遠野の不思議と名所の紹介と共に、遠野世界の探求
by dostoev
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「わたしの怪奇体験談(その3)」

「わたしの怪奇体験談(その3)」_f0075075_1443381.jpg

考えてみるとわたしたちには、安堵の地というものが無かった。お稲荷様であろうと、幽霊屋敷であろうと、要は同じなのである。神社での一瞬の恐怖体験を、談笑しながら、恩徳の地での〃家〃へと帰るわたしたち。その時のわたしたちは、その〃家〃こそが恐怖の根源であることを、すっかり忘れていたのだった。

 誰もいない我が家というものは、何とも寂しいものである。それがましてや幽霊屋敷ともなると、寂しいというだけでは済まされないのだ。屋敷の前で、皆の会話と足が止まった。ここで皆の頭に思い浮かんだのは〃誰が先に入るのか?〃であろう。互いに顔を見合わせ、〃誰?〃を確認し合っている様子だった。すると、確認が試された様である。なんと皆の視線が、わたしに集中しているではないか。まあ、わたしがすべてを計画し、実行に移したのであるから、しかたないのだが…。しかし、何とも情けない連中であろうか。恐怖とは、ここまで人間を臆病にさせるものなのであろうか…。

 無言のまま、わたしは屋敷のドアを開けた。だが、そこには何も存在しなかった。ただあったのは、前と変わらぬ景色であった。何やら後から来た三人が、コソコソと話している。

「それじゃ、俺たち帰るよ。」

 〃拒絶〃の友は、あっさり言いはなった。

「え~っ、もう帰んのかよ。」

 マッコがすかさず言った。

「そうだ、せめて〃二時半〃までいろよ。」

 わたしも続いた。やはり、帰したくないのである。この〃素晴らしい一夜〃を、一緒に過ごしたいが為である。

「明日、デートなんだ。」

 ここで、友Nの必殺技が飛び出した。

「何だ、S子ちゃんとか?」

 わたしは皮肉っぽく、名指しで女の子の名前を言った。友Nは、その名を言われたくなかったのか、言葉を濁す感じで、一言発した。

「ああ…。」

「ふ~ん…。」


 わたしは友Nを、蔑む感じで見た。だが、開き直った様である。

「じゃあなっ!」

 この言葉こそが、ここから逃げ出すには、最良で、最強の言葉であった。他の二人も、今の言葉に便乗し、逃げようとするのを、わたしは呼び止めた。

「おまえらはいいだろ?」

「バカ、俺は友Nを送らなきゃ。だって、俺の車で来たんだぞ。」
 

この友Sの言葉もまた、理には適っている。

「友Tは?どうする。」
 
わたしは友Tに目を向けた。

「う~ん。やっぱり、来るのも一緒なら、帰るのも一緒だしな…。」

「ふ~ん…。」


 わたしは結局、止めるのを諦めた。ヘタな言い訳をつく連中に、愛想をつかした為だ。残ることになる連中も、そいつらが帰るのを羨ましそうにしている。わたしは『一緒に帰るなら帰れ。こうなったならば、一人でもいいっ!』という気持ちになった。が…結局、ショーイチ、マッコ、ヤス、の三人は、わたしと運命を共にしてくれることとなったのだ。
                   
 わたしたちは、真中の部屋で沈黙していた。人がいなくなった寂しさと、長時間に及ぶ神経的な疲れからである。すると、マッコが立ち上がった。

「小便に行ってくる。」

 と、一言残し、外へ出ていった。

「あ~あ、疲れた。もう寝ようかな…。」

 ヤスは、そう言うと横になった。ショーイチも、暇そうにしている。そしてわたしはというと、オモシロクナイッ!のだ。誰が何と言おうと、ここは〃幽霊屋敷〃なのである。適当な考えでここに来られても困るのだ。やはり来るならば「俺は絶対に、幽霊を見てやるんだっ!」くらいの心構えを持たなくてはいけない。それがもう、寝ようなどと…。わたしたちは未だ、さわりの部分しか体験していないではないか。これからが楽しくなるのに…。

