遠野の不思議と名所の紹介と共に、遠野世界の探求
by dostoev
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「わたしの怪奇体験談(その6)」

第五夜 金縛りとの遭遇



 寒さの厳しい晩であった。零下10度は上まっていた筈。しかしわたしの心は、寒ければ寒い程、燃えるのだった。

 『寒い…。しかしシベリアで働く人々は、これ以上の寒さに耐えているのだろう。なんでも、約90度のウォッカを飲みながらでないと、体が動かないと聞いている。それに比べたら、こんな寒さなんて…。そうだっ!わたしも酒を飲もうではないかっ!』

 そう、寒さにはやはり酒なのだ。わたしの故郷の冬は厳しい。その厳しい冬を楽しく温かく過ごす為に、どうしても酒は必需品なのだ。まあその為にわたしの故郷では、アル中患者が多いのだが…。
 どちらかというと、わたしは日本酒は苦手で、もっぱらウォッカを愛飲しているのだ。銘柄は〃ズヴロッカ〃か〃オールドウォッカ〃と限定しているのだ。だが〃それ〃が無い場合、結局は何でも飲めればいいのである。

 外は吹雪であった。わたしは構わず飛び出し、目指す飲み屋『灯』へと向かった。現在『灯』では、フィリピン・ダンサー娘が三人来ている。わたしは日本とフィリピンの友好関係を結ぶという重要な使命感に燃えていたのだ。

 階段を駆け上り、店内を覗くと、どうやら暇そうであった。わたしは「どーもーっ!」という掛け声と共にドアを開け、中に入った。

「おうっ!ゴーちゃん。」

 ここのボーイでもある、わたしの友が声をかけてくれた。そしてこの友こそが、後々に、今いるフィリピン娘の一人と結婚することになるのだ。

「今日は暇なんだな…。」

 店内を眺め回し、わたしは言った。そう、客の姿がまるっきり見えないのだ。見えないということは、わたし一人で貸切りに出来るということだ。

「オーッ!ゴーチャン、イラッシャイ。」

 さっそく、わたしの姿に反応し、フィリピン娘が寄ってきた。それと共に、

「ゴーちゃん、また来たの?」

 ここでバイトしているわたしの女友達が、やって来た。

 彼女は高校三年の時に必ず席がわたしの隣、という運命にあった女性であった。

「ゴーチャン、ナニニスル?」

 いきなりフィリピン娘が切り出してきた。さすがに良く教育されている様である。どのように慣れ親しんでいる客であろうと、フィリピン娘の目には、単なる客としか映らないのであろう。すると、

「ゴー、俺の飲んでけよ。」

 我が友の助け船であった。この友は、いつもわたしが大した金を持って来ないのを知っているのだ。わたしは「いや~っ、悪いな…。」と言いながら、結局奢ってもらうのを常としている。

 ここでふとわたしは、重要な使命を思い出し、フィリピン娘に話しかけることにした。フィリピン三人娘の名は、ロサーナ、スーサン、ビオリー。この中で一番美形と思われるのはビオリーである。長い髪に細身の体を持ち、瞳の奥には、無邪気さと猜疑心を兼備えていそう?な輝きを秘めている。神秘的なというか、なんというか…そう、怖い目なのだ。

 肉感的といったら、スーサンである。だがそれより気になるのは、オデコの出っ張りであり、痴的な瞳である。だから、もういらないっ!てことなのだ。

 さてドンジリに控えしは、我が友と結婚せしめしフィリピン娘、ロサーナである。先程ビオリーを無邪気な瞳と評したが、すべてに於いて無邪気さを発散させているのが、このロサーナなのである。そして唯一、日本語を話せるのがこのロサーナなのだ。しかし、フィリピンの名というのは、どこか気の抜けた名に感じるのだが…。ロサーナ、スーサン。そう、濁点がないのだ。
 
わたしは二人にスペルを聞いてみた。共に英語読みでは、ロザーナ、スーザンとなる。さらに、変な言い方は続く。
「わたしの怪奇体験談(その6)」_f0075075_19575148.jpg

