遠野の不思議と名所の紹介と共に、遠野世界の探求
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「冥界との縁結び(其の十一)結」

「冥界との縁結び(其の十一)結」_f0075075_13040563.jpg
倉掘神社の"御利益"が縁結びであったのだが、文久年間(1861年~1864年)に普代村から縁結びで有名な卯子酉神社が勧請された。縁結びの御利益のある倉掘神社に、やはり縁結びで有名な鵜鳥神社が勧請され、それから神社名を卯子酉神社に変更したようだ。神社名を「鵜鳥神社」ではなく「卯子酉神社」にしたのは、それなりの拘りがあった為だろうと察する。ただし、この鵜鳥神社が勧請された文久年間は、1861年に大洪水が起き、それから大凶作と麻疹が流行り、遠野では多くの死者が出た、大変な時代であった。そんな時代に何故、普代村から縁結びの神を勧請し、神社名をも変えてしまったのか。恐らくだが、天保六年(1835年)に完成した堤防も決壊したと考えられる。遠野の歴史を顧みても、基本的には治水の歴史である。水を支配し、それをどう有効利用するか。その為には決壊した堤防を再び造らねばならなかっただろう。そんな時に、縁結びの神を勧請するというのは、考えられない。鵜鳥神社は、海上安全の神でもあるから水難除けにもなるのだろうが、海上から河川へというのも猿ヶ石川の治水を考えた場合、違和感を覚える。

ただ気になるのは「鵜鳥神社御縁起」の内容だ。源義経一行が、その地に辿り着いた時"朝夕紫雲のかかる西北の山を尋ねた"とある。その尋ねた山がそれと似た様な伝承が、やはり源義経一行が治承4年、武運を祈る為、村崎大明神を訪れたのだが、その時に源義経は藤花の紫色に染まった紫雲山にちなんで、社名を紫神社と改めたとの伝承を彷彿させる。この紫神社に祀られる神の本来は、松島大明神といい、安倍氏の祀っていた神でもあった。奥州藤原氏の祖である安倍氏の流れを汲むものであるから、源義経もまた紫神社へと参詣したと思うのだが、その系譜が鵜鳥神社へと受け継がれている気がする。その鵜鳥神社の本尊は、右手に白旗を持ち、左手に宝珠を持つ女神立木像であるという。「狐と瀬織津比咩」で書いたが、宝珠の系譜は塩盈珠・塩乾珠から来ており、鵜鳥神社の祭神に鵜萱葺不合命と玉依姫がいるように、海神祭祀が入り込んでいる。そして紫神社の松島大明神も、九州の安倍氏伝承の流れから與止日女と結び付く事からも、恐らくは「肥前風土記」に関係する與止日女神社の流れを汲んでいるのではなかろうか。

例えば「遠野物語拾遺33」も「肥前風土記」の流れを汲むものである。源義経の辿り着いた紫神社の創建は、大同元年であるようだが、東北の神社の歴史は大同年間から始まる。これは坂上田村麻呂が蝦夷国を平定して後、中央の文化が流れ込んで来た事から、神社の祭祀が始まった為でもある。その流れを察すれば、紫神社も鵜鳥神社も「肥前風土記」から発祥した與止日女神社の影響からの創建だろう。ただ、その與止日女だが、岩手県に多くの菊池氏が存在する事に関係するかどうかはわからぬが、九州菊池氏の主流である日下部氏が奉祭する母神に、蒲池比咩がいる。蒲池比咩(かまちひめ)は肥前国一宮である川上神社に祀られる與止日女(よどひめ)と習合していた。そして筑前糸島の桜井神社(與止日女宮)」で川上の與止日女は、瀬織津比咩と同神とされている。つまり與止日女とは、早池峯大神と同神であるという事になる。また、鵜鳥神社の御本尊が白旗を持つのだが、白旗は源氏を示すものであり、その根源は石清水八幡宮である。その石清水八幡宮は、その鎮座していた地名"白幡森"から白幡八幡宮と呼ばれていた。その白幡八幡宮の祭神は「淀姫神」となっている事からも、鵜鳥神社は與止日女と繋がるのだと考える。紫神社と鵜鳥神社の両神社に、源義経伝説が重なるのは偶然では無いだろう。その源義経伝説の背後には、奥州藤原氏の祖である安倍氏の信仰の導きが重なって来る。
「冥界との縁結び(其の十一)結」_f0075075_13035182.jpg
宮城県の紫神社と、普代村の鵜鳥神社。そして奇妙な事に、この卯子酉神社のある愛宕山や、目の前の猿ヶ石川にも源義経伝説が付随している。恐らく、同じ修験の流れで、遠く離れた宮城県と、岩手県沿岸の普代村、そして遠野が繋がっているのだと思う。更に言えば、同じ神の繋がりがあるのだと思えるのだ。しかし、その繋がりとは別に、縁結びの神が重なる様に勧請されたのかは、一つの呪術を完成させる為だと考える。その呪術とは、陰陽五行の循環である。

