遠野の不思議と名所の紹介と共に、遠野世界の探求
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蝶トイウモノ

蝶トイウモノ_f0075075_20245412.jpg

結婚式の杯事の時に使う銚子や提子につける、折り紙の雄雌の蝶の事。通例は金銀や紅白の紙を蝶の形に折り、そこに金銀の水引で蝶の触覚をつけて用いる。婚礼の式場が普通の家に設けられる場合は、両親のそろった男女の子供が選ばれて、そこで新夫婦の杯に同時に双方から酒をつぐ。このため雄蝶雌蝶の名称は、もとの意味から転じて、この2人の男女の子供をさしていう場合もある。
                               「大辞林」

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>もとの意味から転じて、この2人の男女の子供をさしていう場合もある。

「定本柳田國男集」に「雄蝶雌蝶」として、柳田國男自身が子供の頃、雄蝶役をやったと記している。「三々九度のお酌をする役を渡しは二度させられた。男の子が五つで女の子が七つに限るわけで、男蝶・女蝶になるのだが、女の子はただお酌だけしていればいいのに、男の子の方にはちゃんというべき言葉が決まっている。私はませていて、それがいえるので選ばれた…。」

柳田國男は明治8年(1875年)生れなので、これは明治13年の事になろう。つまり明治時代には、雄蝶雌蝶の役割は、本来の意味から外れていたという事になるか。しかし婚礼での雄蝶・雌蝶役は、三々九度にかかるのだが、その三々九度の文化が庶民に広まったのは、明治時代になってからだという。つまり雄蝶・雌蝶が庶民に広まったのも明治時代であり、それが酒を注ぐ為の器なのか、酒を注ぐ者に対してなのかが混同したまま伝わったのかもしれない。そして三々九度も、名称が違うものとして時代を遡っても室町期のようだ。
蝶トイウモノ_f0075075_21281615.jpg

遠野の伝承で「雄蝶雌蝶」という言葉が登場している話は、二つほどある。一つは「遠野物語拾遺22」と内容は同じだが「附馬牛村誌」に紹介される「夫婦釜」の話に、その夫婦釜を雄蝶・雌蝶として表現している。

【夫婦釜の伝説】


昔、附馬牛の大萩に東禅寺という大きな寺があった頃、そこには二百人もの修行僧がおり、修行に明け暮れていたのだという。なので食事も大したもので、馬釜のような大きな雄蝶、雌蝶と呼ばれた二つの釜で、ご飯を炊いていたのだと。

ところが時代も変わり、江戸時代の初期に、南部の殿様がこの東禅寺を盛岡に移転する事としたのだという。その時にこの雄蝶、雌蝶の二つの釜を一緒に運ぶ事となったのだが、何故かこの淵の側を通りかかった時に、急に片方の雌蝶の釜が崩れ落ち、あっという間に淵に沈んでしまったのだと。そして雄蝶と呼ばれた釜は空中に舞い上がり、火の玉のようになって、元の東禅寺まで飛んでいったそうな。きっと今まで居た東禅寺から離れたくなかったのだろうと、人々は語ったのだという。雄蝶の釜は今でも大萩の常福院に残っており、寺宝となっている。

そして、淵に沈んだ雌蝶の釜は、何十人という人足をかけても、ついに引き上げる事が出来ないままであったと。それから、この雌蝶の釜の沈んだ淵を釜淵と呼んで近寄らず、またこの釜淵で魚を獲ると祟りがあると恐れられたそうである。

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そしてもう一つは「遠野物語拾遺28」の人柱の話で、そこから抜粋すると「昔から人身御供は男蝶女蝶の揃うべきものであるから…」と記されている。この「遠野物語拾遺28」は、大同年間の事としているが、もしも雄蝶・雌蝶が酒器、もしくは酒を注ぐモノとして始まったとしたならば年代が合わない。元々「遠野物語拾遺28」は、大同年間では無いのでは、とされている。しかし、どちらの話も夫婦を雄蝶・雌蝶としている事から、本来は夫婦を意味するものが雄蝶・雌蝶で、後から酒器に変化し伝わったのではないかと思える。

