遠野の不思議と名所の紹介と共に、遠野世界の探求
by dostoev
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「わたしの怪奇体験談(その5)」

     第三夜 女のすすり泣き



 ある晩、わたしは珍しく家にいた。時は確か、11時頃であったろうか。わたしは一生懸命に、絵を描いていたのだった。絵は、わたしの好きな女優の一人であるドミニク・サンダ。写真集を元に、思い入れタップリに描いていたわたしであった。
 
 冬の夜は静かなもので、その静けさが、絵に対する集中力を増幅させるのだった。8時過ぎから描いていた為、既にもう、完成間近であった。すると「トン、トン、トン」と、階段を駆け上がる足音が聞こえる。姉であった。

 わたしには、二人の姉がいる。一人はこの当時、地元の小学校の教員をしていた。今は、台湾人と結婚し、一人の子供を設け、一応幸せに暮らしている。これが、長女。もう一人は次女であるが、当時まだ大学生。そして卒業と同時にシンガポールへ渡り、三年。さらに現在は、アメリカはロスアンジェルスで…何やってんだろう?

 今、階段を上がってきたのは長女で、わたしの部屋の前を通り、自分の部屋へと入っていった。次女は、もう既に大学の休みが終わり、東京に帰った為、ここにはいない。だが、その数分後、第二の足音が響いてきたのである。
 
多分、諸君も同じだとは思うが、長年一緒に暮らしてきた、家族の足音というのは、なんとなく覚えるものである。まあその足音の違いを、どう表していいかわからぬが、父の足音、母の足音など、微妙に違うのである。だが、今ここに響いてきた第二の足音は、わたしが未だかつて聞いたことのないものであった。階段を、一段、一段、静かに踏みしめ、わたしの部屋に近づいてくる足音。わたしは、異様な緊張に包まれた。誰だ、誰だ、誰だっ…。わたしはこの足音に、全神経を集中させた。足音は、わたしの部屋のドアの前で、ピタリと止まった。わたしは、生唾を飲み込んだ。すると、安易な表現だが、

「シク、シク、シク、シク…。」

 と、女がむせび泣いている様な声が聞え…いや、泣いているのだ。わたしは動揺しながらも一応、消去法で、〃これ〃を考えてみた。『とにかく、次女はいない。長女は今、部屋であろう…。母は、とっくに寝ている筈。それに、こんなに可愛い声で泣く筈がない。祖母はというと、まるっきりの論外。ましてや、足が悪い為、今までここの階段を上がって来たことなど一度もないし…。』わたしは悩んだが、答えがでない。心の中ではすでに〃幽霊〃という答えが出ているにもかかわらず、意地を張った考えをしていた、わたしであった。

『!もしや、これは長女では?先程の足音は、友達かなんかで、今ここで泣いているのは、本当の長女かもしれない。そういえば、わたしの姉は、悲しみを人に知ってもらいたいという、悲しみ自己顕示欲が強い。そうだ、そうなのだ。』 

わたしはこの考えに、気を良くし、思い切ってドアを開けた。だが、そこには別の答えが待っていた。

「!…。」

 わたしはすぐさま、ドアを閉めた。そう…誰もいなかったのだ。そしてドアを閉めたその数秒後、再び泣き声が聞えてくるではないか。わたしはこの原因を考える為、ベッドへと向かった。素早く布団を被り、傍らの声を聞きながら、考えた。

『これはやはり恩徳の霊だろうか?でも確かあれは、山伏の霊の筈で、女じゃなかったよな…。フィルムあったっけ?姉さん呼ぼうか…。いや、そんなのみっともないな…。』

 などなど考えているうち、もう一度わたしは、ドアを開ける決心をした。

『…こんなことしてちゃ、らちあかないな…。よしっ!』

 わたしは思い切って、布団から這い出、ドアへ向かい、勢いよく開けた。だがまたしても、その泣き声の主はいなかった。わたしは再びドアを閉めた。すると、またである。

「シク、シク、シクッ…。シク、シク、シクッ…。シク、シク、シクッ…。」

 あまりにもくどい泣き声に、恐怖心は失せ、逆にわたしは呆れてしまった。仕方がなくもう一度わたしは、ドアを開けた。またもや、止まる泣き声。こうなると、まるでイタチごっこである。がしかし、わたしの恐怖心が失せた為の現象であろうか、この三度目が最後で、泣き声はピタッと止まってしまった。わたしは何故か、すべてに於いて気が抜け、寝ることにしたのだった…。

