遠野町の某、ある夜寺ばかりある町の墓地の中を通っていると、向こうから
不思議な女が一人歩いてくる。よく見ると、同じ町でつい先頃死んだ女であっ
た。驚いて立ち止まっていろ処へ、その女がつかつかと近づいて来て「これを
持っていけ。」と汚い小袋を一つ手渡した。
手にとって見るに何か小重たい物であった。恐ろしいから急いで逃げ帰り、家
に来て袋を開けて見ると、中には銀貨銅貨を混ぜて、多量の金が入っていた。
その金は、幾ら使っても無くならず、今までの貧乏人が急に裕福になったという
話しである。これは俗に幽霊金といって昔からままあることである。一文でもい
いから袋の中に残しておくと、一夜のうちにまた元の通りに一杯になっているも
のだと言われている。
この話は、上記の写真の一帯であったと伝えられている。