気になるのは、紹介した「夫婦釜」の話も「遠野物語拾遺28」も、人柱の様な話になっている。「夫婦釜」は、人間では無く釜の話なのだが、釜淵に沈んでから、そこで魚を獲ると祟りがあるというのも、人間としての話の様になっている。モノには魂が宿るという付喪神ではないが「夫婦釜」の話は、本当に釜の話であったのか?もしかして人間を釜に例えて話したものであったか気になるところである。
蝶トイウモノ_f0075075_5293876.jpg

画像は、黒揚羽蝶が小動物の糞の水分を吸いに来ている場面である。蝶というものは、花の蜜を求め彷徨っている綺麗なイメージがあるが、実はいろいろな体液を吸っている虫でもある。そして蝶は、しばしば人間の死体にも群がる。現代は死体を火葬する場合が殆どなので、古代の鳥葬などにおいて、鳥だけでなく蝶が寄って来る場面を目撃する事がまず無い。ただ、山での遭難者の死体に蝶が群がっていたという報告がある事から古代では、蝿などと一緒に人間の死体に群がる蝶がよく目撃されたのだろうと思える。遠野地方での蝶の方言は「てびらっこ」である。「てびら」は「掌」の事であるから、掌をヒラヒラさせる事が、蝶の飛ぶイメージと重なった為の方言であろう。ただ画像の黒揚羽蝶は地域によって「かみなりてふ」「じごくてふ」「やまでふ」などという方言も伝わる。「じごくてふ」は、そのまま「地獄蝶」という意味だが、死体に群がる蝶のイメージをストレートに表現したものと思える。

ところで死の匂いは、即身仏の影響から山形県の羽黒に漂う。羽黒には八咫烏の伝説もある事から「羽黒」とはカラスを意味していると思っていたが、死をイメージする時、カラスと共に、黒揚羽蝶もまた重なってしまう。何故なら、里での死体にはカラスが群がるのだが、山の奥で発見される死体には、カラスでは無く蝶が群がっている事を思えば、山を支配した山伏が、修行の末、しばしば山で亡くなった時、その死体にはカラスではなく蝶が群がっていた可能性がある。それが黒揚羽蝶であった場合、人間の霊魂を運ぶ存在としての黒揚羽蝶が認識された可能性も僅かながらもあったのではないかと思える。となれば鳥葬(ちょうそう)は、そのまま蝶葬でもあったのかもしれない。「万葉集」に蝶の歌が無いのは、死体をついばむ烏同様、忌み嫌われていた可能性があるだろう。古代に白鳥が、魂を運ぶ存在として認識され歌にも詠われたが、黒い烏は黒不浄としての意味合いと重なり、それと共に黒揚羽蝶もまた、それに重ねられた為だろうか。しかし烏は八咫烏なども含め"オミサキ"として神の使役としての一面もあるのに、蝶はどうした事だろうか?
蝶トイウモノ_f0075075_6374774.jpg

梅谷献二「虫の民俗誌」では"義経籠手"なるものが紹介されていた。本当かどうかはわからぬが、義経が吉野に落ちる時、興福寺に籠手を残して行ったと。それが現在国宝「義経籠手」と呼ばれる。そのデザインは菊水模様の中央に蝶が配されているが、どうやらアゲハチョウらしいが、恐らく黒揚羽蝶なのかもしれない。菊水は不老長寿を意味し、蝶は魂をも意味する事から源義経は、魂の不滅を求めたか?とも感じてしまう。古代には死をイメージする事から忌み嫌われた蝶を採用した源義経には、やはり羽黒修験と同じ魂を感じてしまうのは自分だけだろうか。
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今井彰「蝶の民俗学」には、"蝶の妖怪"が紹介されていた。前九年の役の時、安倍氏の家来が源義家の投げた石に当たり、足を滑らせて沼に転げ落ち、そのまま息絶えたと云う。その死体は沼の中で大きな蝶になり、曇った日や夜になると沼から浮かび出て、空を飛ぶのだと。月夜の晩のその蝶の妖怪を目撃した話では、水で羽がキラキラと輝き、幻想の中にいるように感じたと云う。

