「遠野物語」において、山神の石碑・石塔がある場所は、山神に遭遇もしくは、山神の祟りの遭った場所として伝えられる。今回、台風が岩手県を直撃。多くの地で、大きな被害に及んだ。遠野は東寄りの地を中心に被害があり、その中でも台風は土淵町に大きな爪痕を残して行ったようだ。その被害の地を見て来て気付いたのは、その地に水神の碑、もしくは大蛇・龍神に関係するものが祀られていた。
山神の碑が祟りを為した地に建てられたなら、もしかして水神の碑もまた同じなのかもしれないと感じた。
台風一過で晴れ渡った空だが、川はまだかなりの水量と水圧を誇示している。
道路を見ると、台風の時にはここも川の様になっていたのだと理解できる。
水の力により道路の土は抉られ、崩れ落ちている。
土渕のいくつかの橋には、台風によってなぎ倒された樹木が川の勢いに流されたものが多く引っ掛かっている。まるで、津波の後の瓦礫の山を彷彿させる。
小烏瀬川の流域では、西内が酷かった。
道路が寸断され、対岸へと渡れなくなっていた。この西内には何があるかというと、蛇の舌出し岩である。昔、暴れまわった大蛇が倒され、三分割になり岩になった。その一つが、この西内となる。小烏瀬川側の被害が酷いところは何故か、この大蛇の岩を祀る場所となっていた。
この小烏瀬川の曲りに瓦礫が集まり、そこから水が溢れたという。
台風の中、もうこうなってはどうしようもない。
このカメラに見える範囲全ては、水没している。
この辺りには、明神社として知られる神社があるが、別当に聞くと以前は白竜神社であったという。この傍に、西内にある蛇の舌出岩と繋がる、その大蛇の尾岩がある。とにかく被害の酷い場所は、その西内の蛇の舌出岩から、蛇の胴体である続石の近辺から、この明神社近辺までが酷い。つまり一匹の大蛇が、平成の世に再び暴れたのが今回の台風であったか。山の林道も、お盆頃の大雨で立ち入り禁止になってしまった場所が多かったが、今回の台風で暫くは山道そのものが落石や土砂崩れの危険がある為、暫くは行けないだろう。特に、遠野盆地の東側に位置する山々には。