遠野の不思議と名所の紹介と共に、遠野世界の探求
by dostoev
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「わたしの怪奇体験談(その2)」

「わたしの怪奇体験談(その2)」_f0075075_4382863.jpg

わたしたちの心は、不安に苛まれし時を過ごしている。どれくらいの時が過ぎていったのであろう…。ふと、わたしはビデオのことを、思い出した。先程の音を再現しようとわたしは、録画スイッチを解除し、巻き戻してみた。

 はじめに、台所に通ずるドアの場面を見つけた。カメラの死角であった為、ドアは写ってはいなかったが、〃あの音〃だけは、明瞭に刻まれていた。証拠品としての評価は高いが、問題はその後である。何と、ビデオの映像が途絶え、テープがノイズの世界になっているではないか。果たして、超自然の力が、ビデオにまで及んだのであろうか?不安と疑問、そして恐怖の世界に、わたしたちは包まれたのであった。
                   
 腕時計をぼんやり眺めてみると12時を回っていた。『ああ、12時か…。』と思ったその時であった。激しい雨音の中、再び車のエンジンの音が聞こえてきたではないか。わたしたちの心の中には疑念が芽生えた。先程と、同じ音の流れ。わたしたちは何もせず、ただ流れのままに、その音を受け入れたのである。疲れ、動くのが面倒くさかったこともあるが、それよりも同じ事を二度もやりたくなかったのである。すると、聞き慣れた声が聞こえるではないか。


「オーイッ!大丈夫か!」

 今度こそ、友の声である。友は、駆け足で玄関まで来、元気よくドアを開け放った。


「どうだ、でたか?」

「差し入れ持ってきたぞ。」



元気に登場した友に、今までの経過を、詳細明瞭に語り伝えた。
「わたしの怪奇体験談(その2)」_f0075075_4485185.jpg
               
 いつの間にか、雨があがったらしい。確認する為、わたしは外に出てみた。僅かに雨を感じることはできるが、大したことはない。わたしは緊張の密室から解放され、嬉しさのあまり、雨露をたっぷり含んだ雑草の中、足が濡れるのも構わずに駆け出した。

 わたしは、友の車の場所まで来てみた。この場所からは、幽霊屋敷を見下すようによく見える。どうやら皆は再び、屋敷の内部を探検している様である。ロウソクの明りらしきものが、何度も何度も廊下を行ったり来たりしている。皆も積極的に頑張っているのであろう。感心感心…。

 わたしはここで、あるものを発見した。それは、神社であった。この道路の山側に面した所に、その神社はあった。鳥居の奥を、わたしは覗いてみた。だが、真暗で何も見えない。ここで、わたしは思った。この奥を合理的に確認するには、肝試ししかない、と。さっそくこの素晴らしい提案を、皆にも教えたいが為、わたしは屋敷に戻った。
                   
 屋敷内では、皆が部屋の真中にかたまっていた。わたしはその中に、息を切らせながら入っていった。

「ゴー、どこまでいってきたんだ?」

 わたしはその言葉に答え、いきなりきりだした。

「上の道路まで行ったんだが…。なあ、肝試しやろう。」

「え~っ、肝試し…。」
 

嫌そうな顔をして、皆は答えた。

「いや実はな、道路の脇に神社をみつけたんだ。ここでじっとしているのも、つまんないだろっ。」

「ん~っ…。でも、まだこの屋敷の中も見てないしな。」

「えっ?さっき、屋敷内をみてたんじゃないのか?」

「なんで?だって、俺たちここに来てから、ずっとこの部屋にいたんだぞ。」

「そんな、誰かさっきロウソクを持って、廊下を歩いて…。あっ!御免俺の勘違いだ。」


 危ないところであった。ここでわたしが、皆の恐怖心を煽ったら、誰も肝試しに行かないではないか。それでは、つまらんではないか。しかしその事態は、どうにか回避できたようである。後は、皆の自発性を待つだけなのだ。どうやら皆は、肝試しの決心を固めたようだ。そこでさっそく、肝試しの順番を決めることにした。だが、ここで皆の〃ある〃小さな拒絶にあった。その拒絶とは、一人で行くのではなく、二人ペアということだった。今度は、わたしが面白くない番である。

