遠野の不思議と名所の紹介と共に、遠野世界の探求
by dostoev
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「わたしの怪奇体験談(その8)」

なんとなくその日、一日をブラブラしてる間に、夜が来てしまった。ついに夜なのだ。

『果たしてまた、なにか起きるのだろうか?…。』

 今までの様々な出来事と、情報の積み重ねが、大好きな夜を大嫌いな夜に変えてしまったのだった。そこでわたしは、それを打開する為に考えに考えた。『そうだ!自分の家に泊まらなきゃいいんだ。そうだ、そうだ。』わたしはこの素晴らしい考えに気を良くし、とにかく家から出ることにした。                   

 わたしの頭には、どこか友の家に泊まればいいという安易な考えがあった。しかしまだ 〃それ〃には時間的に早いと思い、とりあえずどこかの店で時間をつぶすことにした。簡単に食事をした後、朝と同じ『茶房』へ入った。わたしはおもむろにカウンターに座り、コーヒーを頼んだ。

「どうしたの、一人?」

「そう。」


 ママさんはわたしを気遣い、いろいろ話しかけてくれた。長い世間話しが続いた…。わたしはふと、時計を見た。なんと、十時過ぎであった。『ヤバイ!』わたしは、店の公衆電話から泊まる家を提供してくれるであろうと思われる友の家々に、片っ端から電話をしたのだったが…。

「もしもし…。」

「いませんよ。」

「もしもし…。」

「今日は親戚の家です。」

「もしもし…。」

「さあ、どこに行ったんだが…。」

 なんと、なんと誰もいないのだ。わたしは困り果てた…。

『ん~っ…、どうする…。家に帰るか…。いや、そんな…。え~と、あと誰かいたっけ?う~ん、う~ん、う~ん…。』


 結局わたしは諦め、覚悟を決めた。

『これもなにかの力か…。よしっ!泊まってやろうではないか。たかだか自分の家ではないか。』

 わたしは残りのコーヒーをグイッと飲み干し、我が家へと向かった。

シャッターをくぐり、わたしは家を見上げた。姉の部屋だけが明りがついている。どうやら珍しく、祖母は寝てしまった様だ。玄関までの階段を上がり、静かにドアを開けた。 家の中には静寂があった。わたしはドロボウのの様に、すべての行動をそっと行った。そっとドアを閉め、そっと靴を脱ぎ、そっとスリッパを履き、そっと歩き、そっと階段を上がった。階段を上がると、わたしの部屋のドアが開いていた。

『んっ?…。』

 何故、開いているかわからなかった。『閉め忘れたっけ…。いや、ちゃんと閉めて出たよな。姉さんが入ったかな?いや、いつもキチンと閉めていくしな…。』とにかくわたしは部屋の中へと入り、明りを点けた。

「!…。」

 わたしは凍りつくような恐怖を、背筋で感じた。なんとわたしのベットで、誰かが寝ているではないか。わたしは一瞬『ドロボウ』と思った。寝ているのに何故、ドロボウと思ったのかというと…勝手に人の部屋に入り込んで、ずうずうしくも人のベットで寝ている者などはすべて…ドロボウなのだ!

『くそっ!このドロボウめ!いまいましいドロボウめ!ドロボウめ!ドウロボウめ!』

 わたしの恐怖は怒りに変わり、まっすぐベットに向かい、そのフトンを剥いだ。

「えっ!?」

 なんと、わたしの父であった。フトンを剥いでも、一向に起きる気配がない。どうやら酒を体内に蓄積させての、完壁なる睡眠であった。わたしはあきれ顔で父の寝姿を見、推察してみた。まあ推察といっても、たかだか知れている。どうせ母とケンカし、オモシロクナイので同じ部屋で寝るのを拒んだ結果として、この部屋で寝ているのであろう。しかし、部屋はまだ他にあるのに何故、である。息子の迷惑顧みない親に、わたしは腹をたてたと共に、情け無くなってしまったのだった。

 わたしは最近、ある言葉にとり憑かれているその言葉とは〃子供のしつけは親がみる。親のしつけは誰がみる?〃である。小さな子供の目には、親とは偉大な存在に映るものである。しかし、長年一緒に暮らし子供が成長を遂げるに従い〃偉大な親〃という幻想は崩れていくものなのだ。但し、長年一緒に暮らして来た為に生ずる〃愛着〃、または〃親と子の絆〃というものは揺るがぬものなのである。そんな中で、わたしはいつも思うのである。

