遠野市小友町の外山近辺で、猛スピードで走るイノシシが目撃された。また同じ小友の鮎貝近辺でも、イノシシが目撃されている例がいくつかあるようだ。ただし、ウリ坊の目撃が無い為、他地域から流れて来たイノシシの可能性もあり、まだ遠野には定着していないのかもしれない。
ところで十二支とは、植物の萌芽から枯れるまでを重ねられたという。その中で、本来の始まりは
”亥”とされる。普通は
”子”が初めだと思われがちだが、地面内部に種子が萌芽した状態を”亥”とし、地面から芽が出た状態を”子”とする為、亥が本来の始まりである。ところで山神の使いに、猪・蛇・狼(山犬)がいるが、亥が「初め」を意味し、蛇が「最盛」を意味し、狼が「終焉」を意味する。これがアニメ「もののけ姫」にも採用されたのか、導入部では祟り神に犯された猪が登場し、山中ではタタラを踏んで文化の最盛を誇示していた蛇を意味する「エボシ様」という女性が登場し、死の病に犯され、いつ死ぬかわからない狼がまさに終焉を表現していた。最後にシシ神の崩壊と共に、その世界の終焉が訪れたかのよう。つまり
”亥”は「終りの始まり」を意図していたかの様。イノシシが遠野に定着すれば、作物の甚大な被害が予想される。
昨日、いつもイチゴを売りに来る上郷町のお婆さんが
「最近はハクビシンにイチゴを食われて大変です。」と言っていた。過去にはいなかった木登りもするハクビシンは、かなり厄介者の様。某寺の屋根裏にも巣食い、退治するのに大変だったと云う。そして今度は、明治以降遠野から姿を消したイノシシが復活すれば、農家そのものの生死に関わるのかもしれない。例えば昔、あちこちにあった桃の木や梨の木が無くなったのは
「どうせ全部、熊に食べられてしまうから…。」と、木そのものを処分した農家が多い。動物の侵攻に、人間の防御が追いつかないからだ。
またイノシシが増えると、山での山菜・キノコ採りにも影響を及ぼす。熊は正直言えば、人間を見かければ大抵の熊は逃げる。しかしイノシシは逃げないという事から、イノシシが遠野に定着した場合、山での事故も増えそうだ。
ただ逆に考えてみれば、縄文遺跡ばかりで弥生遺跡の無い遠野は、狩猟生活に丁度良かったのかもしれない。後から日本人の主食としての米作りが推奨され、安定した食生活の為の田畑が定着してから、常に動物とのせめぎ合いが始まった。しかし今更、狩猟生活には戻れないのが現実。この動物との攻防の落としどころが難しいのが、現代というところだろう。