小烏瀬川の姥子淵の辺りに、新屋の家と云ふ家あり。ある日淵へ馬を
冷やしに行き、馬曳の子は外へ遊びに行きし間に、河童出でゝ其馬を
引き込まんとし、却りて馬に引きずられて厩の前に来り、馬槽に覆はれ
てありき。
家の者馬槽の伏せてあるを怪しみて少しあけて見れば河童の手出てた
り。村中の者集まりて殺さんか宥さんかと評議せしが、結局今後は村中
の馬に悪戯をせぬと云ふ堅き約束をさせて之を放したり。其河童今は村
を去りて相沢の滝の淵に住めりと云ふ。
「遠野物語58」
この姥子淵には道は無いので、密林とまではいかないけれど、藪を掻き
分け進まないと辿り着けない。また湿地帯でもあるので、足元には気を付
けないといけないなぁ。また…蛇…いますだ(^^;
ただし、遠野にある河童淵の中において、一番佇まいは美しいかもしれない。