遠野の不思議と名所の紹介と共に、遠野世界の探求
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泥棒を守護する神の根源

泥棒を守護する神の根源_f0075075_10112953.jpg

以前「泥棒を守護する神トイウモノ」という記事を書いたが、この泥棒の根源を考えてみた。

早池峯の女神は三女神の末の妹であったが、姉の上に降りた霊華を奪い、早池峯の女神になった話は「遠野物語2」で紹介されている。この話からなのか遠野では「山のモノと女(おなご)はなぁ、早ぐとらねば誰かに取られてしまう。」として、山菜やキノコ、そして、気になった女性は早めに手をつけるものだと広まったようでもある。その為なのか佐々木喜善「遠野奇談」の冒頭に、その盗みを守護する早池峯の女神の逸話が拡大解釈され紹介されている。

「この三山の新山祭には、郷土の若者達の乱暴が荒く烈しければ烈しいほど女神が喜ぶというので、随分乱暴をはたらくのが土地の習慣となっている。そのうちでも早池峯神社の例祭には、乱暴の上に盗みをしてよいという習俗があるので、ちょうど七月頃の例大祭であるが、その往還に村の梨桃の実から、娘たちまでが大いに荒らされ盗まれる。」

これを読むと、早池峯の例大祭の昔はとんでもないものと思いがちだが、これと同じ様な記録を九州は熊本の阿蘇神社の例大祭で読んだ事がある。村崎 真智子「阿蘇神社祭祀の研究」に記されているが、やはり例大祭の時は、余りにも娘たちが乱暴されるので、いつからか娘たちを祭に出さなくなった家が多いと紹介されている。この阿蘇神社の例大祭もだが、遠野と同じに菊池氏が多いのは偶然だろうか?それは何も菊池氏がというわけではなく、その時代の流れもあっただろうが、早池峯神社よりも古い歴史を誇る阿蘇神社の例大祭の習俗を、遠野に移り住んだ人々がそのまま持ち込んだ可能性もあるだろう。何故なら、阿蘇大神は早池峯大神と同神であるからだ。一般的に阿蘇大神とは健磐龍命と思われがちだが、健磐龍命は外来の征服者と思えばよい。菊池郡の民俗・信仰を調べると、阿蘇の姫神である阿蘇津比咩を阿蘇大神として崇めている。その阿蘇津比咩は早池峯の女神である瀬織津比咩であり、嫁いだ為に阿蘇津比咩と神名が変化している。とにかく、九州から遠野に移り住んだ者達が同じ神を祀り、同じ祭の習俗を持ち込んだとしたら、早池峯の女神は盗みを守護する神であるという逸話も後付けでは無いかと思えてしまう。

佐々木喜善によれば「東西磐井から旧仙台領では泥棒の神様として斯云ふ職業の人達が重に信仰したものだと申します。」という、余りにも産土神を他人事みたいに語っているのが妙である。早池峯神社の例大祭は、県外からも大勢の人達が来たと伝えられる。その中に"泥棒守護の神"という意識で参詣した者もいたのかもしれない。遠野に隣接する東和町での早池峯の神は「一生に一度無理な願いを聞き届けてくれる神」として認識している人もいるそうだ。つまり、遠野を離れるにしたがって、早池峯の神の神威は曲解されて伝えられているようだ。
泥棒を守護する神の根源_f0075075_11591731.jpg

「泥棒を守護する神トイウモノ」では妙見菩薩が、そのものの姿を変化させる力があるという事がわかった。早池峯の女神が、糯米の稲穂を粳米の稲穂に変化させたのは、早池峰の神の力であった。つまり泥棒を守護するというより、信仰する人を助ける為、そのものの形を変化させたりする霊的な力は、妙見菩薩と同じであった。その妙見の本地は薬師如来である。早池峯の前に聳えるのが薬師岳で、そこに薬師如来が祀られていると考えられている。それ故「前薬師」と呼ばれる。これは「上閉伊郡志」にも「早池峯の前にある薬師の山」と記されている。実はこの薬師岳は七つ森信仰に関する為、もっと複雑な祭祀形態になるのだが、ここでは省略する事にする。そして背後に聳える早池峯は十一面観音を本地としている。

