遠野の不思議と名所の紹介と共に、遠野世界の探求
by dostoev
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鉄の蛇(日高見とアラハバキ)其の二十六

鉄の蛇(日高見とアラハバキ)其の二十六_f0075075_15421910.jpg

二荒山を中心とする信仰が、どことなく阿蘇の信仰に似通っていると書いたが、その二荒山を遠望する平野部は毛野国に属していた。毛野国は、初期の大和政権の成立し、それらの勢力が東国に進出したのが4世紀前半以降であろうとされている。つまり謎の4世紀に属する時代に氏族の進出があったわけだから、正確にはわからない。ただその頃には既に阿蘇という地名はあったのは確かである。また気になるのは偽書と云われる「東日流外三郡誌」に登場する阿蘇辺族だ。何故「アソ」という名の付く部族名になっているかという事。自分は、「阿蘇の部族(アソノブゾク)」の転訛が「阿蘇辺族(アソベゾク)」になったのでは?と思ってしまう。

遠野には、早池峯を中心とする不地震の森の伝説が広がっている。古代に、安住の地を求めて移住した部族がいたのでは無いかととも云われるのだが、九州の地には動乱もあり、そして阿蘇山の噴火もあり、それを恐れた民族の移動の可能性も否定できないだろう。実際、遠野には今でこそ姓を変えたが、過去には阿蘇氏を名乗っていた家もある。また菊池氏もそうだが、阿蘇の自然と信仰を受けた一族が東北に移り住んでする。
鉄の蛇(日高見とアラハバキ)其の二十六_f0075075_2050167.jpg

例えば岩手県には、菊池神社が一ヶ所だけある。そこに住む人は明治時代に移り住んだそうだが、その時に九州の菊池神社の神を分霊してもらい、今の地に祀ったという。
鉄の蛇(日高見とアラハバキ)其の二十六_f0075075_20515472.jpg

その神とは、水神姫大神と水神大神であった。現在の菊池神社の祭神は、菊池氏歴代の当主であり、こういう神霊を祀ってはいない。しかし現に、こうして分霊された水神を岩手の地に持ち込んで大事に祀っている事実がある。この水神とは恐らく、阿蘇の神であろうと思う。阿蘇神社の祭神は健磐龍命と阿蘇津比咩であり、どちらも水神の扱いになっている。そして、菊池氏と阿蘇神社の共通するものは、家紋である。

「違い鷹の羽」の家紋は、菊池氏よりも阿蘇神社で採用したのが古く、その由来は現在宮山であり、古くは鷹山という霊山で阿蘇権現(健磐龍命)の月馬が遊んでおり、阿蘇権現はその馬を鷹山の地主神吉松神に献上したという。その吉松神とは日下部吉見神の事であるそうだ。水神を祀る日下部吉見の娘を娶った阿蘇権現(健磐龍命)であるから、阿蘇の地を征服した健磐龍命が和平の名の元に、地主神の娘を貰い娶ったという事になろう。つまり、阿蘇地域は元々日下部吉見の水神を祀る地域であったという事になる。阿蘇神社の神事に御前迎えというものがあるか、その姫神の依代となる御神木を採りに(迎えに)行くのが鷹山であるそうだ。その鷹山にちなんで出来たのが、違い鷹の羽紋であるようだ。

「菊池氏要略」の年表を見ていると、菊池氏は寿永四年(1185年)に家紋を日足紋から揃鷹羽紋に改むとある。日足紋は元々日下部氏の家紋であり、太陽の光が後光のように差している図柄で、この後光の光を「足」と見立ててのもののようだ。つまり日下部氏は「日」を奉じる氏族であり、その後裔の菊池氏もまた「日」を奉じる氏族であるのだ。熊本の菊池郡を「菊池郡市神社誌」で読み調べてみると、殆どが阿蘇の神を祀っている。違い鷹の羽家紋が元々日下部吉見の霊山からきているものであるなら、日下部氏は日足紋と共に違い鷹の羽紋も持っていたという事。家紋の表紋、裏紋を持っている氏族は珍しいものではない。その日下部氏と繋がる菊池氏が違い鷹の羽紋を使用するのに、同族であるから何ら問題は無い。
鉄の蛇(日高見とアラハバキ)其の二十六_f0075075_21273377.jpg

阿蘇家であり阿蘇神社の違い鷹の羽紋は、権威の象徴であるという。それはある意味、鷹を権威としていた日下部氏を支配した事による鷹山という聖地奪取の象徴としての違い鷹の羽紋であったか。実際、蝦夷征討の過程で、支配した地から次々に朝廷へ、幕府へと鷹を献上する例が江戸時代まで続いたという。遠野では、織田信長に小友町の鷹鳥屋の鷹を献上した話が有名である。つまり、鷹を献上するとは権威の失墜でもあるのだろうか。その鷹を献上するという事例の一番古くは、紀元前での菊池氏と繋がる日下部氏の地であった阿蘇地方が健磐龍命に支配されたという事になる。そして、何故に蝦夷国で支配されるたびに、鷹が献上され続けて来たのか。それは、古代に阿蘇地方から逃げ延びて住み付いた人間を、朝廷側が理解していた為では無かろうか。それが「東日流外三郡誌」で云う阿蘇辺族・・・つまり、阿蘇の部族ではなかったか?それは、阿蘇の部族に伝えられる征服された古代の記憶を呼び覚ます行為が、鷹の献上であったのかもしれない。
by dostoev | 2014-07-16 21:47 | 鉄の蛇
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