「何か飲む?ドリンク、ドリンクおごるよ。」

「オーッ、ゴーチャン、タンキュー。」

「タンキュー?サンキュー?」

「オーッ、タンキュー、タンキュー。」


『そうか、フィリピンは確かタガログ語だったな。だからこの英語はタガログ訛なんだ。そうか…しかし、なんともしまりのない訛りだな…。』
 
わたしは辞書を片手に、どうにか会話を進めた。だが必ずこの娘たちは理解出来ぬ、または意味深な質問になると、三人固まり「×▲×、☆×★▲、△×■◎…。」と、訳の分からぬタガログ語で、話しを始めるのであった。
 
 突然、フィリピン娘が、わたしに対し「ゴーチャンモ、イロクロイネ。」と、なんとも失礼な言葉を吐いてきた。さらに今度はもっと失礼な言葉をこのフィリピン娘は吐いてきたのだ。

「トモダチ、トモダチ。」

 わたしはこの言葉を聞いてムッときた。わかるであろう。何故わたしがムッときたのか。フィリピンの田舎娘に、わたしも同類であると断言されたと同じなのだから。まあ確かに、わたしは日本の遠野に住む田舎者である。だが、日本の田舎者と、フィリピンの田舎者とを比較した場合、いや、比較にすることすら間違っている。比較にならぬ程、日本の田舎者の方が偉いに決まっているのだ。何が偉いのか自分でもよくわからんが、とにかく、日本の田舎者は数段偉いに決まっているのであるっ!
 
わたしは、このフィリピン娘たちとは違うんだっ!ということを見せつける為、〃どちらが黒いか決定戦〃を敢行することにした。

「ロサーナ、ちょっと、ちょっと…。」

「ナニ?ゴーチャン。」

「腕…アーム、アーム、ルック・ミー、見せて。」

「ウデ?…ドウスンノ?」

「どっちが黒いか比較するの。」

「ホワット?」

「比較。」

「ヒカク?」

「そう、ヒカク、ヒカク。」
 

 わたしは、えいっ!とばかりに腕を比べた。「!?…。」愕然としたわたしであった。なんと、どう見てもわたしの方が黒いのだ。

『む~っ…。』

 確かにわたしは黒い。だが女じゃあるまいし、肌の黒さなどこれっぽっちも気になどしていなかったのだ。しかし…しかしである。フィリピン人より黒いとなると…これは問題なのである。フィリピン人より黒いとなると、アフリカの、ピッカ、ピッカの原住民。南米やニューギニアの現地人くらいだと思っていたのだが…わたしは情なくなってしまった。

「ゴーチャン、ドウシタ?」 

減入ったわたしを、ロサーナが気遣ってくれた。

「あっ、いや、なんでもない。ハ、ハ、ハ、ハッ。」

 すると、フィリピン娘たちも、

「アハッ、ハ、ハ、ハッ。」

 ちゃんとわたしに合わせてくれる、商売気タップリのフィリピン娘たちであった。
                    

 心傷つき、わたしは家に戻った。時などは覚えていない。ただ、眠りたかった。この夜の悪夢をすべて忘れ去る為、眠りたかった。わたしは自然な眠りを促す為、BGMをかけることにした。選曲には迷ったが、最終的に二つの曲を選び出した。フォーレの『レクイエム』とメンデルスゾーンの『真夏の夜の夢』の二曲である。結局『真夏の夜の夢』にした。今は真冬であるが、それに対する皮肉っぽさと〃夜の夢〃という、今の意識の交差があったためだ。

 BGMが流れ、わたしは眠りへと向かった。せめて現の意識は『結婚行進曲』までもちたかったが、どうやら聞けずに眠りに入ったようであった。そしてこの時の眠り、この時の夢が、わたしに初めての金縛りをもたらしたのであった。

                   
 おぞましい夢であった。わたしは今でもハッキリとその夢を覚えている。短い夢ではあったが、わたしを恐怖に陥れるには充分な夢であった。では、御紹介しよう…。

             
 わたしは古くだだっ広い、武家屋敷わしき家の、ある一室にいた。何故かわたしはその部屋で、焚火をしていたのだ。火が消えそうになると、手に持っている酒…多分ウオッカだとは思うが、それをかけ、火の勢いを保っていた。ふと気づくとその火が、風もないのに奥の部屋へと流れているのだった。わたしはその火の流れのまま、奥の部屋へ通じる襖を開けた。が、その部屋にはなにもなかった。火はさらに、奥の部屋へと流れている。

