その小蛇事件の翌年の雪消の頃、前の小川に今まで見たことも無い小魚が群れを成して泳いでいる。あまりの事に、この小魚を掬い取って煮たという。食べようとすると、父親は「名前の知らぬ魚を食べる場合は、まじないをしてから食べろ。」と注意されたのだと。
縫はまじなってから、茅の箸でかき回すと魚であった筈のものが、すべて小蛇になっていた。驚いた縫は、去年の秋に娘を笑わせた小蛇を思い出し、恐ろしくなって、その小蛇に変わったものを裏山に棄てたのだと。
暑い夏の頃となると、煮魚を棄てた箇所の草は目立って繁っていた。しかし、その草を食べた牛は皆死んでしまったという。