
残念ながら1月31日は、仕事の都合上皆既月食を見る事が出来なかった。ところで皆既月蝕だが、古い迷信にこういうものがあった。
「月蝕は、人の病気を引き受けてくれる。」
恐らく体の健康な状態は、満ち足りた月の様だと。それが欠ければ、病気になったりすると考えられたのだろうか。ところが天空にひととき、満ち足りた状態から短時間で月が欠け、再び満ちたりた状態に戻る月蝕に、人々は神秘を見たのかもしれない。天空に神秘の輝きを放つ月に神仏を重ね、願いをかける昔の人々がいたのだろう。だからいつしか、こういう迷信が誕生したのだろうと思う。例えば、子供が生まれれば、庭先に桜の木を植えた。桜の樹齢は、人間の寿命に近いので、人間の依代とも考えられた。また桜は霊界と繋がっているとも信じられた為、いろいろなものを吸い取ってくれる。つまり我が子の病気さえも吸い取ってくれるだろうという親の願いが、庭先に桜を植える事になっていたようだ。これと似たような迷信であり考えが、天空の月に移ったのだろう。現代医療を体験している自分達にとって、少しの病でも死に至る時代は、いろいろなものに命を託して生きて来た。その名残が、皆既月蝕への迷信でもあったようだ。