 皆はもう、眠りの態勢にはいってきた。時刻は2時に、あと僅か。眠くなるのも当然といえば当然か。取り敢えず、わたしは皆に〃優しい心遣い〃を示す為に、ビデオの照明を消した。そして、ロウソクの明りだけを残して、皆とのコミニュケーションをはかる為、わたしも横になったのだった…。
 
今、静かな時間を、わたしたちは過ごしている。耳に響くのは、雨の雫と、疲れからくる、眠りの前の、囁く様な声だけである。わたしたちは一歩一歩、眠りに近づいている。眠りたいとする欲求の前には、恐怖の存在など皆無である。頭の中には、幽霊屋敷にいるということなど、既に忘れ去っているのだ。ただ、眠りたい、眠りたい、眠りたい。それでも尚且つ、惰性による会話が続く。眠いという欲求の中にも、眠るのは未だ勿体ないという、意識の抵抗がある為であろう。だがそれも、微力なレジスタンスでしかなかった。ごく自然に、皆の口から、会話が途絶えていったのであった。後は、完全なる眠りに引き込まれるだけでしかなかった。
 
わたしの現の意識は、虚ろになってきた。心が〃現〃を捨て〃夢〃を求め始めたのであった。眠い、眠い、眠る、眠る、夢、夢、夢よ…。
                   
 今思えば、この幽霊屋敷に住む〃力〃は、わたしをからかっていたのかもしれない。わたしの眼前には、決して姿を見せることなく、ただ音のみにより、わたしにつき纒っている。忘れそうになると必ず、わたしの耳に〃力の音色〃を響かせる。これはわたしに、一生つき纒うものであろうか?いやその前に決着をつけるべく、完全な姿を、わたしに示すのであろうか…。
                   

 わたしは、寝ている。寝ているというのもおかしな話しだが、確かに現の意識は失せていた。そのわたしを再び、現に呼び覚ます凄まじい響きが、屋敷内に轟いた。


 「ドゥオオオ~ンッ!」


という大音響と共に、余震なしの激震が、わたしたちを襲った。震度5以上はあった筈。 わたしたちは驚きの声を発し、立ち上がろうとしたのだが、立てないのだ。わたしは、ビデオ・カメラが倒れそうになったのを見て、慌てて這って行き、どうにかそれを死守したのだった。
                   
 この地震?は、わたしがかって経験したことのないものであった。「グラ、グラ、グラ、グラッ。」というピアニシモの響きから、だんだんとフォルテシモへとクレッシェンドしてゆくのが通常の地震である、と思っているわたしを欺く揺れであった。まるで、マーラーのシンフォニーNr6「悲劇的」の、唐突なる最後の一撃である。この曲を初めて聴いた時、わたしの心臓は止まるかと思った。レコードはショルティ&シカゴ。史上最強、音の要塞コンビである。最終楽章のラスト部分、限り無く深遠で、美しいアダージョが消え去りつつあった。わたしは終焉を感じ取り、レコードをジャケットに戻す為に立ち上がり、プレーヤーに手をかけようとした。その時である。最後の一撃、最後の大音響が、わたしの心臓を貫いたのは。それと同じ衝撃をこの地震?が、わたしにもたらしたのであった。

 実は、この幽霊屋敷から帰ってから、事実確認をする為、その時間帯に地震があったかどうか調べたのだが、結果は地震など無かったのである。実際、あれ程の揺れがあったのならば、ニュースでも取り上げる筈である。それもなかったということはつまり、あの地震?は、幽霊屋敷内のみに発生した地震なのである。しかし、果たしてこんなことがあっていいものだろうか…。
                   
 この地震の為、わたしたちの恐怖心は復活した。そしてそれをさらに煽る様に、ありとあらゆる〃現象〃が、わたしたちの身に降り注いだ。まるで、盆と正月が一度にきた賑わいが、この幽霊屋敷に訪れたのである。まずドアが生き物の様に、各自様々な動きを見せたのである。

