遠野の不思議と名所の紹介と共に、遠野世界の探求
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湯殿山の瀬織津比咩

湯殿山の瀬織津比咩_f0075075_1133592.jpg

延宝六年(1678年)、江戸時代の神道家である橘三喜が全国の一宮を行脚した記録である紀行文「一宮巡詣記」の一文を紹介したい。下記の文は、羽黒を参拝した後、月山、そして湯殿山へ行った時のものである。

「石体を拝し奉る、折節午の刻なれば、日光移りていとたうとかりき、夫石体は伊弉冉尊にして、南の方に立、北の方に向ひ給ふ、北の方なる山は伊弉諾尊にして、二神遘合の遺跡、上代よりをのずから顕れける事にこそ、月山の社は月弓尊、羽黒の社は天照大神、鳥海の社は素戔男尊、何れもいはれ有事なれどもらし侍る、中古天台真言より支配して、金胎の大日也と云ならはして、神代の残れる跡を知る人なきこそ悲しけれ、夫よりおひざの下を拝し奉るに、石体を流るゝ水は赤く、北の山より流るゝ水は白し、あなうれし、にへやの妙体難有神道成事をしらず、此所に到る者一世の行などゝて、親をすて子をすて、石体の神慮にそむく、かなしむべき事也、石体の上に荒神塚あり、少下りて滝あり、瀬有、落滝津瀬織津姫と観念しぬ」

橘三喜は、吉田神道を広める為の行脚であったようだが、吉田神道の観念の中に、湯殿山の荒神塚の下を流れる滝は瀬織津比咩であるという認識がなされていたようである。ただ、その表現は、滝があり、瀬があっての瀬織津比咩であるという認識とはひとえに、滝・瀬には瀬織津比咩が坐すという観念が定着していたとの表れであろう。

しかし、その34年後(1712年)の世に登場した江戸時代の百科事典でもある「和漢三才図会」には、橘三喜の記した荒神と瀬織津比咩の滝の場所を、下記の様に記している。

「滝の後に三宝荒神堂有り。不動の滝及び御沢に下り、地獄の行勢を見る。」

荒神が"三宝荒神"に改められ、滝は"不動の滝"だけにされていた。荒魂を祀って荒神とされたという説があり、湯殿山での荒神塚は天照大神の荒魂とされる瀬織津比咩を感じるが、三宝荒神となると仏教色が濃厚となり、明王系の顔立ちをした三宝荒神の像もある事から、瀬織津比咩の面影が失せてしまっている。そして滝もまた不動の滝とされているのは、そのイメージが不動明王となり、三宝荒神と同じく明王系に支配されたかのよう。

更にその78年後、寛政の三奇人として有名な高山彦九郎「北行日記」に、同じ場所が記されている。

「北に向ふて立つ是を湯殿山権現と称して拝す。予此辺りを見るに一人も居らず、其の傍らを登りて見るに岳番が居りたりといへる小屋一つ有れ共人は居らず。彼のぼんてん垣を入りて左リ赤岩の本に小穴有り是れより水神の窟と称す。権現の岩是れを大日ともいふ権現の本地仏の故とぞ。此の後より沢を西へ下り御蔵とて川滝の下に淵有り散銭を皆ナ爰を沈むると参詣の人を欺く、昨日蔵入せしなと聞へし実は別当へ収納せしを云ふなり。此滝を中王の滝とも称す。爰に大滝といふ有り又不動滝と号す。」

そして、その後に記されているものにも着目したい。

「熊野三社の岩庚青面金剛の岩胎内くゝり胎内権現と称す。弘法護摩を焼たる岩日天月天二十八宿岩灯明仏千軆地蔵大黒弁財天八万八千仏ぼんてん帝釈両部大日大りやう権現といへる岩銭を挟みて有り」

伊弉冉の石体は湯殿山権現となり、滝は不動の滝とは別に、大滝という新たな名称も加わっていた。出羽三山信仰の元は熊野信仰から伝わったという。「出羽国大泉庄三権現縁起」によれば、熊野三山の新宮が月山権現に、本宮が鳥海山に、那智が羽黒権現にかかるという。出羽三山の当初には湯殿山が入っていなかったが、後の出羽三山は羽黒山・月山・湯殿山となっているが、あくまで湯殿山は出羽三山の奥ノ院の扱いが正しいのだろう。その奥ノ院にもやはり、熊野信仰が伝わっている。"大りやう権現"で思い出すのは「義経記巻第七(三の口の關通り給ふ事)」の後半部である。弁慶が法螺貝を吹き鳴らし祈った冒頭の言葉が「日本第一大りゃう権現、熊野は三所権現」であった。

