自体が江戸時代の発生だと考え合わせると、この慶長年代では既に河童と猿の融合が始まっていたのかもしれない。
「西遊記」において孫悟空が天界において弼馬温という地位に甘んじていたが、元来猿が馬を安堵させる存在として古来から伝えられていた。遠野においても山神の神事などで、馬に猿の人形を乗せたりなどという風習があったのを考え合わせても、馬と猿の結び付きは深かったのだろう。


十二支で考え合わせると、馬は火気に位置する。また猿は金気に位置する。火と金は相剋関係に位置するので、馬は猿に強いという事になる。しかし猿は、水の三合にも属し、水が発生する存在でもある。水は火に強いという事から、猿は馬を押さえるという事にもなる。この陰陽五行の考え方が、猿と河童を結び付かせた要因ではなかったのだろうか?つまり河童と猿は、表裏一体の存在なのだと思う。また馬の最高位は龍になる為、猿と馬は水繋がりで密接な関係なのであった。その当時の思想や意識が、この版木に反映されいるものだと考える。ただ衣を纏っている為、更に座敷童子に昇華?