某所に、あるお稲荷様の祠がある。その祠に何故か古いミシンが入っているそうなのだが、酉の刻頃になると、その古いミシンがカタカタと動き出し、それと一緒に女性の低い声が聞こえるのだという。とこが、誰かいるのかと思って中を覗いても誰もいない。未だにその古いミシンはその時刻には動くのだというが、その音を聞いた人は何人もいるそうである。
付喪神というのがあるが、長い年月を経て古くなった対象に、魂や精霊などが宿るなどして妖怪化したものの総じて付喪神と呼ぶ。「付喪」自体は当て字で、正しくは「九十九」と書き、長い時間(九十九年)に、多種多様な万物が長い時間や経験を経て神に至る物(者)」のような意味なのだという。この古いミシンもまた付喪神となったのであろうか。