片葉の葦に、願いを書いた紙を結ぶ事で縁が結ばれた、というのが倉掘神社時代当初の縁結びの呪いであったようだ。いつからなのか、赤い布切れを使用するようになった。赤は、血の色、炎の色でもある。陰陽五行とすれば火気を意味し、方角は南であり、季節は夏。また古代から丹の色として、広く伝わっていた。また陰陽五行発祥の中国では、赤色はめでたい色として現代でも広く親しまれている。しかし、陰陽五行が伝わった日本では、赤色は必ずしもめでたい色だけではない。これは日本独自の解釈で起こったと云われるが、赤い色は「新生」を意味する。この新生の意味には、死んで生れ変る事も含む為、死の匂いが立ち籠るのであった。例えば、赤い鳥や赤い色は、死に関わりを持つと知られるのは、やはり血をイメージする為だろうか。例えば、名前を赤い文字で書いてはならないなどがある。また柳田國男「野鳥雑記」には、赤色を有する鳥が不吉を連想させる様々な事が書かれている。その吉凶を意味する赤い布切れを結ぶ事で、縁が結ばれるとされるのが、現在の卯子酉神社の呪術となっている。「結ぶ」は、息子や娘、または苔生すと同じ意味を持ち、万物を生み出す、もしくは成長させる意がある。そういう意味から"縁結び"とは、相手との関係を成長させる意味からも、血の契りとしての赤色が使用されるのは理解できる。

