祭神の名に瀬織津比咩の名は無いが、恐らくここもかっては瀬織津比咩を祀る神社であったろう地へと行ってきた。静かな集落の中にポツネンと佇む神社の境内に足を入れると、そこには一面、アザミの花の群生があった。
そのアザミの花々に無数に群れている蝶々がいた。クロアゲハチョウであった。近付いてカメラを向けても逃げる様子が無い。とにかく、見渡してもアザミの花々を渡り飛んでいる蝶は、クロアゲハ以外にいないという不思議な光景だった。
耳を澄ましても、聴こえてくるのは鳥の囀りだけ。そして目の前に広がるのは、クロアゲハの乱舞。かって、遠野の山奥で、名もわからない野花に群がる無数のタテハチョウもまたカメラを向けても逃げる事が無かったが、この神社は人里の中の一角である。ある意味、神社の聖域ではあろうとは納得できるが、こういう人の往来がある場所で、逃げないクロアゲハチョウの姿に出会えるとは思ってもいなかった。
とにかくこれも、瀬織津比咩と縁があったという事だろうか。この時の光景は、忘れないだろう。