遠野の不思議と名所の紹介と共に、遠野世界の探求
by dostoev
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「わたしの怪奇体験談(その11)」

「もしもし、IBCラジオ局でしょうか?」

「はい、そうですが…。」

「すみませんがディレクターの姉帯さん、お願いできますか。」

「姉帯ですか?少々お待ち下さい…。」


 わたしはその年の夏、北海道からIBCに電話した。そう、今年の夏も幽霊屋敷に泊まる為には、どうしてもテレビ局が欲しかったのである。何故なら、幽霊屋敷に泊まった反動があれ程あるのならば、やはり〃それなり〃の見返りが欲しいのである。そうでなければ、行くだけ損なのだ。それに張り合いも違うし…。

 わたしは喜びを押さえ、姉帯さんを待った。

「はい、もしもし姉帯ですが…。どちら様でしょう?」

「あ、わたし遠野の佐々木というものですが…。」

「遠野の佐々木さんですか?…。」

「はい、あの幽霊屋敷の…。」

「ああっ!こりゃどうも。どうだい、元気かい。」

「はい。」

「今年は行こうね。」

「はい。」


 わたしはこの脈ありの言葉を聞き、喜びを隠し切れなかった。が、しかしであった…。

「夏の盛りは、ゴルフの中継にテレビの連中取られちゃうから、そうだね…八月の末、二十日以降になるけど、いいかい?」

「えっ!二十日以降ですか…。」

「都合悪いのかい?」

「ええ、ちょっと…。」


 なんと、わたしがもう既にいない頃、テレビ局の都合がつくという。なんという悪循環あろうか。仕方無くわたしはテレビ出演を諦めたのだった…。

「仕方ありませんね…それじゃ、失礼しました。」

「そうかい、残念だね。でも、いつか行こうね。」

「はい!」


 そしてその後、結局連絡を取ることなく、テレビの話は終わったのであった。

                   

 わたしは現在住んでいる北海道にて、このやるせなさをどうにか解消する方法を考えた。そして考えぬいた結論とは…やはり、一人旅である!

『そうだ!やはり旅しかないのだ!』

 旅という気持ちが固まると今度は、どこにいくか?である。その頃、劇団に所属していたわたしは、車で北海道中を駆け回っていたのだが、行きたくとも、まだ行っていない場所があったのだ。それは礼文島である。ひょんなことから、ユース・ホステルで配布しているパンフレットを手にすることができたわたしは、それを読み、その中に書かれている魅惑的な文章から、礼文島に決めたのであった。その文章とは…。

「なになに…。礼文島の名物に〃愛とロマンスの八時間コース〃というのがありまして、伝々…。」

 〃愛とロマンスの八時間コース〃というのは、最北端のスコトン岬をスタート地点とし、そこから海岸線を延々八時間も歩き、目的地まで行くのだが、それを紹介する文がとても良いのだ。長い距離で結構きついのですが、そのきつい道程のためか、みんな仲良く助け合い、見知らぬ男女でも、最後には手に手を取り合って歩くことから〃愛とロマンスの八時間コース〃と名付けられたのです。

 わたしはこれを読み、単純に〃素晴らしい!〃と思った。そして今度はわたしの番なのである。

「待っておれ礼文島よ!か弱き乙女よ!」

 この時のわたしの気持ちは一直線であった…。

                   

 札幌駅20時過ぎの夜行で取り敢えず、わたしは稚内に向かった。稚内からフェリーで、礼文島に行けるからだ。夏の盛りの札幌駅は、混雑ひとしおである。一目で観光客とわかる若者で、満ち溢れているのだ。ともかくわたしは、夜行列車に乗り込んだ。乗り込んだのだが、どうやら遅かった様である。何故なら既に座席は人で埋まり、通路に横たわっている者も結構いたのだから。しかしわたしはめげることなく、安住の地を探し回った。そして、ついに見つけたのだ。それは車両と車両の間にある、職員用のイス付きの小部屋であった。

「ラッキー!」

 とばかりに、急いでそのイスの上に荷物を置き、KIOSKまで買出しにいったのである。列車内は、うだる様な暑さであった。何故なら、人、人、人の地獄絵図が、その暑さを醸し出していたからだ。そこへもってイスはあるのだが、横にはなれぬ不安定な場所の為、その晩は眠れぬ夜であった。さらに、さらにである。わたしの目の前に、眠気を覚ますある〃もの〃があったのである。そのある〃もの〃とは…。

