遠野の不思議と名所の紹介と共に、遠野世界の探求
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「わたしの怪奇体験談(その12)」

暑い最中、わたしは徒歩一時間弱で、目的の民宿に着いた。

『へ~っ、結構きれいなんだ。』

 と、思ったのだが、よく見ると全面に押し出している建物は『××旅館』とある。そしてその奥にある、古びた建物の看板には『民宿××』とあった。つまりわたしの泊まる宿は、古びた建物となるのだ。とにかくわたしは、その民宿の中に入ってみた。

「ごめんくださ~い!誰かいませんか?ごめんくださ~い!」

 すると「は~い!」という声と共に、結構若いあんちゃんがやって来た。

「すみません。予約をしていた、佐々木と申しますが…。」

「ああ!佐々木様ですね。いや~っ、今日、港まで迎えに行ったんですが、どうしました?心配したんですよ。」

「いやちょっと、手違いがありまして…。」

「まあ、とにかくお部屋に案内しますから。さあ、どうぞどうぞ。」


 案内されるまま、わたしは薄暗い廊下を歩き、階段を上がり、二階の結構見晴らしの良い部屋に案内された。部屋自体は、良くも悪くもない。まあ、普通の部屋であった。

「それじゃ、御用の時はお呼び下さい。」

「あっ!すみません。」

「はい?なんでしょう。」

「あの〃愛とロマンの八時間コース〃はどう行くんです?」

「ああ、あれは今日、船が着いた港から出る一番のバスで、最北端のスコトン岬まで行き、そこから徒歩ですよ。でも〃愛とロマン〃といいますけど、結構大変ですよ。きのう女の方がガケから落ちて、大怪我しましてね…。お客さん、行くんですか。」

「はい。」

「がんばって下さいよ。なんたって〃愛とロマン〃ですから。それじゃ行くんでしたら、明日5時に起こしますので…。よろしいですか?」

「はい。」


 と、番頭らしきあんちゃんは、去って行った。さてわたしはというと、まず、腹ごしらえをしてから、この近辺を見て回ることにしたのである。

                    
 すぐ近くの喫茶店で、わたしはカレーとコーヒーを所望し、一服ついた。さてこれからどこへ行くか、である。わたしはパンフレットを広げてみた。南端の方には、トド岩、桃山等々があるという。まあインパクトは弱いが、とにかく暇なので、行ってみることにしたのだ。

                   
 なんというか、礼文島の山は寂しい、この一言である。何故なら、山は山でも木が無いのである。まあ、まったく無いわけではなく、申し訳なさそうにチョコチョコッと生えているだけなのだ。つまりハゲ山なのである。

 歩くコースはわたしにとって、つまらないものであった。平坦な道をのんびりと…決して嫌いなわけではないのだが、なんかチョッピリ落胆させられたのだった。わたしは島というものに来たのは、初めてである。これから行く初めての場所とは、勝手に夢を描くキャンバスみたいなもので、

『ワクワク、ワクワク、きっと素敵なんだろうな…。いや、島というくらいだから、ジャングルで覆われていて、その中には見たこともない鳥や、ヘビ、ワニなどが群れを成して生息しているのだろうな。ワクワク、ワクワク、まてよ…。やはり北海道だから、エゾリス、エゾシカ、のようにみんなエゾが付いたりするかも。とすると、正式名はレブン・エゾ・オオカモノハシとか、レブン・エゾ・ゾウガメとかになるな。もし山猫なんかいたら大発見になるぞ。すると自分の名が使われ…動物界、脊椎動物門、哺乳類、食肉目、ネコ科、フェリス属のレブンテンシス(ゴーイチウス)。というのが正式な学名になる筈…。う~ん、素晴らしい。』


 などと、好き勝手な想像は自由なのである。ただ、あまりかけ離れた想像を抱くと、後のショックが大きくなるのであるが…。とにかくわたしは、食事時間はで暇つぶしに歩いた。歩いた…。すると前方から、女性が歩いて来るではないか。わたしは身をグッと引き締めた。

『そうか、また出会いか…。』

 ここでわたしは、得意技を出した。見て見ぬ振りをしながら、見るという大技である。この技は、わたしは下を見て歩くのが嫌いなことから、開発されたのだ。知らない人と目と目が合うというのは、あまり良い気がしないものである。可愛い女性はらウッ!と思ってしまうのだが、男と目など合ってしまったら…個人的に嫌なのだ。ましてやそれが、かの有名なYaさんだったら、

「てめぇ~っ、〃がん〃つけんじゃねぇよ。ちょっとこい!」

 わたしはこれが、嫌なのである。ただ、そこいらのツッパリにいちゃんならば、大歓迎なのだ。わたしは高校時代から、遠野の町を歩いているツッパリにいちゃんを見かけると喜んで飛んで行ったものだ…。

 わたしは前方からツッパリにいちゃんが歩いて来ると必ずその正面を、道を譲らせる様に歩くのが、趣味なのである。この心には『ああ、インネンつけてくれないかな…。』という、切ない思いが込められているのだ。

 話はおかしくなりそうだが、つまりわたしのこの大技というのは、正面を向き、尚且つヤーさんの目線を反らせる、目の配り方なのだ。それは目の焦点が常に遠くにあることが大切である。もし真正面から、ヤーさんが来たとしよう。わたしは正面を見つめ、道の真中を、堂々と胸を張って歩いている。すると、ヤーさんはこう思う筈。