『仕方あるまい…。親のしつけは、わたしがしてやろうではないかっ!』

 子が親を教育しようという、この世の難題に対する挑戦の決意であった。しかし決意はいいのだが、とにかくこの場はどこか寝る場所を探さなくてはいけないのだ。だがそれも、一瞬のうちで閃いた。

『そうだ、三階の部屋がいい。気分転換にもいいし、なんたって俺の部屋よりキレイだしな…。』

 わたしは、それをすぐ実行に移したのだった。

                   
 三階というのはわたしの店の三階で、貸し部屋、または小宴会場として使用している所である。その三階の廊下にはちゃんと布団部屋があり、寝泊りも可能なのだ。

 わたしは忍び足で三階に向かった。自分の家なのに何故忍び足?かというと、寝ている母に気を使わせない為と、気づかれないようにいかに三階に忍び込めるかといったスリルを味わいたいが為であった。

 静寂の夜というものは、かすかな物音でも響いてしまう。それ故わたしは靴を脱ぎ、靴下のままソロリ、ソロリと歩いた。三階までくれば大丈夫なのだ。ここは母の寝室の射程距離外の為である。 
 さて三階の部屋には1号室から8号室まであるのだが、わたしは7号室を選んだ。それには理由があるのだ。なんとも言えぬ思い出があるのだ。まあ、思い出といっても美しくも素晴らしい思い出というものではなく「うわーっ、なんと、なんと…。」という絶句の思い出なのだ。

 あれは中学一年の時であった。日曜日に女の子三人を家に呼び、一緒に遊んだ時のことである。だが、男1に女3という比率ではなく、誰だったか覚えていないのだが、確かに一人だけ男の友を呼んだ筈である。そこまでわたしは軟派ではないのだ。そんな恥ずかしいまねなど出来なかったのだ。女の中に男が一人…あ~っ、やだ、やだっ!しかしわたしは、おぞましい女の中に男が一人恐怖体験を、北海道は礼文島で経験したのである。これは後で紹介することにしよう。

 さてその時は親に内緒で皆を三階に呼び〃目隠し鬼〃をやった記憶がある。今考えると、なんと純朴な遊びであったろう。そう、その頃はわたしも紛れもない純朴少年だったのだ。遊びに疲れたわたしたちは、どこかの部屋で休憩することにした。この三階には誰もいないと思っていたわたしは、躊躇せずに7号室のドアを開けた。

「あっ!すみません。」

 目の前に広がる突然の予期せぬ情景に、声を出した後、わたしは慌ててドアを閉めた。なんとそこには、開かれたあまりにも白い、女の下半身があったのだ。そしてその横には男がいた。つまり、客らしきが、そこで展開していたのだった。

『な、な、なんと…白いんだ。真白なんだ。眩しいんだ…。』

 わたしは気が動転した。こんなものを見るのは初体験であったからだ。そしてその後…7号室は、わたしのチェック・ポイントとして存在したのである。わたしはその思いでの7号室のドアを開けた。静かな暗闇がそこにはあった。わたしは、電気のスイッチを入れた。部屋は明るくなったものの、静けさはそのままであった。

『ん~っ…。』

 わたしは気づいた。あまりにも静かすぎて、逆に怖そうだということを…。だが、ここまできたならば、もう後戻りは出来ない。覚悟を決めたわたしは、布団部屋から布団を取り出し、部屋に敷きつめた。そしてストーブとコタツをつけ、そこにゆっくりと身を置き、夜の静寂を噛み締めたのだった。

 窓枠を覆った氷が、窓そのものを美しい額縁に変えている。その額縁に描かれている絵模様は、風に舞う雪の情景であった。それをわたしはぼんやり眺めた。

『雪、雪、雪の降る夜は雪女…。』

 情無いことにわたしの思考回路は、どんなに美しいものを見ても必ず魑魍魅魎のたぐいに、そのイメージが帰結してしまうのだった。しかし、雪女はどちらかというとロマンチックであるとわたしは思う。わたしは雪女も好きだし、鬼女も好きだ。牡丹燈籠のお露さんも好きだし、吸血鬼カーミラも好きなのだ。何故ならすべて美しいし、その美しさの背後に悲しみがあるからだ。喜びに満ちた女性というのも美しいのであるが、それよりも世界的規模で美しいというのは、常に悲劇を伴っている女性だとわたしは思う。ロミオとジュリエットのジュリエット。トリスタンとイゾルテのイゾルテ。ギリシア神話に出てくる女性たち、カリスト、イオー、エウローペなどみんな悲しみの中にも強く美しく生きている。わたしはそんな女性たちすべてが好きなのだっ!

