遠野の不思議と名所の紹介と共に、遠野世界の探求
by dostoev
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熊除けの鈴

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五月の連休中に、遠野の山々を登る為に泊った客がいた。最終日、石上山に登りたいからと、登山口まで車で送って行き、下山したら電話をくださいと話して別れた。その3時間後に電話で連絡が来たので迎えに行った。すると、熊と遭遇したという。

熊と遭遇したのは沢の所という話だったので、馬留の手前辺りかと思う。それか、幻の滝の辺りだろうか。それなりに距離があったそうだが、熊除けの鈴を持っていたので、鈴を鳴らせば熊が逃げるかと思い、熊除けの鈴を鳴らしたと。しかし、その鈴の音には全く反応せず、暫くして、やっとこちらの存在に気付いて睨めっこが始まったそうだが、その後すぐに熊は去って行ったそうな。

遠野の朝、学校へと通う小学生が通ると「チリン♪チリン♪」という鈴の音がする。どうやら熊除けの鈴を付けて登校しているようだ。以前、遠野駅から歩いて5分程度の幼稚園にも、熊が出没したくらいであるから、山がそばにある遠野小学校も、熊対策からの熊除けの鈴を付けての登校推奨であったか。とにかくホームセンターへ行っても、釣り具屋に行っても、必ず熊除けの鈴が売っている。また、山へと山菜キノコ採りへ行く人々にとっての必須アイテムが熊除けの鈴となっているようだ。「鈴を鳴らせば熊は人間が来たと思って逃げる」「存在を知らせる為に必要」とは云われるが、今回の石上山での熊との遭遇に、全く役に立ってないのはどういう事か。

以前、北海道で知り合った自然保護協会の会長さんに、さんざん熊の恐ろしさを聞かせられた事がある。そういう会話の中、個体によって性格が違うという事を言っていた。鈴の音を聞いて逃げる熊や、逆に好奇心旺盛な熊は寄って来ると。つまり、熊の個体によって反応が違うというのが正解か。確かに自分の兄弟や子供も、同じ血を分けていながら、性格が違う。あとは確率論だけになろう。

ところで家の猫の話になるが、そういえば何度か家の猫に向って鈴を鳴らした事があったが反応があった記憶が無い。鈴の音よりも、手でガサガサと音を立てるか、風で木々が揺れる音、人々の足音など、自然な音に反応している。自然界に無い鈴の音を学習する場合は、パブロフの犬の様に人為的なすり込みが必要ではなかろうか。そういう意味では、常時熊除けの鈴を付けて歩くのは悪いわけじゃない。ただし、経験豊富な熊には有効でも、子別れ、親離れををしたばかりの熊には影響が無いのかもしれない。例えば雪融け後の春先に、山へ行って見ると、子ぎつねや子テンが車の前に出て来る時がある。子テンなどは過去に二度程、車に向って威嚇してきた。つまり怖いもの知らずとは、経験不足でもある。猫も、車の怖さを覚えないと、車に轢かれて死んでしまう場合が多々ある。生き残ってきた個体とは、勇敢な個体では無く、警戒心が強く臆病な個体であると思うのだ。

結局熊除けの鈴とは、効果の無い訳では無いが、過信は禁物だという事だろう。逆に、熊除けの鈴の音に魅かれて寄って来る熊の方が怖い気がする。それ故に自分は、熊除けの鈴を付けたいとは思わないし、今までも付けた事が無い。それでも生身で熊と遭遇した事は幾度とあるが、襲われた事は無かった。ただそれは、運が良かっただけだろうか?
by dostoev | 2017-05-09 09:54 | 民俗学雑記 | Comments(0)
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