遠野市上郷町の川沿いに「猫沸」という石碑を見つけたのだが、恐らく「猫淵」であろうと思っていた。この唐突な猫沸の石碑は、猫淵神社との関連があるだろうと思い、今年の6月に住田町の猫淵神社へと足を運んだが、その関係がわからなかった。しかし今回、陸前高田の矢作町の猫淵神社を見に行ったところ、こういう絵馬を見つけた。
奉納「猫佛様」とあった。「猫沸」と「猫佛」、「猫沸」は「猫淵」の変換系かと思ったが、この絵馬を見れば「猫沸」は「猫佛」の間違いだったか。ただ音的には「ネコブチ」と「ネコフツ」との類似を感じる。つまり「猫佛」という漢字と「ネコブチ」という神社名の混同が「猫沸」という石碑の文字の間違いとなった可能性は強いだろう。つまり「猫佛(ねこぼとけ)」であれば、仏教との習合からくる尊称としての「猫佛」なのだろうか。
陸前高田矢作町の猫淵神社は、日月堂と八幡神社との並びにある簡素な社だった。
恐らく末社扱いの猫淵神社になるのだろうか。
祭壇には猫の置物が奉納されているが、この猫淵神が、何に対して御利益があるのかは、よくわからない。
この猫淵神社の伝説に登場する猫は虎猫らしいが、この木彫りの猫は木目を上手に利用した虎猫となっている。
猫淵不動明王守護とあるが、宮城県の横山不動尊との関係があるらしいので、それからの命名であろうか。横山不動尊といえば、遠野市上郷町の赤羽峠に伝わる
「逆さ水の伝承」にも横山不動尊は登場する。水を自在に操る不動尊が、死体を操る化け猫との習合を果たしたのだろうか。恐らく、上郷町の猫沸の石碑は、横山不動尊と猫淵神社を信仰する人物が、赤羽根峠経由で持ち込んだのだろう。