 わたしの哲学での肝試しとは、一人で行くものと決めてあるからだ。しかし、多勢に無勢。どうも、少数意見の尊重とは、この世に存在しないようである。結局わたしが折れ、二人ペアということになった。しかし、男同士のペアというのも考えもんである。肝試しのペアとはやはり、男と女と相場が決まっているからだ。

 ところで、肝試しでの男と女の関係には、もしやSとMの関係が入り込むのではないのだろうか?
男は〃男らしさ〃を強調する為、虚勢を張り、暗闇の恐怖を否定する。女は〃女らしさ〃を強調する為、怯えの演技?をし、暗闇の恐怖を肯定する。そしてその女の怯えが相乗効果を招き、男に対して喜びを与える結果となるのだ。そう、ここでの男の喜びとは、女の怯えである。女の怯えの心が〃女らしさ〃を追及し、男を求めさせるのだ。


「S男さん、怖くないの…。」

「大丈夫、俺は男だよ。」

「S男さん、お願い。もっと、ゆっくり歩いて。」

「しょうがないな…。」

「ねえ、つかまってもいい?」

「…。」


 これであるっ!これこそが、ペアで行なう肝試しの本質なのだっ!さらに男は女に、もっとピッタリ寄り添ってもらいたいが為、怖い話をし、女の恐怖心を煽りたてる。この男の感覚は、まさにSに等しい。そして、怯えてその男にしがみつく行為というものは、責められながらも、責める相手を求めるという、まさしくMではないか。

 この関係が、男と男に当てはまった場合、それは〃なに〃の世界となる。そして〃なに〃の世界は現存する為、否定はできないが、わたし自身〃なに〃を受け入れぬ、いや!拒絶したいが為、男と男のペアには反対なのだ。まあ、このメンバーは大丈夫だとは思うのだが、何が起こるか分からぬのが、今の世であるから。人を信じられぬのが今の世であるから…。男にとって、女が狐だとしたら、男は…やっぱり狼なのだ。カマを掘られたという話も何度か聞いたし…。

 ここで話を横道に反らせることにしよう。何故わたしがここまで、この問題に拘っているのか。実はわたしの過去に、ある一種の〃ホモ体験〃があったからだ。ただ、勘違いなさらんでほしい。なにもわたしが、〃ホモ〃に走った訳ではないのだから…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
                   
 あれはわたしが、名古屋にいた時であった…。まだ十九であったわたしは、あらゆる性風俗に興味を示していた。遠野という、あらゆるものの閉ざされた町にいたわたしが、あらゆるものを解放する都市に来た反動によるものであったのだろう。わたしの〃ホモ体験〃は、地下鉄『今池駅』改札を通ったすぐそばの〃ポルノ映画館〃であった。確か、洋ものポルノの三本立てであった筈。わたしは勇気をふりしぼり、差恥心を捨て、大人びた声を装い、入場券を買った。なんとも懐かしい思い出である…。
 
そうして入った館内は、異様な光景であった。観客の数は結構いるのだが、何故か皆立って観ているのだ。その為に座席はガラガラで、『どうぞ、御自由に座って下さい。』と言っている様であった。
わたしは、やや後方に位置する場所の、丁度真中の座席に座った。

 スクリーンの中は〃真最中〃であった。わたしは新鮮な興奮の為、スクリーンに釘づけになっていたのだが、なにやら前方に二人並んで座っている客が、妙に気になりだした。その客は、男同士並んで座っているのだが、変にゴソゴソと落ち着きがないのだ。たまに「ウッ!」という声も発し、スクリーンに集中しているわたしの意識を妨げるのだった。 わたしの興味は、その客に向けられた。