源義経の家臣に鈴木三郎重家がいた。岩手県の伝承には、その鈴木三郎重家が難を逃れ、現在の宮古市の横山八幡宮の神官を務め、その後に近内という地に老後を過ごし、破石という地で死んだとされ、その鈴木三郎重家を農神として祀り"法霊権現"と称したという。一旦は廃れた法霊権現を明和八年三月に再興し、その時の棟札に縁起が後世に伝える為に書かれた中に「熊野三所日本第一の大霊権現」と記されている。これは「義経記」と繋がるものである。「義経記」の解説には「大霊権現は熊野権現の事を云う。」とあるが、それが法霊権現であるとするのは、熊野権現とは広義的に那智の事を云うのが一般的の様だが、その那智には那智の滝があり、そこに祀られるのは飛瀧権現でもある。法霊(ほうりょう)は飛瀧(ひろう)の転訛であるとされる事から、湯殿山の"大りやう権現"もまた飛瀧権現の事を云うのであろう。

内藤正敏「修験道の精神宇宙」では、内藤氏そのものが過去の紀行文と同じ体験をしていた。実は、湯殿山詣の事を「御沢駆け」と称しており、仙人沢を沢登りして奥ノ院に参詣する風習が危険である事から禁じられていたようだ。内藤氏はそれを果敢に挑戦したのだが、その体験記を読むと違和感があった。それは過去の紀行文での御沢駆けとは沢下りであるのだが、内藤氏のの体験は沢登りである。とにかく内藤氏の本を読むと、過去に瀬織津姫と観念された滝は、不動の滝及び大滝と名称が変化していたのだが、現代となってその滝は「御瀧大聖不動明王」となっていた。更に荒神が三宝荒神となっていたが、内藤氏によれば、出羽三山では三宝荒神を本尊の裏側に立てて守護するよう定められていると紹介している。その三宝荒神の後方には大きな鏡があり、天照大神だとされているようだ。荒神は荒魂を祀るものであるという説からすれば、天照大神の荒魂として湯殿山の三宝荒神があるという事になる。そしてそれは湯殿山の御神体でもある、温泉が涌き出る茶褐色の巨岩にも通じるのだろう。

この茶褐色の巨岩は、橘三喜が記した紀行文で記してあった"赤い水を流す石体"の事である。ただその石体は、伊弉冉であるとしていたが、気になるのは現在その三宝荒神を「来名戸(くなど)の神」と彫った石碑としている事である。「くなど」は「来な処」すなわち「きてはならない所」の意であり、境界をも意味する。御神体岩が伊弉冉であるなら、その境界は現世と黄泉国の境界を意味するのであろう。「和漢三才図会」での御沢駆けの表現に「不動の滝及び御沢に下り、地獄の行勢を見る。」と書き記されている事から、黄泉国が仏教色に変換されて地獄の行勢と表現されるようになったのだろう。学者の説によれば、恐らく御神体から流れ落ちる水の先が地下他界としての地獄の世界ではないかとしている。これは琵琶湖の佐久奈谷が、黄泉国と繋がっている伝承と結び付くものであろう。その境界に立つのが来名戸の神であり、三宝荒神であり、天照大神の荒魂、瀬織津比咩という事になろうか。地獄は出羽三山にいくつも登場し、例えば祓川にかかる橋を無明の橋と呼ぶが、無明の橋とは三途の川にかかる橋を意味し、実際に祓川の傍には葬頭河婆を意図した姥堂がある。また、かっては五重塔傍に血の池地獄と記された地があったのも、全ては女人救済儀礼からのものであったとされる。それは元々出羽であり羽黒が、熊野信仰から発祥したものであるからなのだろう。出羽三山のうち、羽黒山だけが女性でも参詣できるのは熊野信仰の影響をそのまま受けているのもあるが、羽黒権現そのものが熊野権現でもあるという事では無いか。熊野三山が人々の信仰を集めたのは、身分の貴賤、浄不浄を問わず誰をも広く受け入れる平等性と開放性もあるが、先に記したように熊野権現とは那智の神でもあり、そこに流れ落ちる那智の滝は、穢祓をする強大な滝でもある。その強みがあるからこそ、身分の貴賤、浄不浄を問わないのだろう。その出羽三山の奥ノ院である湯殿山にも、当然の事ながら穢祓の神は鎮座していたという事か。
by dostoev | 2016-07-05 07:33 | 瀬織津比咩雑記
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