「宮守村史」「砥森神霊翁之夜話」が載っているが、安倍氏に関係する伝承となる。早池峯もだが、この宮守の砥森もまた安倍氏に関係の深いところである。そこに、こう記されている「毎年四月八日、九月廿八日御山籠りと申て祈願のもの前夜詣ふて、拝殿にいのりて…。」と記されているのだが、四月八日は薬師如来の縁日。そして九月廿八日は、不動明王であり瀬織津比咩の縁日となっている。砥森でも早池峯と薬師の祭祀形態が伝わっているのであろう。瀬織津比咩の本地は十一面観音であるが、何故に不動明王であるかは以前別記事で書き記したが、十一面観音の脇侍として不動明王が存在し、薬師岳の麓の又一の滝を見てわかるように、滝そのものを、そして十一面観音を守護しているのが不動明王である。何故十一面観音かといえば、十一面観音の神威そのものが瀬織津比咩と同じであったのが大きかったのだろう。よって早池峯に祀られるべきは、薬師如来ではなく十一面観音でなければならなかった。それらについては他の記事でも書いてある為、詳細を省く事とする。そして言えるのは、養老年間に熊野から最強の神として運ばれて来た瀬織津比咩は蝦夷の地の平定を願ってのものであった。その後の大同年間に天台宗の影響から、瀬織津比咩に十一面観音が重ねられ、いつしか早池峯は観音信仰の山とされてしまった事を念頭に置いて欲しい。

それと紹介し忘れたが、佐々木喜善「遠野奇談」には、その三女神信仰をしていた一族に安倍氏が関係している事を紹介している。だからこそ、早池峯にも砥森にも、安倍氏の影が濃くなっているのは当然の事であった。
泥棒を守護する神の根源_f0075075_16315628.jpg

昔三人の美しい姉妹があった。橋野の古里という処に住んでいた。
後にその一番の姉は笛吹峠へ、二番目は和山峠へ、末の妹は橋野の
太田林へ、それぞれ飛んで行って、そこの観音様になったそうな。

                     「遠野物語拾遺1」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この「遠野物語拾遺1」の末娘の場所を辿ると、そこに祀られていたのは早池峯の神であった。つまり、この「遠野物語拾遺1」もまた、三女神譚であった。岩手県内に共通するのは、末娘が早池峯であるという事。そして一つ、気になる箇所がある。「それぞれ飛んで行って」と表現されている。これは遠野三山の女神も、別の伝承では「飛んで行った。」と表現されている。

飛んだと表現される話が別に「遠野物語拾遺3」に天人児の話として紹介されている。天人児が水浴びしている時に石にかけてあった羽衣を若者に奪われ、天に帰れなくなり、そのまま若者と夫婦として過ごすのだが、後に羽衣を取り戻して、天に飛んで帰って行くというもの。これは全国に広がる天女の羽衣譚の遠野バージョンであるが、この羽衣を奪われた天女は七人姉妹の末の娘である場合が殆どである。この「遠野物語拾遺3」の天人児は機織り機により蓮華から衣装を織った。この蓮華だが、三女神に降りて来た霊花もまた蓮華であった。蓮華は吉祥天に縁が深いが、その吉祥天は毘沙門天の妻であるとされる。毘沙門天の化身と呼ばれた坂上田村麻呂の伝説と、この蓮華の花を通じて、三女神伝説が繋がっているのは、その背後に安倍氏がいるからだろう。

坂上田村麻呂東夷征伐の時、奥州に国津神の後胤の玉山立烏帽子姫という女神があった。極めて美貌であったので、夷の酋長大岳丸というのが種々の手段で言い寄ったけれども、姫は少しも応じなかった。この時にあたって坂上田村麻呂は勅使を奉じて東北の地に下ってこられた。そして立烏帽子姫の案内で、よく蝦夷を討伐し、その頭領大岳丸を岩手山で討ち取った。それから立烏帽子姫と夫婦の契りを結んで、一男一女を産んだ。その名を田村義道、松林姫といった。義道は安倍氏の祖である。松林姫は三女を産んだ。お石、お六、お初といった。お石は守護神、速佐須良姫の御霊代を奉じて石上山に登った。お六は、速秋津比売の御霊代を奉じて六角牛に登った。お初は瀬織津比咩を奉じて早池峯に登った。この三人の女神たちの別れた所は、今の附馬牛の神遺神社の所であった。