卯・子・酉は陰陽五行で言えば、それぞれ木・水・木である。五行とは、火・水・木・金・土であるから、火と土があれば五行循環がかなう。その火は、恐らく赤い布切れがそうであろう。倉掘神社であり、後に卯子酉神社となったのだが、その縁結びはあくまでも表面的な御利益に過ぎないと考えている。先に述べた様に、鵜鳥神社が勧請され、卯子酉神社になったのは、あくまで大洪水がきっかけであったと考えるからだ。陰陽五行で、水を剋するのは土だ。その土の強化の為に、鵜鳥神社が勧請された筈である。
「冥界との縁結び(其の十一)結」_f0075075_13032005.jpg
倉掘神社を調べていて、「クラ」は柳田國男に言わせると神の降りる場であり、籠る場でもある。掘るは、そのまま穴を掘るであるから「倉掘」は「穴を掘って神を埋める」意では無いかと考えていた。「クラ」をさらに調べると、総体的に「女陰」の意を持っている事が解った。遠野にもいくつかあるが、胎内巡りの岩などは、年に一度その岩穴を潜り、生れ変る、もしくは若返る意図を以て信仰されていた。赤い色に「新生」の意味がある様に「クラ」そのものにも「新生」と同じ意があった。そして「総合日本民俗語彙」「倉掘(クラホリ)」について記されていた。それは「墓掘り」の意であった。恐らくだが、当初の倉掘神社という神社名では「墓掘り」という意がある為に、文久年間に鵜鳥神を勧請し、神社名を「卯子酉神社」と改め、本来の「墓掘り」という意味を隠したと考える。そうでなければ、元々創建された倉掘神社の名を消して、後から勧請された神社名を採用する筈もない。本来は「鵜鳥神社」であるのだが、「卯子酉神社」としたのは、やはり陰陽五行を意識してのものだと思えるのだ。とにかく、倉掘神社が建立された時、水を剋する為、誰かが人柱として犠牲になったという考えは、かなり信憑性が高いのではないか。何故に人柱なのかと考えても、やはり人の死とは、陰陽五行で「土」となるからだ。そして「土剋水」、水を剋するのは土であるからだ。堤防も土で固められた壁の様なもの。それは、水を剋する為だった。更なる強化は、そう"土左衛門"とも云われる人間の死体が必要となる。
「冥界との縁結び(其の十一)結」_f0075075_21353864.jpg
タタラ筋が信仰する金屋子神は、死体を好むと云われる。その理由は、「土生金」つまり土は、金を産み出すからだ。金屋子神の神木であり神体は、桂と云われる。その桂には土が二つある事からも、金を産みたいタタラ筋にとって縁起の良い樹木が桂の木であった。前に紹介した陸前高田の横田町の舞出神社の御神木が、枝垂れ桂であった。舞出神社の祭神は瀬織津比咩であるのだが、盛岡の瀧源寺にも枝垂れ桂が御神木となっており、祭神は同じ瀬織津比咩である。これは恐らく、金屋子神とは逆の意味で、水神である瀬織津比咩の暴走を御する為に、土二つの桂を神木としているのではなかろうか。かつて、宮家の当主から、卯子酉神社内に、桂の木があった筈だと聞いた事がある。桂が土気の強い樹木であるなら、水を剋するには有効な樹木であると考える筈であるから、水害を避ける為には、あったとしてもおかしくはないだろう。また別に、遠野にはいくつか天然記念物となっている桂の木があるが、そこには蛇の伝承が残っている。それもまた、水神である竜蛇神を剋する為の手段として植えられた桂の木ではなかっただろうか。
「冥界との縁結び(其の十一)結」_f0075075_13033724.jpg
卯子酉神社の神社名が、陰陽五行を強く意識した神社であり、尚且つ水害を避ける為の意図があるならば、必要なのは土への帰結である。人柱は最後は死体となり土となるので、水を剋するという意図があった。その陰陽五行を最大に発揮する為に、鵜鳥神の勧請であるならば、やはり土へと導く呪術が施されているのだと考える。卯子酉は、それぞれ木・水・金であった。足りないのは火と土。つまり「火生土」の呪法が、赤い布切れを結ぶものだと思える。その結ぶ相手が、既に土となった存在。それは人柱となった女性の活性化ではなかったか。片葉の葦は、「かたわ者」の意も含む事は、今まで書いてきた。かたわ者には、連れ合いのいない未婚の者をも含む。「倉掘」は「墓穴を掘る」意であるから、倉掘神社の建立時に若い娘が人柱の犠牲になり、その暗号が「倉掘」であったのだろう。生前婚姻の出来なかった者は、あの世で結ばれる為には、誰か相手を探さなくてはならない。それには、人柱となった娘の為に、縁を結んでやる必要がある。だから男だけが縁を結ぶ方法「左手だけで赤い布切れを結ぶ事が出来れば、縁が結ばれる。」という伝承を残した。女性であれば、右手だけとなるのだが、それを省いたというのは意図的なものだろう。卯子酉神社の伝説に「信心の者には、淵の主が姿を現した」と伝わるのは、淵の主とは非業の死をむかえた者であるから、それは人柱になった娘であるのだろう。姿を現したというのは、人柱の娘との相性が合った、もしくは波長が合ったと考えるべきだろうか。「遠野物語」&「遠野物語拾遺」にも、いくつか人柱、もしくは水害の犠牲になった娘が、白い石の上に立っているのを目撃されている話が紹介されているが、それと同じものが、この"淵の主の出現"であろう。現世の縁を願う者が、未だに多く、卯子酉神社を訪れている。その多くは女性であるようだが、あくまでも縁結びの呪法は、男性だけに作用するものである。まさに知らずに現世の縁結びを期待し卯子酉神社に訪れた男性が、人柱となった女性との縁が結ばれるとは、知る由もないだろう。人柱の効果は、雄蝶・雌蝶揃ってこそのもの。独身のまま死んでいったであろう女性が、冥界で結ばれる為に施した、血と滾る炎を意味する赤い布切れによる縁結びの呪術。卯子酉神社の縁結びとは、まさに"冥界との縁結び"であると思うのだ。

「万葉集 巻十七 3941」に、下記の様な歌があった。歌の意味は「鶯が寂しく鳴く崖の底の谷、その深く暗い谷に身を投げこんで焼け死ぬほど苦しくても、あなたをひたすらお待ちしています。」生きている女性の激しい恋心を詠ったものだが、この卯子酉神社に埋められているだろう女性の心情にも感じて、敢えてこの歌を添えようと思う。

鶯の鳴く暗谷にうちはめて焼けば死ぬとも君をし待たむ
「冥界との縁結び(其の十一)結」_f0075075_13245466.jpg
戦後の復興の流れから昭和40年代に、遠野市は「遠野物語」を中心にして観光地化を推進してきた。その中の一つに、この卯子酉神社にスポットを当て、縁結びの御利益を宣伝してきたわけだが、今まで調べてきたように「男は左手だけで赤い布切れを結ぶ事が出来れば縁が結ばれる。」「女は右手だけで赤い布切れを結ぶ事が出来れば縁が結ばれる。」という呪いのうち、"女性の右手だけで…"が抜け落ちて伝わっていた。観光地化されてから現在に至るまで、卯子酉神社に縁を期待して訪れた人の殆どが、女性であったと聞く。つまり現在の卯子酉神社は、女性の報われない想いの溜まり場として存在している事になるのか。今でも境内に、想いを込めて結ばれた沢山の赤い布切が風に揺られ、まるで片葉の葦のようにひらめいている。

by dostoev | 2019-11-25 22:26 | 冥界との縁結び
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