 夏でありながら、この列車内にいる女性客は、ほとんどGパンをはいているのだ。だが、だがである。やはり夏なのだ。夏の衣服は、肌を覆う面積が狭くなる、というのが通常で、やはりその通常の衣服を身に付けている女性もまた、存在するのである。さて、その衣服とは…そう、ミニ・スカートである。なんと、わたしの目の前に、そのミニ・スカートを纏いながらまどろむ女性がいるのである。

 その女性は、入口の通路に定住の場を構え、下に新聞紙を敷きつめ、友達であろうGパンをはいた女性の肩を借り、寝ている風であった。足は横にシャナリと組み、その足が寝苦しさの為か、モゾモゾと身、いや、足もだえしているのだった。

「ふむ…。」

 時刻は、真夜中であった。まだ起きているやからも、居たことは居たが、わたしの周囲のものどもは、寝ている様であった。それを確認したわたしは、迷う事なく目標物を凝視したのである。まさしくその物体は〃ムン・ムン、ムレ・ムレ、ニオイ・ニオイ・ニオイ〃であった。眠気を奪い、目をいざなうその物体の力により、わたしはとうとう、徹夜してしまったのである…。

                   
 朝六時に、稚内に到着した。さすがに眠い。目が窪み、充血している様であった。朝の稚内の上空は、薄曇りである。たまに差し込む陽射しが、非常に眩しい。顔をしかめながらわたしは、礼文島行のフェリー乗り場に向かった。

 朝早いのであるが、フェリー乗り場には結構、人がいた。やはり殆どが、観光客である。出航時間を確認し、待合室のイスに腰掛けた途端、ドッと眠気に襲われたわたしであった。だが、寝過ごしてはならぬと必死に目を閉じぬ努力をした、した、した…。

 どうにか時間まで頑張ったわたしは、急いでフェリーに乗り込み、座席を確保した。これはしょっ中、青函連絡船を利用した経験からきているのだが、船に乗り込む時は、のんびりしていては駄目なのである。電車同様、すぐ座席を取られ、立っていなければならないのだ。元気な時は良いのだが、眠くて眠くて仕方が無い場合、やはり早く船に乗り込み席を確保し、横になって眠りたいのだ。若者だって疲れているのだ。眠ってもいいのだ!

 よく、老人に席を譲らぬ若者が多くてけしからん!と言われるが、どうであろう?わたしは電車の中でしばしば、多くの老人の姿を見てきた。そして抱いた結論とは、不愉快きわまりない、であった。何故なら、老人の行動そのものに高慢さが感じられるからだ。現代社会が認める、か弱き老人というレッテルを大上段に振りかざし、座っている若者の前にスックと立ち、
「このふとどき者、わしを誰だと心得ておる。恐れ多くもわしは〃老人〃なるぞ。貴様等若い者がぬくぬくと座席に座っておるなどふとどき千万!ああ、嘆かわしや、まったく最近の若者は…。ええいっ!さっさとこのわしに、席を譲らんか!」と、老人は老人という名目に甘え、好き勝手に振る舞い、ますます現代社会の爪弾きとなって行くのであった。どんどはれ…。

 ところでわたしの老人対策は、譲る時は譲り、譲らぬ時には絶対に譲らぬ、である。その選別方法は、腰の低い老人には譲り、高慢な老人には譲らぬ、なのだ。要は、わたしの気分次第なのであるが…。

 とにかくわたしは、早々と席を確保し、横になった。が、どうしても眠る事が出来ないのだ。疲れ過ぎているせいもあったが、それよりもうるさいのだ。青函連絡船と違い、礼文島へ行くフェリーは、若い観光客ばかりだからだ。その中でも特に、若い女性のキャピキャピッとした声には、どうしても目と耳を奪われてしまう。人間はどんな状態にしても、煩悩は失わないものなのであろう。

 いるいる、沢山、沢山いる。この中にもしやわたしと〃愛とロマン〃が芽生える女性がいるかもしれないのだ。わたしはもう一度、辺りを見渡してみた。すると一人の女性と目と目が合ってしまったのだった。

『ん、これは…。』

 わたしはこの時、電車の中でひとときの恋を思い出した。

『どうせ、かなわぬ恋さ…。』

 などと、勝手に落胆したわたしであった。だが、気になれば気になるもので、結局何度も何度もその女性を見やったのである。そしてその度に、目と目があったのである。その女性の顔はというと、結構いけるのだ。どうやら、女二人だけの旅の様である。片方はまあ、並といったところであろうか。わたしは迷った…。

『どうする…。これが望みだったのだろう。早く声かけてしまえよ。こんな事はめったにないのだから、さあ早く!』

 と、一人のわたしが心の中で行った。だが、もう一人のわたしは、

『なにを言う。女の子と楽しい会話なんて、嬉しいには嬉しいが、それよりも本当の目的というのは、一人旅の風情を味わいながら、いかに自己を見つめ、またどれ程、自然との調和をはかれるかといった、カッコイイ命題があるではないか。女なんて二の次だろ。』

