遠野の夜の情景は、街中に居ると平凡な夜を過ごしているように思えるが、遠野の街を外れると、かなり劇的で美しい夜を、幾度となく迎えている。同じ遠野でも、それを見る場所によって変わるものである。
雲海が発生すると、太陽光は遮られ、遠野の街ではまだ夜が続くが、その雲海の上ではすでに朝が訪れている。
荒川高原に目を向けると、そこは遠野で一番天空に近いかのように、放牧された馬たちがあたかも空の住人かのよう。
星と雲とを間近に見る馬たちは、龍神に属するかのようでもある。
荒川高原は、早池峯の山懐にある。早池峯は、本州で一番光害の少ない地域である。それはつまり、本州で一番星が綺麗な地という事になる。九州に目を向けると、高千穂が一番光害の少ない地域のよう。本州の民話の里遠野と、九州の神話の里高千穂が一番星の綺麗な地というもの、なんとなく趣を感じるものである。天の川を背景に草を食む馬たちを見るのも、今月いっぱいくらいだろうか?