…竜ノ森ばかりでなく、この他にも同じような魔所といわれる処がある。土淵村だけでも熊野ノ森の堀、横道の洞、大洞のお兼塚など少なくないし、また往来でも高室のソウジは怖れて人の通らぬ道である。
「遠野物語拾遺124(抜粋)」「遠野物語拾遺124」に語られる魔所の一つ「熊野ノ森の掘」は、山口修理の館跡のようで、薬師堂の裏地が東門にあたるなら、この熊野ノ森の堀は西門にあたる場所だ。この森に入ると、いきなりモミジガサ(シドケ)があった。
その奥に進むと、深い館の空堀跡があった。館跡の堀としては、遠野でも大きい方ではなかろうか。何故、ここが魔所になったかというと、うらぶれて荒んだ場所は、廃屋が後に幽霊屋敷と語られるような感覚に近いのではなかろうか。そして何故「熊野ノ森」と呼ばれるのかは、この堀の傍に、やはり荒んだ熊野神社があるからだ。