遠野の不思議と名所の紹介と共に、遠野世界の探求
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起き上がり(黄泉がえり)

起き上がり(黄泉がえり)_f0075075_16491444.jpg

小野不由美「屍鬼」というホラー小説を原作とした漫画があり、この話では「起き上がり」という、いわば吸血鬼みたいに、死後起き上がって村の人々を襲って行くというものだが、この「起き上がり」というものに似た様な話が、遠野にも伝わる。

「遠野町古蹟残映」の第三章「伝説」の中に「死人と猫の話」というものがある。

遠野町に●之助といふものありき。其妻病みて死す。家悲しみの中に納棺をなし、屏風を立てめぐらし御通夜をなしたり。夜更けて棺のあたりにて、けたたましき音聞こえたりしかば、怪しみて検べし中に一匹の猫あり。屍立ち上がりてありしと云ふ。

そもそも、遠野では未だに葬儀の際、鎌などの刃物を棺に乗せたり、卒塔婆と一緒に掲げたりする風習が残っている。これは魔が忍び寄らない為であり、その魔とは一般的に猫と云われる。猫は死体を操るとも云われ、その死体が起き上がらない様、死体の側に刃物を置くのだが、昔から剣などの刃物は魔除けとしても伝わっているからだ。「遠野町古蹟残映」の伝説欄の後半には、化け猫の話がズラリと並ぶが、その殆どは江戸時代を中心に語られ、その時代から遡る事が無いようだ。つまり、化け猫の話は江戸時代になって庶民の間に広まった可能性は高いだろう。

日本で猫が最初に登場するのは「日本霊異記」である。これは、慶雲2年(705年)に豊前の広国という人の父が死んでから猫になって、息子の家に飼われるという説話として登場しているので、実際にその頃日本に、猫がいたのかどうかはわからない。実在の猫が登場するのは、仁和元年(885年)に唐から渡来した黒猫を宇多天皇が育てて日記に収めた事が初めであった。その宇多天皇は猫に向かって、こう言った。

「お前は、天地陰陽の気を含み、四支(両手・両足)七こう(両目、両耳、両鼻、口)を備えているのだから、わたしの心がわかるのだろうね。」



天地陰陽の気を含むとは恐らく、猫の瞳の変化を述べていると思うが、この時点で宇多天皇は猫を、人の心を見透かす霊獣か何かと感じたようだ。その猫が伝わってから太平の世となる江戸幕府が開かれる1603年までに、約700年間の開きがある。その700年の間に猫は、様々な神格を備えたのかもしれない。
起き上がり(黄泉がえり)_f0075075_17271088.jpg

漫画「屍鬼」では、舞台である外場村の弔い方法が土葬であったのが大きいのだろう。現代では殆ど火葬となっているのだが、唯一例外は数年前に遠野市土淵町恩徳においての土葬であった。ところで以前「早池峰山と火葬の話」で紹介したが、早池峰の神は火葬の煙を忌み嫌うという話だが、その内容は彌彦に伝わる化け猫でもあるヤサブロバサに似通っている。

昔観た映画「怪猫伝」で、化け猫が縁の下で死体を喰らっているシーンがあり、化け猫は死体を喰らうという迷信を下敷きとして描かれていたようだった。ただ化け猫の迷信の中で「死体を操る」というものもあり、化け猫がクイックイッと手招きをすると、生きている人間でさえ操られてしまう設定がいくつか見受けられる。もしかして、化け猫とは死体を奪って喰らうのではなく、自由に操る為に死体を奪うのではなかろうか?


「綾織村から宮守村に越える路に小峠という処がある。その傍の笠の通という山にキャシャというものがいて、死人を掘り起こしてはどこかへ運んで行って喰うと伝えている。また、葬式の際に棺を襲うともいい、その記事が遠野古事記にも出ている。その恠物であろう。笠の通の付近で怪しい女の出て歩くのを見た人が、幾人もある。その女は前帯に赤い巾着を結び下げているということである。宮守村の某という老人、若い時にこの女と行き逢ったことがある。かねてから聞いていたように、巾着をつけた女であったから、生け捕って手柄にしようと思い、組打ちをして揉み合っているうちに手足が痺れて出して動かなくなり、ついに取り逃がしてしまったそうな。」

