何度か、このブログでも使用させていただいている金子富之氏の絵画展が、今度は福島県で開催される。
森のはこ舟アートプロジェクト2014
森と人のミステリアム
(現代絵画表現から元型への回帰)
日本画家 金子富之
会場 大和川酒蔵北方風土館(喜多方市)
【昭和蔵・天空回廊・大正ロマン室】
会期 2014.12/15(月)~12/28(日) 9:00~16:30
森というものは、人間が身近に感じる怪異の原点のようなものである。キリスト教の布教が広まった時代のヨーロッパには、既に樹木信仰が根付いていたが、それは日本も同じであった。樹木を見て分かる通り、年老いた樹木というものは、若木と比較してわかるように、異形となる。それはあたかも、神話世界や能世界に突然姿を現す老翁の様でもある。老翁は、神の仮の姿であるとされるが、能世界ではそれを樹木から彫り起した面によって表現されている。これは、仏像が神の宿った樹木から彫られるように、神と仏は一体とされる概念と同じで、神の宿った樹木から古翁面を彫るという事は、その古翁面そのものが神と見做される事でもある。そう、古代から樹木には神が宿るとされていた。その様々な樹木が集まった空間が、森であり山となる。それはつまり、様々な神々が集まった空間でもある。その神である樹木と人間は、長きに渡って付き合っている。金子氏がそこに着目したのは、自然の流れでもあるのだろう。「ミステリウム」とはラテン語で「秘儀、奥義、秘密、神秘」を意味する、所謂ミステリーの語源となるのだが、森のミステリウムをいかに人間が触れたのかがテーマとなっているのかもしれない。