
天女を調べていると誰もが気付くとは思うが、七夕伝説に似通っている。水辺を中心とし、天女という織女が男と出逢って別れる図式は、七夕伝説と言っても良いほどだ。天女伝説の定着は王朝時代(奈良時代~平安時代)とされているが、弥生時代の銅鐸に紡いだ糸を巻く桛を持つ女性が描かれている絵を七夕と結び付けて考えられているが、それは天女伝説に結び付けても違和感が無いだろう。

古代中国での天の川伝承の原型は、黄河か揚子江から発生したと云われる。天の川は天の河とも書き、それは古代中国の
「天河」からきており、それは黄河の「河」が意識されている。黄河の水は天上より来て海に到り、再び天の河に戻ると云われている。これは、天の川と地上の川は繋がっているとの考えからだ。以前に紹介した常陸国の七夕磯もまた、二荒山(天)から神が降り、その磯(石)に影向するという伝説であり、これも古代中国思想の影響を受けたものであろう。
ところで天河で思い出すのが、奈良県吉野郡天川村に鎮座する天河神社だ。
菊池展明「円空と瀬織津姫(下)」には、その天河神社に関する記事があり、天武天皇七月の勅命に、こう記されていると。
「弥山山頂に祀る天女を麓に移し、大神殿を造営し、吉野総社となして祭れ」
まず、山頂を天と見做しているという意識がわかる。謡曲「羽衣」でも、天女の坐すところは月宮殿であり、元は天上界であった。その天とは天空でもあり、その天空に聳える山でもある。その天女を麓に移して祀った天河神社には七夕神事があり、大峯山の神が牛頭天王と年に一度の逢瀬を果たすというもの。現在、天河神社は弁財天が祀られているが、弁財天女でもある。「神振山伝説」によれば、弥山山頂の天女が示現し袖を振りながら五色の雲に乗って高く舞い上がって行くという奇端を感得したとあり、天女伝説と七夕伝説の融合を、この天河神社に見出す。更に付け加えれば菊池展明「円空と瀬織津姫(下)」では、この天河神社の祭神の本来は、天照大神荒御魂であり瀬織津比咩であったと結んでいる。
天の川安の川原に定まりて神競は時待たなくに(柿本人麻呂)
菊池展明は、天河神社の創始を上記の柿本人麻呂の歌と同じ年であると解いている。それは素戔男尊と天照大神の誓約場面を意味しているとし、それは宗像三女神の誕生の場面でもある。宗像三女神の湍津姫神は瀬織津比咩である事は明らかになっているが、その湍津姫神を祀る宗形の中津宮のある大島には天の川があり、その天の川の両岸には織女宮と牽牛宮という小さな祠が祀られている。更に、その大島には禁足地があって、そこは妙見を祀っているのだと。つまり宗像三女神の中で一番、星信仰と深い繋がりのあるのは湍津姫神であり、瀬織津比咩という事になるのだろう。

天女伝説は王朝時代に定着としてはいるが、これが七夕伝説と融合するものであるなら、それは先に紹介した弥生時代の銅鐸に描かれた織女の絵から、どこまで遡るのかはわからないが、天女の原型らしきが「捜神記」に記されているという事は、4世紀には既に天女伝説は定着していたと考えて良いだろう。古代中国の神仙思想は霊山と結び付くものが多い事から、山頂にいる女神は天女であるが、「神振山伝説」はその表現から、更に仏教思想が融合しているのがわかる。それ故に、天河神社に祀られる天女は瀬織津比咩ではなく、弁財天女となったのは理解できる。
月であり太白であり妙見であり北辰は、厳密に言えば、月・金星・北極星・北斗七星などであるが、いつしか混同し、全てが星の信仰として統合されたようであった。多面的な姿を誇る瀬織津比咩ではあるが、やはり本来は水神であり、その水を神聖視した人々によってあらゆるものに組み込まれていったのだろう。逆に言えば、多様性を持つ瀬織津比咩である為に、その姿を消すという事は「記紀」において、多くの神々を誕生させなければ、その失った穴を埋める事が出来なかったという事だろう。考えてみれば、水に対する意識とは全国共通であり、その水を支配する水神が乱立するなど有り得ないだろう。神社の根本は、彦神と姫神から発生している。神社で柏手を打つのは本来四拍とされているのは、例えば「お~い、お茶!」と言ってパンパンと手を叩くのは、一人を呼ぶ為の仕草である。それを、出雲大社と同じくパンパン、パンパンと四拍するというのは、彦神と姫神の二柱の神を呼ぶ為でもある。陰陽とは男と女であり、それは火神と水神である。その原初である火神と水神がバラバラにされた為、「記紀」では整合性を取る為に、多くの神々を誕生させたという事だろう。
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