2012年、7月の夜中に月の出を期待して、白見山へと登った時の事であった。殆ど登山者が登らない白見山は、登山道が完全に笹薮で覆われており、登山道を確認しながら登る作業に難儀し、やっと山頂に到達した時だった。どこからか「クエックエッ」という、ニワトリらしき鳴き声が聞こえる。ただ野生のニワトリがいるという話を遠野周辺では聞いた事が無い。いや、ニワトリ以外の何ものでもない鳴き声であった。
たまに、かなりの山奥で猫に遭遇する事はある。猫の大抵は飼い猫という意識がある為、かなりの山奥で猫と遭遇すると、驚く時もある。そしてニワトリもまた、人に飼われているという意識が働いている為、山奥でのニワトリのイメージがいまいちピンとこないものである。
昭和時代、北陸では飼い猫が逃げて野生化し、登山者を襲うという事件があったのを記憶しているが、飼われているニワトリが野生化したというものの殆どは、日本では無く海外であるようだ。果たして白見山の頂で聞いた鳴き声は、野生化したニワトリなのであろうか?それとも何か、違う鳥の鳴き声であったのだろうか?