この蝶の妖怪で気になるのは、何故に沼に落ちて蝶になるのかという事。先に紹介した遠野の話も、水神に対する人身御供の様な話で、どこかで蝶と水神が繋がる可能性を秘めている。そこで初めに戻ると、雄蝶雌蝶とは酒を注ぐ酒器、もしくはそれを注ぐ人という事になっている。酒とは「くし」とも訓じ"薬"でもあった。古今東西、酒の発生は不老不死を求めての副産物であった場合が殆どである。酒造りには水が必要で思い出すのだが、遠野には「河童の盗み酒」という大吟醸があった。河童はしばしば悪戯の詫びに、万能薬や酒などを提供する話がある。酒と河童を結び付ける延長上に、前九年の役の後、流刑された安倍宗任がいる。安倍宗任の子供は、九州の松浦水軍と結び付いて子孫を残していった。その安倍宗任の血の流れを汲む中に、酒造りと河童を結び付けるものもあると云う。そして奇しくも蝶の妖怪もまた、その安倍氏に関係する話であった。ところで「蝶の民俗学」の作者曰く、蝶に関する民話や伝説を探したところ、何故か新潟を含む東北にだけしか無かったという。東北へと落ち延びた源義経の使用していたという菊水と蝶の籠手。そして東北を支配した安倍氏の影が、何故か蝶と水を結び付ける。

考えてみれば「遠野物語拾遺28」の「昔から人身御供は男蝶女蝶の揃うべきものであるから…」という言葉は、陰陽の和合でもある。陽は太陽であり男であり、陰は水であり女となる。その陰陽の和合を果たすから物事が成されると考えれば、蝶が魂の象徴であり、それが後に夫婦の和合、つまり婚姻の儀式に採用されたとしても不思議では無い。今回、蝶を調べてみて逆に、蝶に対する謎が深まった感がある。古代に忌み嫌われた蝶が、どこかで秘された存在であった可能性はあるのかもしれない。

ただ唐突に感じたのは、蝶の妖怪が水に落ちた者から化生している事から怪談「番町皿屋敷」に繋がるか?というもの。「番町皿屋敷」の話は、下女の"お菊"が皿を割った事で縛られ井戸に落とされ、それから幽霊となっている。縛られた状態のお菊がまるで、蝶の蛹の様な事から蝶の蛹を"お菊虫"と呼び、忌み嫌われた。そして「番町皿屋敷」関連を調べると、菊の花を忌み嫌う話が伝わっている。先に紹介した源義経が使用したとされる国宝「義経籠手」のデザインは「蝶と菊水」忌み嫌われる蝶と、そして菊の花がデザインに使用されているのは偶然だろうか?「番町皿屋敷」の行く着く先は"白山信仰"だと云う。お菊が縛られ、それが蝶の蛹に見立てられたのは、「ククリ」が「縛る」と重なった事になっているようだ。蝶を調べての謎は、何故に「万葉集」で詠われて無いのか。何故に東北・北陸だけに蝶の民話と伝説があるのか。そしてだが、もしかして白山信仰との結び付きと、白山信仰そのものの謎に蝶が、どこまで関連するのか?とにかく、蝶がこれだけの個性と存在感を示していながら、それに関する伝承が余りにも少な過ぎるのは、どこかタブーに触れる為では無かったなどと、余分な事を考えてしまう…。
by dostoev | 2017-10-08 07:52 | 「トイウモノ」考
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