『何だ?あんガキャ~。俺に〃がん〃つけとんのか。どれ…おもしれぇじゃねえか。』

 と、やっきになるヤーさんであったが、わたしは遠くを見てるのだ。するとヤーさんもすぐに気づく。

『なんだこいつ、〃がん〃つけてんじゃねぇのか。しかし、どこ見てやがんだ?』

 と、これでヤーさんを、はぐらかすことが出来るのである。わたしはその他に、じっと見入ってしまいたい美女にも、この技を使うことにしている。『わたしは美女よ』と歩いている姿はあまりいただけないが、美女というだけで、やはり目を奪われてしまうものなのだ。しかしこの時、わたしの心理は『見たい、見たいけど…しゃくにさわる。』になってしまう。遠くからは、じっと見ている様なのだが、近くで見ると、目の焦点は遠くにある為、誰もが遠くにあるなにかを、わたしが見てるという錯覚に陥るのである。しかし実際は…見ているのである。紛れもなく、見ているのである。それ故にこれこそが、わたしの必殺技と呼ぶに相応しいのだ。
 
ところで、そう!女性であった。前から来たのは、三人の女性であった。わたしと年は同じくらいであろうか。狭い山道でバッタリ出くわした為、あちらも充分、わたしを意識している様だった。わたしと彼女たちの間に、一瞬、緊張が走った。

『んっ?な~んだ…。』

 わたしの視力は、非常に優れていて、200m先のものまでなら、確実に実体を把握できる。そしてその結果が『んっ?な~んだ…。』なのだ。食指をそそらぬ獲物の為、わたしは横道を逸れ、藪の中に入り込んだのだった。まあ藪といっても、ハゲ山の為にたかがしれている。藪はすぐ抜け、目の前にはゴルフ場の様な広場があった。いや広場というか、結局は山そのものなのだが…。わたしは頂上に向かって歩いた。すると、また道があった。今度は、先程よりも細い道で、一人通るのだ精一杯なのだ。が、無理にその道を通らずとも…なにせ、ゴルフ場のような場所なのだから。

 わたしは道なりに、奥へ奥へと歩いていった。だんだん道は細くなり、崖の様な光景になってきた。そして、夕暮れである。太平洋とは反対の水平線に沈む夕日というものを拝めることができ、充分にその美しさを満喫できた礼文島の海であった。礼文島の海は、珊瑚礁まではいかなくとも、それに近い透明度を誇っている。礼文島、ここもまた日本的ではない場所のひとつである。暮れゆく夕日を眺め、この自然に浸りながらわたしは誓ったのであった。

明日こそは、美しくも素晴らしい出会いというものを…やるぞ!』

                   
「おかえりなさい。もう、食事の用意が出来てますので、どうぞ、食堂のほうへ。」

「はい、わかりました。」


 わたしはカメラバックを部屋に置き、食堂へと向かった。向かったのだが、どうも気になることがあり、側にいた従業員らしき者に聞いた。

「やけに、ご老人が多いんですね?」

「ああ、今日は老人クラブの団体さんが、入っているんですよ。だからこっちの民宿の方は、佐々木様以外皆、老人クラブの方々なんです。あ、食事も食堂で一緒ですので、さあどうぞ…。」

「はあ…どうも…。」


 結局その日の晩は、楽しく食事をとることが出来たのだった…。

                   
「ジリリリリ~ン!」

 という電話の音で、わたしは目が覚めた。まだ、辺りは薄暗い様相を示していた。頭もまだ明けてはいなかったが、どうにか受話器を掴み、その電話に答えた。

「もし、もし…。」

「おはようございます!さあもう、食事をとってすぐ出発しますので、御準備下さい。」

「は、い…。」


 わたしはこの時、起きたく無かった。が、起きねばどうしようもない。そこでいつもの様に、起きる為のカウントを数えることにした。

「ワン…トゥー…。スリー…フォーッ…。…ファイブ…シックス、セブン…。…エイト…
ナイン!」


 と、必ずカウントがナインになると、わたしは〃ガバッ!〃と布団を剥ぎ、飛び起きるパブロフの犬になっていしまったのだ。下に降りてみると、どうやら食事はわたしだけの様であった。

「お年寄りの方は、どうしたんですか?」

「いやぁ、みなさんはちょっと〃愛とロマンの八時間コース〃は、無理ですからね。散歩に行っている人もいますが…まだお部屋でお休みになっていますよ。」

「はあ…。」


 とにかくわたしは、早めに食事を済ませ〃愛とロマンの八時間コース〃への気持ちを高
めることにした。どうやら、邪魔な老人も来ない様だし…。食事の後に、顔を洗い、歯を磨き、カメラバックを持ち、外へ出てみた。

『んっ?』

 素晴らしき快晴を望んでいたわたしであったが、空はどんよりとした雲に覆われ、今にも雨が降り出しそうな気配であった。

「さあどうぞ、乗って下さい。」

 一抹の不安を感じながらも、わたしは〃愛とロマンの八時間コース〃へと向かった…。

                   
 始発のバス乗り場は、若者たちの姿で溢れていた。いる!いる!、である。男と女の比率は、どうやら半々である。可能性は高そうだ。後は、わたし次第なのである。出発の時間になり、わたしはバスに乗り込んだ。ここからバスで二時間の場所に、目指す出発点『スコトン岬』がある。それまでわたしは寝ることにした…。
by dostoev | 2013-04-17 20:25 | わたしの怪奇体験談
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