夜ん鳥ホーイ 朝鳥ホイ
世の中わるいときゃ鳥も無えじゃ
ホーイホイ
あんまり悪り鳥ば
頭わって塩つけで
遠だ島さ ぼってやれじゃ
ホーイホイ
遠だ島に席ぁ無がら
罪獄島さ ぼってやれじゃ
ホーイホイ
「夜ん鳥ホーイ」
夜来る鳥も、朝来る鳥も、世の中悪い時、作物の採れない時は、鳥が来たって仕方ないが、とっても悪い鳥は遠い島へ島流しにしてしまえ。だが、遠い島が一杯なら、罪獄島へ追い払え…という意味の歌だというが、実際は違う意味を持つという。
鳥は、実際に嫌われていた。三重県北牟婁郡紀北町の山に伝わる「種まき権兵衛」の民話での、余りにも有名な歌「権兵衛が種まきゃ、カラスがほじくる」というように、カラスだけでなくスズメや他の鳥たちも、人間の植えた種などをほじくって食べた事から、鳥全般は悪と思われ、その鳥から守る為にカカシを設置してきた。カカシのその形態は蛇から発想された様で、昔から害鳥を捕食する蛇は畑の守り神であった。
しかし、畑に悪さをするのは鳥だけでは無かった。それは、今まで年貢と言うものが殆ど無い遠野に、初めて年貢という苦しみをもたらした悪は、阿曽沼氏という存在だった。奥州藤原氏が源頼朝に滅ぼされ、この遠野を統治し、年貢を課したのが阿曽沼氏だった。その阿曽沼氏を
"悪い鳥"に見立てて歌ったのがのが、この歌であるという。これが発覚すれば、この歌は禁止されたろうし、この歌を唄った者達も咎められたろうが、元々鳥は百姓にとっての天敵であり、悪であった為に、発覚する事は無かったようだ。為政者に苦しめられた民衆は、せいぜいこういう歌に不満をぶつけるしかなかったのだろう。