                   

    第四夜 風呂場の疑惑


 次の夜、わたしは夜の街に誘われるかの様にフラフラと、飲み屋街をさ迷っていた。 スナック『アトリエ』に辿り着いたわたしは、中に入ってみた。だが、わたしの同級生でもある、この店の女主人の姿だけしか、そこには無かった。

「あら、ゴーちゃん、いらっしゃい。」

 彼女は、一応にこやかに、わたしを迎えてくれた。

「相変わらず暇だな、ここ。」

「うん…。」

 素直に、それを認める彼女。

「何にする?」

 すかさず、彼女は切り返してきた。しかし、この寂しい中で、酒を飲む気になれないわたしは、コーヒーを頼んだ。

「ん~っ、ホット。」

「コーヒーね。」


 さっそく、コーヒーの準備をする彼女。わたしは、店内を見渡しながら、

「今日は、誰も来なかったのか?」

「ん、夕方、浩子とユキ、あとソノ子が来たよ。それにさっきまで、チャブもいたしね。」

 「ふ~ん…。」


 取り繕いの会話などしたく無いのだが、この漂う、シラケそうな雰囲気を打ち消す為には、どんなことでもいいから話して、この互いの会話に生命を吹き込もうとするわたしであった。とにかくここでは、世間話しかないと、わたしは思った。

「チャブは、うんたら、かんたら。浩子は、あーだこーだ。やっぱり、なんだかんだで、血液型はBだから、そうなるかもな。」

「そっかな~?」

「それにF(女主人)もBだから、どーのこーの…。」
 

と、必死に話すわたしであった。

 わたしは世間話しが得意、というか、得意に成らざるを得なかったのだ。それは、わたしの家が客商売であることと、わたしの父の性格によって培われたものである為だ。わたしの父は昔、市役所に勤めていたのだ。昔の市役所というのは、市民にへつらうことなく、傲慢な態度で接していた様である。その態度が強いプライドと重なり合い、食堂を経営し始めても、一向に消える気配が感じられなかったのだ。それを見兼ねたわたしの母が、父をなるべく客と接せぬ様、奥の仕事を言い付け、代わりにわたしが、客の接待係りを受け持つ様になったのである。当然の結果として、わたしは様々な客と接する為、様々な会話を強いられたのである。その様な事からわたしは、世間話しが得意?となったのであった。

「いらっしゃいませ。」 

どうやら、新たな客が来た様である。わたしは、その客の方を見やった。

「んっ?…。」

 確か、どこかで見た顔であった。わたしが座っているカウンターに、席一つ空け、その客は座った。

「ブレンド。」

「はい。コーヒーですね。」


 わたしは何故か、その客が気になり、話しかけてみることにした。

「あの~っ、すみませんが…。」

「あれっ、君は。」

「えっ?誰でした…。」

「何だ、忘れたのかい。ほらっ、名刺貰ったろ。」

「ああっ!IBCの…。まだ、遠野にいたんですか?」

「うん、別の取材があってね。」


 奇遇といえば、奇遇であった。そこでわたしは姉帯さんに、その後、わたしの近辺に起きた出来事を話したのだった。

「う~ん…。どうだい、来年の夏にテレビの連中を連れてくるから、もう一度あの〃幽霊屋敷〃に行ってみないかい。」

「へっ?」


 突然の話しであった。ラジオの次は、テレビである。わたしのテレビ出演は、今までに二度程あった。一つは岩手国体で、遠野がサッカーの開催地となった時にCMとして、少年がサッカーボールと戯れる姿を撮ってもらった時である。確か、小学校一年の時だったと思うが…。その代わり出演料が、カツ丼であったのを、今でもハッキリ覚えている。もう一つは、北海道の劇団ピッカリ座に所属していた時であった。劇団の要請により、TBSの「胸さわぎのイチゴたち。」にエキストラとして出た時である。場所は、千歳空港。わたしの役はスキーヤーで、空港から出てくるシーンと、バスを待ちながら時計を見るシーンの2カットであった。

 まあ、大したことの無い役ではあるが、昼メシ付きで、5千5百円。さらに、小林麻美のひょうきんな姿と、石野真子のなんとも可愛らしい姿を垣間見ることが出来たのは、もうけもんであった。ところが今回の話しはもしや、主役になれるかもしれないのだ。こんなことはめったにないのだっ!わたしはこれに対する、返答を返した。