 諸君はどう思われよう。どちらかというと、わたしのこういった迷いなど、すべて嘘だと思った諸君が多い筈である。普通ならば女が優先で、迷っているのはただ単に、声をかける度胸が無いからだ、というのが大方の予想であろう。正直に言おう。たしかに度胸は無かった。されど、一人旅の風情を味わいたいというのも、また真であったのだ。

 まあ、今回のこの礼文島の旅は、かわいい女性と〃お知り合いになりたい〃から出発しているのだが、それに伴う怖さを、わたしは懸念しているのだ。その怖さとは、その女性の存在が重くのしかかる事なのだ。わたしは今回、カメラを持参してきている〃礼文島を含む道北すべてを、被写体に考えているのだ。わたしの頭の中には、女性と知り合えれば、というものと、写真を好きな時に、好きな場所で、好きなだけ、というものがあった。つまり、個人を優先した場合、写真を思う存分に撮ることが出来る。だが…。

 わたしは有り得ぬ事を、考えているのかもしれない。それは、もし知り合いになった女性に一目惚れし、また相手も同じになり、趣味も合い、その時の宿泊場所も、その後の日程も同じで、旅の期間中ずっと一緒に行動を共に出来るとしたら…嬉しいであろう。しかしそれは、常に相手を意識した行動であり、本当の自分の思いに任せた行動はとれないのである。相手と浸るか、自分に浸るかである。この簡単な様で難しい選択に、わたしの迷いは頂点に達したのだった。

『どうする…。話しかけようか、でも煩わしいかもな…。』

 優柔不断なわたしが、いつも悩むと結局、行き着く場所は、

『面倒臭いな…どうせまた何かあるさ。それよりも寝よっ!』

 であった。その通りわたしはフェリーの中、寝入ったのである…。



どうやら、礼文島に着いた様である。わたしは鐘や太鼓の騒々しい物音に、叩き起こされたのだった。

『んっ…着いたか…。』

 辺りを見渡すと、殆どの乗客がフェリーから下りていた。わたしも荷物を持ち、その騒々しい外へと向かった。フェリー上から見た外の景色は、凄まじいものであった。礼文島の人たちであろう。各自、鐘や太鼓をけたたましく鳴らし、さらに大旗を振り、観光客を歓迎…いや、どうやらこれから、観光客の争奪戦の開始の様である。フェリーから下りて来る客、一人一人に群がり、真剣に奪い合っているのだ。

 わたしはその光景を楽しむ為…というより気後れして最後の一人とし、ギリギリの時間までフェリーにいた。客を奪い合う観光地の話しは、何度か聞いたことがあるが、これは異常としか言い様が無い。いや異常と言ったら失礼に当たろう。皆、真剣なのだろうし、これもまた礼文島の名物なのであろうから…。

 ついにわたしも、下りる事となった。だが、どれだけ人が群がろうと、わたしは既に、民宿を予約していた為、どんな誘惑にも負けるわけがなかった。案の定、わたしにも礼文島の人たちが群がってきた。だがわたしはビシ!バシ!とそれを切って捨てていったのだ。そしてわたしは一人、民宿への道を歩いて行った。民宿の名は忘れたが、現在いる港の反対側に位置するのだけは覚えている。わたしは歩いた。そして歩きながら、あることが頭を過ぎった。

『あれ?…もしかして、民宿の人が迎えに来ていたかな?そうだよな…客を取るだけじゃなくて、迎えにだって来る筈だしな…。』

 だが、ここまできたのなら、もう後戻りは出来ない。わたしは覚悟を決め、どれ程の距離かわからぬ道程を歩いて行ったのだった。すると〃プァ~ン!〃とクラクションが鳴った。バスであった。そして、そしてである。なんとバスの中から、フェリーでのあの女性がわたしに対し、一生懸命に手を振っているではないか。それも最後には、身を乗り出して…。わたしはショックであった。あの時の『また、なにかあるさ。』という気が、この時は『もう、なにも無いかもしれない…。』に変わったのであった。

『そうか、あの娘はわたしと知り合いになりたかったのか。やはり、声をかけるべきだったのか…そうか!そうか、そうか…。』

 結局わたしは、女性と知り合いになれることを、望んでいたのである。さらにこのショックと共に、あることも又、頭を過ぎったのである。

『そうか…バス、あったのか…。』
by dostoev | 2013-04-16 20:05 | わたしの怪奇体験談
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