遠野の不思議と名所の紹介と共に、遠野世界の探求
by dostoev
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「わたしの怪奇体験談(その10)」

「わたしの怪奇体験談(その10)」_f0075075_173616100.jpg

時刻は11時半過ぎであった。既に家の明りは消えている。待ちに待った静けさであった。わたしはいつもの様に、隠密行動を取り、家の中に侵入した。わたしの部屋では、カメラが〃ある〃映像を写しだす状態を保ちながら待っていた。

『さていよいよか…。』

 わたしは心に期待と不安を忍ばせはがら、ベットに入り込んだ。

『ワクワク、ドキドキ、ワクワク、ドキドキ…。』 

 しかし、しかしである。わたしの期待と不安を裏切るかの様に、何も出ないし、何の音も聞えないのだ。だが、わたしは辛抱強く待った。待った。待ったのだったが…どうやらわたしは、待ちきれず寝入った様だった。何時に寝たのかは分からぬが、寝たのだけは確かだった。何故なら、わたしは結局〃ある音〃によって起こされたのだから。

「ピキーン!パキーン!ピキーン!パキーン!」

 この様な音が、わたしの目の覚めるまで永続的に続いていたのだろう。わたしの目覚めの時には既に、鳴り響いていたのだから…。この音は、一般的にはラップ音というのであろう。しかし怖さがあるが、なかなか良い音なのだ。

「ピキーン!パキーン!ピキーン!パキーン!…。」

 ロシアのバレエに『石の花』というのがあったが、まさしくこの音は『石の花』が今、花を咲かせる時の華やかな音の様である。 だが、わたしはウットリなどしてはいられない。まだ、回らぬ頭を叱咤激励しながらわたしは、ストロボのスイッチを入れ、レリーズを手にしたのだった。

『くるぞ、くるぞ…。』

 辺り一面に音が広がり、今こそ〃時〃である。わたしは頭から布団を被り、レリーズを握り締め、シャッターをきった。ストロボの閃光が、布団の中からでも感じられる。だが、音は一層華やかになってきている。わたしは何度も何度もシャッターをきった。心の中では『写っていてくれ。』という願いと『早く消えてくれ。』という願いが交差していた。ついに36枚撮りのフィルムが終わってしまった。音は未だ、華やかに騒いでいる。

『どうする、どうする…。』

 わたしは絶望の淵に追い詰められたようだった。こうなってしまってはやはり、わたしとしても怖いのだ。恐ろしいのだ。だが、どうにかしなければ。

『くそっ!情け無い。』

 この時わたしの中には、悔しさが込み上げてきた。いつものとおり、わたしの得意とする開き直りの境地である。

「くそっ!」

 わたしはこの声と共、布団を払い除けた。

「ピキーン!…。」

 最後の音がエコーを伴い、消え去っていった。わたしは暗闇の中で呆然と、その音を見送ったのだった…。
                   
 今回もやはりである。わたしが恐怖に怯えている時は必ず、音は纏わりつく。だが、その恐怖がわたしの中から去った時には、逃げ出す様に音は消え去っているのだ。そう、わたしはここで一つの真理を見つけた。それは何事にも怖がってはいけないのだ。弱きになってはいけないのだ。心に弱さがある時は、何者かがそれに付け込み、自らを窮地に立たせる。結局それを跳ね除けるのは、自らの力であり勇気である。

 わたしは今回それを特に感じた。これを機会にわたしの中には、何事に対しても逃げずに立ち向かう心が芽生えたのであった…。

                   
第七夜 ネバー・エンディング・ストーリー



 ついに最後の夜である。厳密には、まだまだ続くのだが…。とにかくわたしの家での怪奇現象はこれで終わりなのだ。何故わたしの家に怪奇現象が起こり、何故それがわずか一週間で終わりを告げたのかは未だ原因がつかめぬが、それ以来わたしの家に平和の日々が訪れたのは喜ばしい事である。さてここで再び、話の続きをしようではないか。では、始まり始まり…。

                   
 わたしは明日、北海道へ帰る。この夜が、遠野での最後の夜なのだ。最後の夜に何が起こるかわからぬが、覚悟を決め、わたしはこの夜を過ごそうではないか。もうここまできたら何も怖いものなど、わたしには存在しない。この夜を聖なる夜とし、何が出ようが出まいが、決して外に出ることなく、自分の部屋で過ごすことを心に誓ったのである。