「ガタ、ガタ、ガタ、ガタッ。」と、定期的な震動を繰り返すドア。

「バタン、バタン、バタン。」壊れた自動ドアの様に、開いたり閉まったりを繰り返すドア。

「ダ、ダ、ダ、ダ、ダッ。」今度は、廊下を誰かが走っている。

「ドダ、ドダ、ドダ、ドダッ。」さらに天井である。うるさいことこの上ない音たちである。
 
わたしはここぞとばかり、カメラを手にし、写真を撮りまくった。
「わたしの怪奇体験談(その3)」_f0075075_14375222.jpg

「ガタ、ガタ、ガタ、ガタッ。」

「ヒェ~ッ!」

「バタン、バタン、バタン。」

「ワ~ッ!」

「ダ、ダ、ダ、ダッ。」

「アワ、ワ、ワッ…。」

「ドタ、ドタ、ドタ、ドタッ。」

「カシャン、カシャン、カシャン。」

「ドス、ドス、ドス、ドスッ。」

「ギャ~ッ!」



 この屋敷にあらゆる〃音〃が乱れ飛び、ストロボの光が走る。まるでこの屋敷が、ディスコ・ハウスと化した様であった。この最高の〃ミュージック〃に包まれたわたしは、燃えに燃えてきたのだった。

 台所へ行き「カシャ、カシャ、カシャン。」

 廊下へ行き「カシャンコ、カシャンコ、パッ、パッ、パッ。」

 血湧き肉踊るこのステージで狂喜乱舞するわたし。もう誰にもわたしを止められない。カメラを首からぶら下げ、天井に這い上がり「パシャ、パシャ、パシャッ。」

 わたしをここまで駆り立てたのは〃幽霊が見たいっ!〃という願いだけであった。いつの間にか、音は消え去っていた。皆は、真中の部屋で毛布にくるまり、震えていた。シーンと静まり返った屋敷は、逆に不気味さを感じさせる。するとかすかに、風鈴の音が聞こえるではないか。
「わたしの怪奇体験談(その3)」_f0075075_1533859.jpg



「チリ~ン、チリ~ン、チリ~ン…。」 


何故かこの風鈴の音色だけに、わたしは恐怖した。時期が夏である為、風鈴の音というものは、別に何てことはないのだが…。本当にわたしは恐ろしかった。

やがてその風鈴の音も消え去っていった…。朝である。朝が訪れたのである。外はまだ薄暗さを残してはいるものの、夜と比べるとまるっきりの明るさなのだ。小鳥のさえずりも聞こえてきた。近所で飼っているニワトリも朝を告げている。完璧なる朝。待ちに待った朝なのである。わたしは外に飛び出し、空を見上げた。

 天空を、覆っていた黒いカーテンは取り除かれ、偉大なる朝の舞台が始まっていた。まだダークブルーの空色に、山の後方から、太陽の赤味がにじんできた。暗から明へと移行するターニング・ポイントの一時である。わたしは屋敷に戻り、皆を叩き起こすことにした…。

                   
 これをきっかけに、遠野中で幽霊屋敷詣でが流行ったのであった。しかし、噂が広まるのが、何と早い地であろうか。わたしの耳にも、他の者たちの武勇伝がはいってきた。だが結局、幽霊屋敷に泊まった強者はいなかったようだが…。
 
ここで一つの話しを紹介しよう。何と遂に、警察官までが幽霊屋敷に出向いたのである。 話しによると、二人の警官が勤務の合間をぬって、噂の幽霊屋敷を視察しに行ったそうなのだ。だが、鍵がかかって中に入れない。まさか警官が、鍵をこじ開けて中に入る訳にもいかず、屋敷の周辺をグルグル回って、結局、中に入るのを諦めたそうなのだ。だが、一人の警官が面白く無い為、屋敷にツバをかけ、足で蹴飛ばし、そのまま帰ったのであるが、それからその警官は原因不明の高熱をだし、寝込んだそうなのだ。

 わたしはその話しを聞き、我が身の何とも無さにホッとすると共に、疑問を感じたのであった…。あっ!ここで写真の結果を報告しておこう。実は…何も写っていなかったのだ!
by dostoev | 2013-04-07 15:05 | わたしの怪奇体験談
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