今年は、某部屋の打診がままある。実は以前、座敷ワラシ関連から某テレビ局がその部屋の紹介をしたところ、いくつか予約があったのが記憶に新しい。その中で、秋田県の親子がその部屋を指定して泊った時の話だ。
泊った翌朝、その親子は下に降りて来て朝食を食べ始めた。その時に会話をしていたところ。
「お宅の猫ちゃんは、賢いですね。」
どうしたのかと訳を聞いたら昨夜遅い時間帯に、風呂に行こうと部屋を出たところ、扉の前に黒猫がチョコンと座り「ニャー」と鳴いたと。
「あら猫ちゃん、私はこれから風呂に行こうと思うから、案内してね。」
すると黒猫は「ニャー」と鳴いて、そのお客を先導して風呂場まで案内したと云う。しかし風呂場には鍵がかかっており、入れなくなっていたと。
「あらぁ猫ちゃん、お風呂に入れないね。」
と言うと、黒猫は風呂場の扉をガリガリと爪とぎをするようにしたところ、中の人が気付いて扉を開けてくれたと云う。
「ありがとうね、猫ちゃん。」
その当時の家にいた猫とは、グーと呼ばれるメス猫と、ハイ君と呼ばれるオス猫の2匹だった。いや正確には、グーが出産したばかりなので、某部屋に籠って赤ちゃん猫に付きっきりでお乳をあげていたので、恐らく客が言う「猫ちゃん」とはオス猫のハイ君だったろうと思う。思うというのは、続けざまに客が話してくれた猫の話が有り得ない話だったからだ。
「実は、明け方にも猫ちゃんがトイレに案内してくれたんですよ。」
やはり明け方まだ暗いうちに、そのお客は目覚めてトイレへ行こうと部屋の扉を開けたところ、やはり黒猫がチョコンと座り「ニャー」と鳴いたと。
「あら猫ちゃん、おはよう。わたしはこれからトイレに行くのよ、案内してくれる?」
と黒猫に対して言葉をかけると「ニャー」と鳴いてトイレへと案内したそうな。しかしトイレは歩いて数歩のところなので、案内するほどでは無かったそうだが、その黒猫がやはり言葉を理解してトイレまで案内したのに驚いたのだという。
明け方というが時間帯を聞くと朝の4時半頃であったという。しかしだ、自分が朝の6時頃に用事があって2階の某部屋へ行くと、猫の鳴き声がする。あれっ?と思って、扉を開けると黒猫のハイ君がそこにいた。恐らく昨夜、たまたま人の出入りに紛れてその部屋に閉じ込められたようだ。そして出産したばかりの猫のグーは、某部屋の中で赤ちゃん猫達にお乳をやっていたものでぐったりしていた。つまり、お客を風呂場やトイレに案内できる黒猫などいなかったのだった…。
自分が、それは有り得ない話だと言うと、親子である娘の方が、急に立ち上がって部屋の方へと急いで言った。暫くした後、その娘がデジカメを片手に降りてきた。
「これ見て下さい!」
そこには無数のオーブみたいなのが沢山写っていた。ただオーブは埃がストロボの光に反射したものだと言われるので、何とも言えないが、客は嬉しそうにして宿を後にしていったのだった。
ところが今年、やはりそういう希望のお客が指定で同じ某部屋に泊った。すると、やはりデジカメで部屋の内部を撮影した画像を見せられた。
「どう思います?」
見ると、部屋の中には沢山のオーブと一緒に、光る球体が写っていた。オーブは埃の可能性もあるのだが、この画像に写っている光る球体を、どう説明して良いのかわからなかった。座敷ワラシで始まった某部屋の騒動が、謎の黒猫に広がり、写真の怪に繋がって行った。まあそれでも家に、もしくは客に何かあったわけでもないので、これはこれで楽しむ気持ちがあればいいのだろう…か?