 食事を済まし、軽く親と語らい、風呂で身を清め、部屋に戻り荷物の整理を始めたわたしであった。外では小雪がちらついている。〃しんしん〃とした冬の夜であった。時間を潰す為、わたしは読みかけの本を手にした。この頃、夢中になって読んでいた、ドストエフスキーの作品の中からの『悪霊』であった。この作品に登場する主人公は、現在わたしの最も尊敬する人物となってしまった。名をニコライ・スタヴローギン。この人物が、今のわたしの性格形成に、多大な影響を及ぼしているのである。

 ドストエフスキーの作品の中では『罪と罰』が一番好きなのだが、登場する人物の中では『悪霊』のスタヴローギンが一番である。どちらも5回以上は読み返している。今までいろんな小説を読んできたが、ドストエフスキーを読んでから、他の小説など屁みたいなものに感じてしまった。これをドストエフスキー・シンドロームとでも言うのであろうか。

 本を夢中になって読むと、時間のたつのが早いもので、8時から読み始めて、もう1時をまわっていた。明日が早いので(早いといっても、お昼の列車で帰るのだが…。)このへんで読書から切り上げ、眠りにつくことにした。

 本を読んでいる時は、眠くはなかったのだが、本から目を離した途端、急激な睡魔に襲われてしまった。素早く明りを消し、明日の為に、わたしは寝入った。しかし、寝た筈のわたしを、起こす音があった。それは、

「ザクッ、ザクッ、ザクッ…。」

 何者かが、穴を掘っている様な音なのだ。スッキリしない頭で、わたしはこの音について考えてみた。

『…なんだ…。何時だろ…。この音は…。眠いな…。』

 とにかくわたしは、今までのことなどまったく忘れ、ボケた頭でこの音を聞いていたのだ。それが怪奇現象の一端だとは知らずに…。

『なんで穴掘ってんだろ?…。冬なのに…。雪もあるだろうし…。』

 音はまだ続いている。

『んっ!』

 わたしはこの音が長い間、続いてから気づいたのだった。

『そうか、最後の夜もまたか…。』

 冷静に、冷静に、この音を聞き入るわたし。だが、一向に消える気配が無い。いつ消えるかわからぬこの音に、わたしは苛立ちを感じてきた。

『仕方無い、カーテンを開けて外を見てみるか…。』

 わたしが立ち上がろうとする、その時であった。

「チリーン…チリーン…チリーン…チリーン…。」

 そう、あの風鈴の音が聞こえてきたのである。わたしが初めて恐怖した音、風鈴の音である。その為にわたしは今現在、風鈴の音というものが好きにはなれないのである。夏の暑い日の風鈴の音というものは、暑さを和らげる効果があるのであろうが、冬の寒い日の風鈴というものはどうであろうか?寒さを一層助長させる、であろうか?そしてその風鈴の音に、ある特殊な意味が込められていたとしたら…。

 まあ、ここで風鈴の音というのはどうでもいい。問題は、誰がどのような目的で、それを鳴らすか、である。それもわたしに対してである。わたしが、何をしたというのだ!最後の冬の夜、風鈴と、穴を堀り続ける音は鳴り響く。トロイカの鈴の音というのなら哀愁が漂い「う~ん、素晴らしい。」と、唸ってしまうわたしであるのだが、この風鈴の音というものだけは、ちと困ってしまうのだ。

 わたしの中には既に恐怖など存在しない、などと宣いながら、やはりわたしは怖かった。怖くて仕方無かったのだ。この風鈴の音によって、今までの情景が、わたしの脳裏に写し出された。幽霊屋敷での朝。さらに、このウイークリー・フライト・ナイトの初めの夜。そして、この最後の夜。キチッと区切りだけはつける風鈴の音に、敬意を表したいわたしであったが、その余裕など微塵も無いもだ。ただわたしは、布団の中でうずくまるしかなかった。また開き直ればいいのであろうが、この風鈴の音だけはどうも苦手なのだ。だが…。

『…どうする…。』

 考えても結局らちがあかないのは、自分自身がよく知っている筈なのだ。

『仕方が無い、覚悟を決めるか…。』

 しかし、どうにも体が動こうとはしない。どうも、この風鈴の音を聞くと、金縛りにかかる様である。もどかしい気持ちが、わたしの中に募ってきた。

「ザクッ、チリ~ン。ザクッ、チリ~ン。ザクッ、チ~リン…。」

 勝誇った様に、鳴り響く音たち。わたしの意識は『もんもんもん…もんもんもん…。』と、迷い悶えていたのだったが、ついに堪えきれなくなったのである。〃ガバッ!〃と布団と剥ぎ、立ち上がり、窓へとわたしは向かって行った。恐る恐る行ったのか、スタスタと行ったのかは覚えていないが、とにかくわたしはすべてを振り切る為に、その音へと向かったのであった。そしておもむろに「ガラッ!」と、ドアを開け放った。