                       「遠野物語拾遺113」


この死体を喰らうという妖怪キャシャという化け猫と、取って付けた様な怪しい女の話の結び付きが理解できなかったが、その怪しい女が化け猫によっての「起き上がり」であるならば、その繋がりが理解できるのだ。

ところで死の国として思い出すのは黄泉の国だ。黄泉の国には黄泉の住人である黄泉醜女がいるのだが、黄泉の国自体が死人で構成されている世界だ。人が死んで、その死体が黄泉の国の住人と成る。その死体が黄泉の国で生きる世界は、土葬という葬法によって成り立つのだ。早池峰の神が火葬の煙を忌み嫌うというものは、もしかして死体が焼かれ消滅するのを嫌っているのでは?という想像が働く。それは早池峰の神は、琵琶湖の桜谷において鎮座していた。その桜谷は黄泉の国と繋がっているという迷信が伝わっている。黄泉津大神とは死んだ伊邪那美であるが、どこかでその伊邪那美と早池峯大神の神格がダブってしまうところがある。

火葬によって死体が消滅しないという事は、その死体はそのまま黄泉の国の住人になるという考えは、ある意味「起き上がり」という蘇る死体になる事でもある。遠野の人は死んで魂は早池峯を昇るとも云われるが、その早池峯の八合目付近に賽の河原があるのは、死んだ魂が集まるという山岳信仰が仏教思想と結び付いて出来たものであろうが、余分なものを省いて早池峯という山を示せば"死の山"という称号をつけても良いくらいだ。何故なら早池峯は羽黒と結び付き、羽黒三山の中に湯殿山があるが、そこには即身仏も含め死の匂いが漂う世界だ。

山神の使役は狼であったり馬であったりするが、その死の山としてのマイナス面からの使役としていつからか猫が登場してもおかしくはない。死体が安置された棺に刃物が置かれるのは、その山神の死の使いである猫から死体を守る為でもある可能性も意識したい。
起き上がり(黄泉がえり)_f0075075_21545143.jpg

山々の奥には山人住めり。栃内村和野の佐々木嘉兵衛と云ふ人は今も七十余りにて生存せり。

此翁若かりし頃猟をして山 奥に入りしに、遥かなる岩の上に美しき女一人ありて、長き黒髪を梳りて居たり。顔の色極めて白し。不敵の男なれば直に銃を差し向けて打ち放せしに弾に応じて倒れたり。其処に馳せ付けて見れば、身のたけ高き女にて、解きたる黒髪は又そのたけよりも長かりき。

後の験にせばやと思ひて其髪をいさゝか切り取り、之をわがねて懐に入れ、やがて家路に向ひしに、道の程にて耐え難く睡魔を催しければ、暫く物陰に立寄りてまどろみたり。其間夢と現との境のやうなる時に、是も丈の高き男一人近よりて懐中に手を差し入れ、かのわがねたる黒髪を取り返し立ち去ると見れば忽ち睡は覚めたり。山男なるべしと云へり。

                   「遠野物語第三話」

起き上がり(黄泉がえり)_f0075075_21563645.jpg

「遠野物語3」に、鉄砲で撃たれたトヨの話が紹介されているが、このトヨは「遠野物語22」において、祖母のミチの死後に病死している。その当時は火葬では無く土葬であったらしい。そのトヨの死体が入った棺桶を担いだ人によれば、途中で少し重くなったと感じたらしいが、そのまま埋葬されたようだ。その翌日、トヨの墓へと行って見ると、埋めた筈の土に穴が空いていて、棺の中は空であったと。つまりトヨは起き上がりであり、黄泉帰りであったようだ。トヨの戸籍は2つの死が記されている。

明治八年二月死

明治十三年十二月廿二日死亡


二つの死亡が戸籍に記載されているのがトヨであった。

ここで、何故「遠野物語3」において鉄砲撃ちの嘉兵衛がトヨを鉄砲で打ち殺したのかは、当然の事だった。トヨは1度死んで蘇った「起き上がり」であったからだろう。死んだ筈の人間が生きて山中を彷徨っているというのは、生者にとって恐怖でしかない。その恐怖を払拭する為に、鉄砲撃ちの嘉兵衛はトヨを撃った。「起き上がり」であったトヨは、二度死んだのであった。
by dostoev | 2013-11-12 18:34 | 民俗学雑記
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