「え~っ、テレビですか…。」

 素直でないわたしの、素直でない返答であった。

「僕は、こういうの好きでね。どうだい、やってみないか?」

「ん~っ、そうですね…。」


 なんだかんだ言いながら、わたしはその話しを、念入りに了承したのだった。

                   
 その晩わたしは、11時という早い時間に家に帰った。どうやら祖母は未だ、起きている様であった。わたしは、祖母のいる茶の間を通り、風呂場へと向かおうとした。すると…。

「入っちゃいけないっ!」

 血管が切れるかと思われる程、大きな声で祖母は叫んだ。

「なんで?」

「今、風呂に入っているんだよ。」

「誰が?」

「誰だか知らないが、今入ってるんだよ。」

「今頃、誰も入るわけないだろ。」


 そうなのである。この家で、11時過ぎに風呂に入るのはわたし以外、誰も過去にはいないのだ。だが、もしかして姉かもしれない。わたしは静かに風呂場の音を、耳で探ってみた。

「カコーン、バシャーッ。」

 うん、どうやら入っている様である。やはり多分、姉であろう。わたしは姉が出て来るまで、この茶の間でテレビを観ていることにした…。

 もうというか、やっとというか、とにかく11時半である。わたしは待つのが嫌いである。テレビを観ながらという、気楽な態勢にも拘らず、やはり〃待つ〃というものに対し、わたしの心は苛立ちを感じている。わたしはもう一度、耳を澄してみた。

「…。」

 静かであった。

「おばあちゃん、ちょっとおかしくない?静かすぎるよ。」

「だって、まだ誰も風呂から上がってないだろ。」

「そうだけど…。」


 もしかして、姉がのぼせて、倒れているかもしれない。わたしは確認する為、風呂場へ通ずる扉を開けようとした。すると、

「カコーン…。」

 再び、オケの乾いた音が風呂場の中で広がった?…。やはり、姉はいるのだろうか。わたしは、もう少しだけ待つことにした。だた今度はテレビを見ずに、全神経を、風呂場へと集中させた。

「…。」

 静かだ、静かすぎる。何の音もしないではないか。変だ、やはり変なのだ。だが、先程の音は、どう説明する…。強い疑念が、わたしに待つことをやめさせた。わたしは立ち上がり、風呂場に通じる扉を開けたのだ。そして、風呂場を見やった。

「!…。」

 なんと、電気が消えて真っ暗ではないかっ!わたしは一応、脱衣所に衣服があるかどうか確認したが、無かった…。

「おばあちゃん、やはり誰も…。」

「カコーンッ!」


 この状態で、再びオケの音が鳴った。

「でっ!」

 一瞬、わたしは驚いてしまった。もしかして、もしかして、もしかしてこれはドロボウ?かもしれない。わたしは、恐る恐る風呂場の電気を点け、ドアを思いっきり開けた。が、そこには誰もいなかった。わたしは誰もいないが為に、ドアを閉め、電気を消そうとした。その時、わたしの心にあるものが引っ掛かった。『!もしや…。』この〃もしや〃とは、浴槽にフタがしてあったのだが、そのフタを開け、浴槽の中を確認していないが為に、〃もしや浴槽の中に誰かが隠れているのではないか?〃という〃もしや〃なのだ。

 わたしはもう一度ドアを開け、そのフタに迫った。この時わたしの全身を、緊張感が貫いた。何故ならば、この定員が一人の浴槽の中に、フタをして誰かが隠れていたとしたらどうであろう…。例え誰かがいると分かっていても、フタを開けた瞬間、ある顔が目の前に飛び出してきたとしたら…卒倒するに決まっている。わたしは生唾を飲み込み、覚悟を決め、フタを開け放った。そして…わたしはホッとした。やはり、誰もいなかったのだ。

「おばあちゃん、やはり誰もいないよ。」

「そんな分けないだろ、わたしゃ誰かが風呂に入りに来た音を、ちゃんと聞いたんだからね。絶対いる筈だよっ!」

「そんなこと言ったって、いないものはいないんだよ。」
 

 わたしの祖母は強情で困る。この為、わたしが今までに何度泣かされたことか。だが、その祖母ももういない。しかしそんなことより、誰もいなかったのが良いのだが、あの音をどう説明すればいいのだろう。 乾いたオケの音。水音。誰かが入っていなければ出ない音なのだ。わたしは考えた。が、何も浮かばない。ただ昨日、一昨日の音と連動するものであるならば、真剣に考えねばなるまい。

「う~むっ…。」
by dostoev | 2013-04-09 20:45 | わたしの怪奇体験談
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