『何やってんだろう?』 

この何も知らぬ、純粋なるが故の疑念であった。いつの間にか一人の客は、隣りの客の股間に、顔を埋めている。わたしは『む~っ。』と唸りはしたが、未だ理解出来ないでいた。そこへ、であった。メガネをかけた、平凡な顔立ちの中年サラリーマンが、わたしの横に来て話しかけてきた。

「すみません、隣り空いてますか?」

 わたしは、反射的に言葉を返した。

「ああ、空いてますよ。」

 だがその言葉と共に『なんでこんなに空席があるのに、わざわざ俺の隣になんかくるんだ…?』再び純粋な疑念を持ったわたしであった。

 わたしの意識は、三方へと飛びかった。だが、わたしは聖徳太子ではない。一度にスクリーンと、前方の客と、隣りの客とを注目するなど出来ないのだ。わたしは、選択を迫られた。結局わたしは、三百円もの金がかかっているスクリーンを選んだのだった。しかし、わたしがスクリーンに没頭するのを邪魔するかの様な態度を、隣りの客は行い始めたのだった。

 この客はわたしの左隣りに座り、足を広げ、右足をわたしの左足にツンツンと、モールス信号の様にぶつけてきた。わたしはムッとしたが、すでに意識をスクリーンに奪われていた為、その行為を黙認した。すると今度は腕を組み、その組んだ左手で、わたしの腕を触ってきたのだった。この瞬間わたしは『もしや、スリでは?』という意識が、脳裏を横切った。『そうだ、都会にはスリが多いと聞いている。だが、俺はそんなにお金は持ってないし…。しかし、スリというものには、そんなにお目にかかれるものではないな…。よし、もう少し様子をみよう。』

 わたしは、映画に夢中になっている〃ふり〃をし、隣りに座っている客を、横目で観察した。その客の目線は、一応スクリーンを追っている様であった。暗い映画館の為、微妙な表情は読み取れないが、〃スリ〃という心配はなさそうであった。わたしは安心し、再びスクリーンの中に展開される映像を観やった。その時である。なんとわたしの股間に、隣りの客の手が伸びてきたではないか。漸くわたしはここで、この客が〃ホモ〃であるという認識ができたのであった。

 その後は…言うまでもない。わたしがそのまま、この〃中年ホモ〃に身を委ねる筈がなかろう。直ぐ様わたしは映画館を飛び出し、名は忘れたが、ある喫茶店に心を落ち着かせる為、入ったのだった。この喫茶店の中では、暇そうにしている、二人のウエイトレスの姿があった。わたしが久々の客であるらしく『ああっ、やっと一人来たわ。』という顔で、そのウエイトレスは注文を取りに来た。
 わたしのコーヒーの注文を取り終えると、ウエイトレスは所定の位置に戻り、他のウエイトレスとの立ち話を始めた。


「ねえ、どうしてこの辺って、ヤーさんが多いのかしら?」

「あら、ヤーさんだけじゃないのよ。名古屋って、ヤーさんと、朝鮮人と、ホモが多いのよ。知らなかった?」



 コーヒーが出来上がった為、ウエイトレスは話を中断し、わたしの元に運んで来た。わたしはそのコーヒーを受け取り、窓の外を見やった。『そうか、そうなのか。名古屋とは、ホモが多い土地なのか。それならば納得できる。』わたしはコーヒーを飲みながら、決して名古屋では、ポルノ映画館と、深夜の裏通りには立ち寄るまいと固く心に誓い、この喫茶店を後にしたのだった。

 この〃ホモ体験〃が嫌なものとして、わたしの心に深く根づいた結果、わたしのすべては〃女のみ〃を求めるようになったのである。そしてこの体験こそが、わたしを不完全なる人間に至らしめた要因なのである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
                   