 しかし思いに耽るわたしを、思いっきり吹き飛ばす静けさであった。前にも述べたが、静まり返った夜というのは、あらぬ想像を抱かせる事となるのだ。そのわたしの定義に、わたし自身が陥り始めた。つまり、怖くなってきたのである。その為に小さく歌を唄ってみるものの、恐怖の意識は止まらずに、歌は自然とフェードアウトし、知らぬ間に全身で夜の気配を探っていた。

「シーン…。」という音が聞こえるような静けさの中で、わたしはある音を聞きつけた。それは廊下から聞こえてきたのだった。

「カタカタカタ…カタカタカタ…カタカタカタ…。」

 わたしは一生懸命、その音を考えてみた。『これは…なんだ、なんだ…。』

 なんだか理解に苦しむ音であった。空き缶が左右に揺れ、その底辺が地面を叩いている様な…どことなく金属的な音なのだ。この音は父でも母でもないと、わたしは直感した。そしてゾッとしたのだった。

『来たな…。ついに来たな…。とうとう来たな…。』

 わたしは覚悟しドアの外を見通す様にそれを待ち構えた。すると「コン、コン、コン。」と、窓ガラスを叩く音が響いた。

「でっ!」

 驚いたわたしは、恐る恐る窓を見やった。が、そこには何も無かった。ただ、ストーブやコタツの熱気の為、窓が曇っており外の景色はよく見えなかったのだ。わたしは怖いもの見たく無さから、思わずカーテンを閉め、コタツの定位置に戻った。

「フーッ…。」

 深い溜息をつき、わたしは今の状況を考えてみた。まさしく前門の虎に、後門の狼である。窮地に追い込まれたわたしなのだ。 しかし悲しいことに、どうにかしようとも、どうにも体が動かないのだ。金縛りというわけではなく、動揺が思考回路を低下させ、半弾力を奪った為の現象であったのだろう。

 わたしは体の半分以上をコタツに突っ込み、目を覆い、考え考え考えた末に、ある言葉を見つけ、それを心の中で唱えた。

『迷いは絶望を招く。恐怖は勇気のない者の心に入込む。』

 自分に言い聞かせる様に、この言葉を三度唱え、心を立ち直らせた。この言葉は、B級映画「恐怖の惑星」のワンシーンでやはり、ある人物が恐怖を抑制しようとしていた時に唱えたセリフだった。開き直れば、強いもの。いや、わたしだけでなく、全てのの人々がそうであろう。ただ、いい意味での開き直りなのだが…。わたしは「エイッ!」と掛声をかけ、立ち上がった。すると再び「コン、コン、コン。」と、窓ガラスが叩かれた。緊張と怒りに満ち溢れたわたしは、窓に向かい、カーテンを開け放った。

「バシャーンッ!」

 しかし、なにも無い。ついでにわたしは窓枠をビッシリ覆っている氷を砕き、窓も開けた。瞬間に、雪が左目に入った。わたしは顔をしかめながら雪の外に顔を出し、辺りを見渡した。いつの間にか吹雪いていた夜の外を、何度も何度も見渡した。

「よしっ!」

 気合いを入れ、わたしは確認を遂行した。そして、おもむろに窓を閉め、カーテンを閉め、今度はドアに向かった。

「くそっ!やるぞ、開けるぞ、見てろ、チクショウ!」

 確かこの様な世迷い事を口走っていた筈である…。ただ、ハッキリと覚えているのは、気合いが入っていた、ということなのだ。

「ガチャッ!」

 わたしは気合いでドアを開けた。やはりなにも、誰もいなかった。

「くそっ!」

 ここまで気合いが入っているならば、恐怖などクソ食らえっ!なのだ。結局この夜はこれで終わった。よくわからないうちに終わったのだった。果たして〃音〃は本物であったのか?すべてを確認していないのに…。興奮冷めやらず、眠れぬ夜であった…。

「くそっ!眠れんではないかっ!」
by dostoev | 2013-04-12 17:39 | わたしの怪奇体験談
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