                  佐々木喜善「遠野奇談」より抜粋

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
天女を調べていると誰もが気付くとは思うが、七夕伝説に似通っている。水辺を中心とし、天女という織女が男と出逢って別れる図式は、七夕伝説と言っても良いほどだ。天女伝説の定着は王朝時代(奈良時代~平安時代)とされているが、弥生時代の銅鐸に紡いだ糸を巻く桛を持つ女性が描かれている絵を七夕と結び付けて考えられているが、それを天女伝説に結び付けても違和感が無いだろう。

羽衣を奪われ天界に戻れなくなった天女を、堕天使ならぬ堕天女と呼ぶ。その堕天女となった経緯は、たまたま男が羽衣を見つけたので奪ったというのが一般的である。しかしリアリティを持った伝承は、唯一阿蘇に伝わるもので、阿蘇神社の御前迎え神事に結び付いている。

赤水宮山に健磐龍命が行ったら山女がいた。この山女は日下部吉見の姫が赤水に来ていたもので、健磐龍命がこの姫を強引に担げて来て自分の嫁にした。嫁盗みを神様がやったので、阿蘇の人々にも許されている。実際にも行われていた。姫を盗む途中で十二か所寄って来る。化粧原は十二か所目になり、ここから夜になるので松明を出す。そして赤水のお宮で強引に姫の穴鉢を割る(犯す)。それからお宮(阿蘇神社)に連れ込んで高砂(結婚式)をする。お宮に連れ込んだが、姫が生まれ在所に帰りたいというので羽衣を隠した。子供が十二人生まれる。これが阿蘇神社の十二の宮である。子供が多く生まれたので、安心して歌を歌う。「姫の羽衣は千把こずみの下にある。」それで姫は羽衣を見つけ、生まれ在所に帰った。

先に、早池峯の神は荒く烈しい祭が好きで、男達は例大祭の時に、女をも盗む様な事を紹介したが、それが阿蘇神社の例大祭にも似てるとした。その根源は、阿蘇の男神である健磐龍命が日下の姫神を奪った事が発端であるようだが、この健磐龍命に"盗まれた"姫こそが早池峯の女神である瀬織津比咩であった事は紹介した。その瀬織津比咩は阿蘇において奪われた羽衣を見つけ奪い返し、生れた所に帰ったという話がそのまま岩手県に伝えられ歪曲したものが三女神伝説では無かろうか。本来天女の末娘は、蓮華の羽衣を盗んだのではなく、奪い返して天(早池峯)に帰ったとするのが、正しい話の流れであると思う。それが三人姉妹として三山に重ねた為に、話が歪曲され変換されたと。三山となったのは、熊野三山、出羽三山の流れに、天女の羽衣伝説を組み込んだものであろう。岩手県に早池峯を中心とする三山と三女神の話が多いのは、あくまでも早池峯を中心に三山伝説が作られ、それが各地にも広まったのだろう。菊池照雄氏は、三山伝説の伝承者が殆ど菊池氏であると指摘している。つまり菊池氏を中心とした信仰が、各地に分散して住みついた土地の地域性を加味して作られたのが、岩手県内に拡がる多くの三山三女神伝説であったのだろう。

菊池照雄「山深き遠野の里の物語せよ」で、照雄氏は遠野の中世の館に何故か天女の羽衣伝説が付随している事に着目した。奇しくも七姉妹の天女と同じく遠野全体で七か所の地に、羽衣伝説があるという。これは偶然なのか、それとも意図されたものなのかは今後調べてみないとわからないが、遠野の伝説の根底には天女の羽衣伝説が根深く潜んでいるのを感じるのである。
by dostoev | 2017-06-03 18:30 | 瀬織津比咩雑記
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