 さて、長話になってしまったが、とにかく肝試しは決行されることになった。いや、決行される筈であったのに、またしても波乱が起きたのだった。当初から参加していたのが四人。後から来たのが三人。3+4=7である。つまり、二人ペアで組んだ場合、どうしても一人余る計算となるのだ。その一人となるのを、誰もが拒んだ為、結局この肝試しは成立することなく終わったのである。その代わりといってはなんだが、深夜に行う〃神社探検〃という名目の下、七人が雁首揃えて出かけることになった。
「わたしの怪奇体験談(その2)」_f0075075_563146.jpg

 夏も終わりのこの時期に、高地に在る恩徳、さらに雨の影響が重なりあった為か、外は非常に寒かった。懐中電灯の明りが、地中から発する白い湯気をとらえる。まるで怪奇映画のワン・シーンの様で有った。わたしたちは、七人一緒に、鳥居を潜った。

「?…。」 

そこには、あるものが有った。過ぎ去りし宴会の、生々しい痕である。これを見、わたしはある昔話を思い出した。その話とは、こうである…。

ある場所で、鬼が毎晩宝物を持ち寄り、一番鳥が鳴くまで宴会を続けていた。それを知ったある男が、いつもより早い時間に、一番鳥の鳴き真似をしたのだった。その突然の鳴き声に驚いた鬼たちは、持ち寄った宝物も忘れ、慌てて逃げ出したのだった。それ見よがしに男は、その忘れていった宝物を持ち去っていったのである。その後、男は幸せに暮らしたのであった。
 
ここにある宴会の痕が、わたしには何故か〃鬼の痕〃に感じられたのだった。現実は、この界隈の人々が、古い慣習によって集まった結果としての、宴会の痕であろう。だが、わたしにとっての鬼の定義とは、貧寒たる現実に侵されず保っている血の誇り、塔のように屹立する反世俗の矜恃、流離のうちに保ってきた魂を持つ者。これこそが鬼であると思っているわたしは、この恩徳の地に住む人々こそが、鬼として相応しいと考えるに至ったのであった…。
「わたしの怪奇体験談(その2)」_f0075075_594138.jpg

 わたしたちに、何とも言えぬものを与えた〃痕〃を通り過ぎ、新たに目に入ったのは、神社の社そのものであった。懐中電灯で、その四方を照らしたのだが、〃幽霊〃らしきものは見当たらなかった。

 「さて…それじゃ、記念写真撮ろうかっ!」

 
 さすがにこれには、誰も反対する者はいなかった。神社の社を囲み、各自様々なポーズでカメラに収まる者たち。ここでは、恐怖という言葉も見当たらない。やはり、その他大勢とは良いものである。何故なら、どんな責任でも恐怖でも、皆で分け与えることが出来るからだ。しかし、暗闇でたくストロボの光とは、実に眩しいものである。それが三度も続くと、いい加減、目が見えなくなってしまう。その時であった。「ガサ、ガサッ。」 と、背後から、何者かが藪を歩く音が響いた。音に敏感になっているわたしたちの行動は、何とも素早かった。所持品をしっかりと抱え、脇目も振らず、一目散にわたしたちは、その場から逃げ出した。

 道路まで出ることが出来たわたしたちは、どうにか落ち着きを取り戻した。皆で話し合った結果、先程の音は多分、狸か狐ではないのだろうか?ということになった。しかし、もしそれが熊だとしたら、幽霊よりも恐ろしいこととなったであろうが…。「あれっ?ショーイチは。」ヤスが唐突に、その疑問を言い放った。わたしは辺りを見渡した。そうである。確かにショーイチが、その場にいないではないか。すると…である。

「オ~イッ!」という声と共に、ショーイチが何とも情ない顔をしてやって来たではないか。見ると、どうやら転んだ様である。泥だらけのショーイチの姿は当然、皆から馬鹿にされることとなった。人の不幸を労う程のお人好しなど、この中に誰もいる筈もないからだ。そして、そのままわたしたちは〃幽霊屋敷〃へと、再び戻った。
by dostoev | 2013-04-06 05:14 | わたしの怪奇体験談
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