遠野の不思議と名所の紹介と共に、遠野世界の探求
by dostoev
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赤羽根(青笹)

赤羽根(青笹)_f0075075_1048415.jpg

赤羽根という地名は、遠野に二ヶ所ある。そのうちの一つ、青笹の赤羽根には伝説が付随していた。「ものがたり青笹」に、その伝説が書き記されているので紹介したい。

赤羽根には溜池が多くあり、そのうち最も古いものを踊鹿の堤と呼んでいる。この堤は百五十年程前、天保年間に百専右衛門(ももせんえもん)という人が築いたと云われる。今では、周囲百メートルほどの堤であるが、その中央には、ぽつんと小さな島がある。踊鹿の堤には昔、主がいると云われ、村人達は神様の様に祀っていた。祭では、最後に中央の島に若い娘を捧げる事になっていた。その捧げられた娘は、次の朝には姿が見えなくなっているのが常だった。しかし、この様な事が何年も続くと、村人達も人を捧げるのが可愛そうになってきた。とはいっても供え物はしなくてはならないので、困った村人達は、とうとう堤の周りで飼っていた鶏を米と一緒に木の箱に入れ、島に置いて来る事にした。鶏達は、次の朝になっても元気な声で鳴き、その鳴き声はそれからも毎日聞こえてきたので、村人達は不思議に思ったが、主の祟りを恐れ、堤の近くに立ち寄らなかった。ある日、鳴き声が聞こえなくなったのに気付いた男が、恐る恐る様子を見に行くと、島の上に鶏の姿は無かった。そこで思い切って島に渡って見たところ、地面に鶏の赤いが散らばっているのが見えた。ところが、男が島に着いたとたん、その羽根がぱあっと舞い上がり、空へ空へと昇って行き、とうとう見えなくなってしまった。この話を聞いて、きっと主の仕業に違いないと信じた村人達は、それからこの土地を赤羽根と呼ぶ様になったそうである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これと似た様な話が「上閉伊今昔物語」に紹介されていた。それも、紹介したい。

青笹村踊鹿の堤は天保元年、遠野南部氏の家士、百専右衛門という人が、自らの私財を投じて開墾したところであるが、これには次の様な話がある。

この村には、昔から三つの沼があった。これ等は自然の沼であるとも云い、又、年代がわからないが、往時築いた沼であるとも云われているが、地方の開拓が進むにつれ、灌漑用水が不足した。その為に、これ等の沼の近くに、桜の堤と呼んでいる沼を作った。それは遠野の家士、中館氏が開築したと云われている。

これ等四つの沼でも水不足の為、その付近は良田とする事が出来ず、荒野となっている所が多かった。しかも当時は飢饉の年がうち続いたので、開田を望む事が急であった。その為、屡々更に大きい堤を造るべく、土地を占ったり、又起工したりした人もあった。来内の孫之丞という人もその一人で、工事を起こしたが、水を保たせる事が出来なかったので、途中で中止したと云い伝えられている。この様にこの地は適当と思われなかったが、必要性に迫られ、先人の失敗にも怯まず、百専右衛門が開墾を企てたのであった。そして工事を起こすにあたって、この堤の主として永久に守ってもらう為に、鶏一番と米一俵を生贄として埋めたという事である。その為か、旧址に起工したにも拘らず、所期の如く、東西三十間南北六十間の新堤が翌年には完成したという事である。

この堤の竣工に伴って水田が開かれ、地方を豊かにした事は、言うまでもない事であるが、其の後屡々、雨降りなどの時に、この新堤の附近で鶏のトキをたてる声がしたという事である。古老は「これは恐らく、生贄にした沼の主である鶏が鳴いておったのだろう。」と言っている。

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「ものがたり青笹」と「上閉伊今昔物語」では、かなり違っているのがわかる。まず時代的に、女性を生贄にする事は有り得ない話だが、これは祭と菊池氏の結び付きを考えれば、別の話が加わっているのが理解できる。とにかく「ものがたり青笹」と「上閉伊今昔物語」とを一つ一つ比較検討したいのだが、取り敢えず「赤羽根」という地名説を紹介したいと思う。
赤羽根(青笹)_f0075075_164765.jpg

伊能嘉矩「遠野方言誌」によれば「赤羽根」は、「Akka(水)」「Pana(川下)」の組み合わせで「水の川尻」の意であるとしている。また「上郷聞書」によれば、上郷の菊池久次郎氏「山の走り根のところで山頭部の所である」という説も紹介している。また別に「上郷聞書」では「奥州仙台領遠見記」を紹介し「御境は閉伊郡平倉村のうち、赤八年と言」という記録がある事を紹介している。伊達藩との境界が赤羽根峠である事から、この赤八年が赤羽根を指すのでは、という事らしい。

まず伊能嘉矩のアイヌ語説は、地形的に有り得ないだろう。堤工事に苦労した事からも、水の確保が大変な地であった。川尻であるのなら、もっと容易に水の確保が出来、その地に水を供給する堤を作らずとも良かった筈である。また菊池久次郎氏の説は、確かに標高のかなり低い八幡山の山頭の様でもあるが、それならば遠野に、もっと多くの赤羽根がある筈である。例えば遠野がアイヌ語の「トオヌップ(湖のある地)」から来ているのなら、東北全体に遠野地名が数多く無くてはならないと同じである。そして「奥州仙台領遠見記」の「赤八年」だが、恐らく聞き間違いによる誤記ではなかろうか?伊達藩でそう書き記しているのだろうが、遠野全体に、似た様なものも含め、そういう表記は一切ない。
赤羽根(青笹)_f0075075_16533718.jpg