 いつの間にか、その火の色が青白く変わっていた。わたしは次の部屋を開けた。そこは真暗闇であった。ただ見えるのは、まばゆい程に白い襖と、その隙間に流れこむ青白い火の流れだけであった。わたし座り込み、その様を眺めた。だが、心のゆとりでそれを眺めたのではなく、わたしの中に脹らむ恐怖心が、奥の部屋へ進む決心を鈍らせた為の眺めであった。だが、恐怖心がありながらも、夢の運命には逆らえなかった。吸い込まれるようにわたしは、襖に向かって行ったのだ。

 襖には、自動ドアのように静かに、ゆっくり開き、奥の部屋をさらけ出した。奥の部屋は薄暗かった。その薄暗い部屋に、一人の男が仰向けになって寝ていたのである。異様な顔立ちの男であった…。いや、今思い描いてみると、おの顔に酷似している。それは、映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』のノスフェラトゥの顔を青銅色にした様な顔であった。この顔を見た途端、わたしの恐怖心は失せた。わたしはこの男の上に馬乗りに乗っかり、いきなり首を絞めた。すると、今まで閉じられていたこの男の目がカッと見開いたのだ。そしてその目の見開きと共に男の手が、わたしの首に伸びてきたのである。そう、わたしは逆に首を絞められたのだった。
「わたしの怪奇体験談(その6)」_f0075075_19595945.jpg


「ウッ!…。」

 わたしは苦しんだ。すると、なんと今まで上になっていたわたしが、いつの間にか下になっているではないか。

『苦しい…。』

 言葉にしたかったが、言葉が出ない。わたしは夢の中で、もがいた様な気がした。ここで夢が途絶えたのだ。わたしは現実に戻ったのだ。既に夢の映像はなかったのだが、尚もわたしの上に重みを感じるのだ。

『なんだ?なんだ?なんだ?』

 わたしは目をつむったまま、これを受け止めた。さらになんと!…夢から覚めたばかりで、体の意識が戻っていなかったせいであろうが、現実にも首が苦しいのを今、感じ取ったのだ。そう、夢でも現実でもわたしの首は苦しかったのである。わたしは体を動かそうとした。が、動かないのだ。わたしの体すべてが動かない。

『金縛り…。』

 わたしは、そう思った。だが、体が動かないだけならばいい。そんなことより、首が苦しいのだ。ここでわたしは、ある試みをすることにした。大したことではないのだが、自分の体が動かないのは分かったが、まだ目が開くかどうか試していなかったのだ。わたしは思い切って目を開けようとした。すると、「う~っ…。」という、重々しく掠れた声が、わたしの耳についた。わたしの上に乗っているであろう人物の声であった。恐ろしい…わたしはそう思った。

 この声により、わたしは目を開ける勇気が萎んでしまった。だが、どうにかしなければこの苦しみから逃れられないのだ。再び、恐ろしき声が響いた。どうすることも出来ないわたしは、救いを求めた。

『神様っ!…。』

 この願いを発した瞬間、わたしは苦しみから解放されたのだった。わたしは目を開け、飛び起きた。

「フーッ…。」溜息をつき、わたしは考えた。

『金縛りか…。ん~っ、こんなに怖いものなんだ…。でも俺、なんで神様って思ったんだろう?』

 この疑問は、正解であろう。何故なら、恩徳+山伏=仏教と思うのが普通な筈であるからだ。ただ、何故わたしが『神様っ!…。』と思ったのか、なんとなく理解出来る。それは、わたしの家族の殆どが、クリスチャン・ネームを持っているからだ。わたしの姉たちは生まれてすぐ様、洗礼を受けている。そんな中で、何故かわたしだけが洗礼も受けていないし、ましてやクリスチャン。ネームなど持っている筈もない。その様なことから妬みまではいかぬが、わたしの真相心理の中に、子供が抱く〃みんなが持っているから、僕も欲しい!〃みたいな願望、憧れがあった為の『神様っ!…。』であったのだろう。

 しかし、不可解な事が多すぎる。今までの怪奇現象は一連に起こったことであり、多分その根源には〃恩徳〃での出来事が発端になっている筈。だが、今回の〃神様〃といい、この前の〃女の泣き声〃といい、とても山伏の霊のものとは考え辛いのだ。


「ん~っ…。よくわからんっ!」

 わたしはとにかく、寝ることにした…。
by dostoev | 2013-04-10 20:08 | わたしの怪奇体験談
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