最近、また自分の住んでいる遠野で熊目撃情報が相次いでいる。最近の熊は、里の残飯の味と作物の味を覚えたので小熊連れで山から降りて来る。それとは別にどうやら、冷害によって餌を求めて里に降りて来た熊が、里は餌場でと認識し遺伝子というか熊本能に訴えかけ、刻み込まれてしまったという。以前は里は人の領域でめったに侵犯はしなかったのだが、いつの間にか優れた餌場としての認識が持たれ、次の世代また次の世代と人里を良餌場という情報が伝わった為だという事は…今後、人里から熊の姿は消えないという事だ。
遠野の昔を紐解けば…実は、熊というものはいなかったらしい。岩手県全般でも、熊の歴史が少ないのは元々秋田県に数多く生息していた熊が、何かのきっかけで奥羽山脈を超え、岩手県に侵入したのでは?という説もあるらしい。だからか「遠野物語」を読んでも、熊の話は極端に少ない。北海道のアイヌにおけるヒグマとアイヌ人の関係に比べれば、遠野の里の人々との関係は希薄だ。やはり遠野は熊よりも、狼であって狐である。アイヌ人は熊を神と崇め、ロシア人は熊を兄弟みたいなものだと例えている。それだけ、熊との関わりあいが深いからだ。
ディズニーで有名な「美女と野獣」というストーリーは、どちらかというと西洋風の御伽噺だ。これが日本だと異類婚となり、見た目は人間だけれど正体は獣だったり、神だったりする。ロシアもやはり、熊というのは人間が魔法によって姿を変えられたものだという意識があるという。だからロシア人は「小熊のミーシャ」正式には「ミハイロ・イワーヌイチ・トプトゥイギン」という長い名前が付いている。これは人間の名残?を示している愛称なそうだ。
日本人が付けた、熊の愛称として一番親しみ易いのは「山親父」という言葉。これは頻繁に山へと登る、登山者が付けた愛称だったかな? 災害か何かの様に熊避けの方法を伝えているのが、大抵の日本人としての熊に対する意識のようだ。アイヌ人が神とした熊は、本土では山ノ神の使いにもなれない。映画「もののけ姫」でも、熊の扱いは脇役同然だった。だから、熊を特別な意識で祀っているロシア人とアイヌ人は、太古は大陸が繋がり、当然文化的にも似たような意識下で結びついているのだろう…。
ところで馬産地としての遠野における遠野人は、意外に馬肉を食べない。やはり家族同然に生活していた馬を食べるというのは気が引けるらしい。ところでロシアで熊は…よく食べるのだろうか?猟として熊を撃つという事はあるらしいが…人間が魔法によって化けているという意識が強いロシアでは、果たして熊を好んで食べるか食べないか?…調べないと、わからんなぁ。