 再びである。再びその〃音〃は消えさった。またもやわたしが、勝利したのである。やはり恐れてはいけないのだ。勇気を持って立ち向かわなければならないのだ。キルケゴールの言葉に、この様なものがある「たくましき想像無きところに、たくましき自己は存在しない。」つまり、たくましき自己を存在させる為には、可能性を秘めた未来を常に見つめ、目の前にある障害を打破していかなければならぬのだ。そこに留まってはならぬ。留まるという事は、自分の罪、自分の勇気の無さを示す行為でしか無いからだ。さらにキルケゴールは言う。

「絶望は罪である。」

 これは、絶望して自己自身であると欲しないことである。したがって罪は、弱きの度合いが高まったものといえよう。いいかえれば、絶望の度合いが高まったものである。意外と人生、強気の方が良いのかもしれない。

                   
 いつのまにかこの話は、勇気と感動、そして説教の話となってしまった。わたしにとっては、大きな意味のある話なのだが、他人にとってはそんなに説教できる程の大した話ではないのだ。それ故ここでは話を横道に逸らせずに、続けるというのが本筋であろう。さあ、話を続けようではないか…。

                   
 わたしは爽やかな朝を迎えた。今までの悪夢が消え去ったかの様な朝である。目が覚めたのは、午前8時である。やはりこの目覚めは素晴らしいのである。わたしは下に降り、両親に爽やかな挨拶をし、モーニング・コーヒーを手にした。

「うまい。」

 わたしはそのうまさを、口にして表現した。普段、何でも感情を口にすれば、災いの元となるか、馬鹿と見られるかのどちらかなのだが、わたしは気分の良い時だけに、なるべく感情を口に出すことにしているのだ。

 親との会話を済ませ、友に連絡をし、徐々に"わたしは帰るのだ。"という感情を高めていくのである。名作と呼ばれる映画の別れは素晴らしいっ!感情の高まりが、最後の別れを切なくさせるのだ。『カサブランカ』『シェーン』『刑事ジョン・ブック』。すべて別れは、この主人公たちの姿に愁いを忍ばせ、観る者に感動を覚えさせる。わたしもその姿に憧れる為、たわいのない別れに対しても、自らの感情を高揚させるのだ。別れとは嫌なものなのだが、いつかは素晴らしい別れというものをやってみたい気がする。そう!テーマはやはり、男と女の感動的な別れ、である。

 その時は、好きな(または愛する)女性との別れの痛手に眠れぬ夜も続くであろうが、〃時がすべてを解決する〃という様に、いずれ…『ああ、俺もかつて映画の主人公の様に夢を見た時があったな…。』たどと思うかもしれない。そうなれば勝ちなのだ。良いことも悪いことも、すべては流れ去った素晴らしくも懐かしい過去なのだ。

 ここでわたしの大好きな詩人である、プーシキンの詩を紹介しようではないか。わたしみたいな者でも一応、詩も読むし書きもするのだ。詩は好きなのだ。



 日々の命の営みが、ときにあなたを欺いたとて

 悲しみを、またいきどおりを抱いてはいけない。

 悲しい日には心をおだやかに保ちなさい

 きっとふたたび喜びの日が訪れるから。

 心はいつもゆくすえの中を生きる。

 今あるものは、すずろに寂しい思いを呼ぶ。

 人の世のすべてのものは、つかのまに流れ去る。

 流れ去るものはやがて懐かしいものとなる。



 そうすべて、悲しみを伴った思いというものは、その時に深い意味があるわけではなく、未来によってこそ輝いてゆくのである。悲しみというものは、その時のたわいのない現象でしかない。やがてその時の悲しみは、未来に微笑みかけるであろう。またもや横道に逸れてしまったが、とにかくわたしは爽やかな気分で、この遠野を後にするのだ。何故かは知らぬが、我家での怪奇現象は終りを告げたのだ。

 だが、我家では終わったが、わたしの身にはまだまだ怪奇現象は続くのだ。それ故に、第七夜の題名をネバー・エンディング・ストーリーとしたのである。そしてこの後の話は、場所場所ごとの単発な話となるのだ。すべた関連があるとは断言できぬが、風鈴の音が登場する為、どうやらわたしは〃あるもの〃と引き摺っているようなのだ。最近は聞こえないが、まだ終わったとは言い切れないのである…。
 
さて今度は、北海道。さらにイタリアへと足を延ばし、風鈴はわたしの耳につき纏ってきたのだ。女性に好かれる、というのならば大歓迎なのだが、どうも風鈴という物体に好かれるというのは…。

さあ次は、番外編の始まりである。
by dostoev | 2013-04-15 17:39 | わたしの怪奇体験談
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