ところで「ものがたり青笹」と「上閉伊今昔物語」での大きな違いは、鶏の扱いであると思う。「ものがたり青笹」では堤の主に生贄として池の島に、木の箱に入れた鶏を入れた事になっている。しかし「上閉伊今昔物語」では、堤の主になって貰う為に鶏を一番埋めたという事となっている。ここでまず、何故に鶏でなくてはならなかったのか。恐らくだが昔、京都では世の中が乱れたり、疫病が流行ったりした時などに、鶏に罪穢れを背負わせ、木綿幣と称する楮の木の皮で織った白い布を鶏につけて、四境の外に放したと云う。京都の四境とは、逢坂、龍田、鈴鹿、須磨となる。鶏は根の国・底の国の生き物と信じられていた。それで四境の関の外に出したのは、関が邪霊を塞き止めると信じられていた事に由来する。もしかしてだが、堰を関として考え、鶏を置いたのかもしれない。また番の鶏であったのは、「遠野物語拾遺28」の人柱の話で、「昔から人身御供は男蝶女蝶の揃うべきものであるから…」に則ったものか。「上閉伊今昔物語」の鶏の扱いは、明らかに堤工事が上手くいくようにと人柱の代わりとしての鶏の番であるが、「ものがたり青笹」は、堤の主に捧げる生贄としての鶏である。ただし霊的なものに頼るという事から、どちらも概念は同じである。
赤羽根(青笹)_f0075075_1815988.jpg

ところで鶏を埋める話は、岩手県にいくつか伝わっている。山の地主を呪い殺す為に、その山に鶏を埋めて呪い殺した話。地頭を恨んで鶏に呪いをかけて共に死に、その地頭の部落に凶事が続き全滅した話。それから霧の濃い夜に鶏の鳴き声が聞こえるようになったという。老夫婦が可愛がる娘が殺され、その娘と一緒に鶏を埋めたところ、何かあるたびに殺した男の所から鶏の鳴き声が響く話。相手との争いから死んでしまった馬と一緒に鶏を埋めたところ、相手の村の地面から鶏の鳴き声が響き、それから村に凶事が起きた話。また、境界争いから不利益を受けた為に相手を呪おうと、その境界に二羽の鶏を埋めたところ”のろこと花”が咲き、村人は恐れたという話。このように、相手を呪う時に鶏を埋めている。

鶏を埋める話の殆どが、呪いをかける話になっている。堤工事に、例えば水神を鎮める為の贄として鶏を埋めた話は、この遠野の話だけとなっている。ただ別に、平泉の金鶏山は鎮護の為に黄金の雌雄の鶏を埋めて築いた山だと云い、雨が降る時に、この山から鶏の鳴き声が聞こえたと伝えられている。何故に、鶏を埋めるのか?

鶏は毎日朝の到来を告げる存在になっているが、その逆となった場合、例えば夜に鳴いた場合、火事や洪水、そして死者を出す前触れの鳴声だとされる。鶏を埋める場合は生き埋めの様だが、地面に埋めるとはつまり、黄泉国、地下の闇の国に送るという事になる。その地下の闇の中で鶏が鳴くという事は、夜に鳴くに等しいという事。岩手県の事例を見ていると、鶏と一緒に埋めているものは、その不幸を受けた存在。つまり、その不幸や凶事を相手に送り返す為に、鶏を一緒に埋めたのだと理解する。例えば平泉の場合であるなら、平泉の鎮護とは、その平泉を滅ぼそうとする相手を呪う事で、その鎮護を果たすと考えれば、有り得る話である。「上閉伊今昔物語」は、平泉の話に近いのかと思う。恐らく、堤の鎮護の為に埋めたのだとも考えられるだろう。
赤羽根(青笹)_f0075075_1818306.jpg

山口健児「鶏」において、伊勢神宮の「鶏真似」という神儀が紹介されていた。伊勢神宮の式年遷宮の際、闇の中を正殿瑞垣御門内へ進み、まず扇にて頭の冠を三度打ち、続いて三回「カケコー」と高らかに唱えるのだと。すると正殿の扉が静かに開き、神殿の奥から御樋代が粛々と御出御になるのだと紹介されている。これを知ってふと思ったのは、鶏が鳴くと、夜が"アケル"という事だった。「アケル」とは「明ける」であり「開ける」でもある。伊勢神宮の正殿の扉が開くのは、鶏の霊的な鳴き声よるもの。ここで思い出すのは「驚岡(踊鹿)」という記事で書いた様に、踊鹿の以前は、鬱蒼とした光のなかなか当たらない無開発の地であったろうと推測した。おどろおどろしい地だから「おどろしい岡」が「踊鹿」になったのだと書いた。そこで思うのは「赤羽根」の「赤」である。

「日本語源大辞典」で「赤」の語源は、動詞「アク(開)」から別れた語で、明と同源となっている。「開」は「開発」の意味にもなる。また「羽根」の語源には、「ハ」という不安定な一音節を避ける為に、接尾語「ネ」を付けたものであるとしている。「ハ」そのものは「葉」の意味がある事から、「赤羽根」は「開く葉」という意味にもなるだろう。つまり、木々や葉っぱに覆われた鬱蒼とする踊鹿の地を開発する為の鶏の生贄であった可能性はあるたろう。そしてそのまま地名が「赤羽」となった経緯は、やはり鶏の「羽根」とも重なったのかもしれない。こうしていろいろ総合してみると、青笹の「赤羽根」という地名の由来は、開かれた地という意味ではなかったろうか。ただし、これは上郷町の赤羽根には対応していない。上郷町の赤羽根は、もう少し地形を見、伝承を調べてから考える事としよう。
by dostoev | 2017-12-09 18:49 | 遠野地名考
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