遠野の不思議と名所の紹介と共に、遠野世界の探求
by dostoev
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「わたしの怪奇体験談(その1)」

この物語は、今から30年前程(昭和55年)に、遠野の恩徳の幽霊屋敷と呼ばれる家に泊った後に書き記したものです。まだ自分が若かりし頃の文章で、お恥ずかしい…。

「わたしの怪奇体験談」


わたしの身にふりかかった怪奇現象の発端は、故郷である岩手県遠野市に於いて始まったのだ。そう、今から5年も前になろう…。
 
あれは東北全体が、冷夏の波に覆われている中の、ほんの一握りの暑い夏の日であった。わたしはその暑さを凌ぐ為、駅前にある〃待月〃という喫茶店でホット・コーヒーを飲んでいる時であった。そこに、この店の常連らしき客が来たのである。

この客は入ってくるなり、大声で幽霊屋敷の話をしだしたのだ。好奇心旺盛なわたしはすぐさま身を乗り出し、その客から幽霊屋敷の話を聞き出したのであった。そして、その話とはこうであった…。
                  
 遠野市の面積は広い。その広さとは、東京23区がすっぽりと入る程である。だが、その広さとは裏腹に、人口密度は寂しい限りなのだが…。
 
この遠野の外れに、恩徳という地がある。この地にこそ問題の幽霊屋敷が在るのだ。屋敷の造りは、というと。屋根は芽葺き、形状は、曲り家に近いものなのである。ここには既に誰も住んでおらず、雑草は屋根の中に入り込み、色は山と同化している。この民家の成れの果てといった、惨憺たる姿の中に、ある〃現象〃を起こす力が存在したのである。いや、今でも存在するのかもしれない…。
                   
 この客は土方さんで、道路の舗装工事の為、恩徳へと出向いた時の事だそうだ。その日、工事が夜まで長引いた為に仕方無く、近くにあった空家(幽霊屋敷)を飯場代わりにしたのだそうだ。そして人夫たちが屋敷の中に入るや否や、その場で酒宴が開かれてのであった。
 
気持ち良さそうに酒を飲んでいる人夫たちの中、その客だけは、ある奇妙な現象が起こっているのを発見した。誰もいない筈の廊下に響く足音。自動的に、開いたり閉まったりする、古びた戸。客は外の者にその奇妙な現象を話したが、酒も入っているせいか、誰も相手にしてはくれなかったのだが、延々とその現象は続き、他の者も〃それ〃に感づきはじめた。だが、その人夫たちの親方が皆に号令をかけたのであった。


「寝ちまえっ、寝ちまえっ!寝ちまえば、そんなもの消えちまうさっ!」 


親方の号令に従い、人夫たちは、早々と眠りにつくことにした。しかし、寝静まれば逆に、その現象が引き出す騒音が、かえって耳に着くものである。
 
人夫たちには、先程の酒の勢いが切れ、恐れとおののきの心か芽生えてきた。そして、今度は、その現象が、より身近になったのであるなんと、一人一人が何者かによって、首を絞められていったのである。そのため人夫たちの恐怖は頂点に達し、真夜中、人夫たちはこぞってこの屋敷から逃げ出したのだった…。
                  
 わたしはこの話を聞き、現在廃墟となっている幽霊屋敷の住人を探し出し、過去に於ける因縁めいた話を聞き出すことにした。あらゆる人の伝をたよりにわたしは、どうにかその屋敷の元住人を探し当てることができた。遠野の八幡住宅に、その幽霊屋敷の元住人はいたのであった。
 
 話しによると、やはり以前から〃あの現象〃はあったのだそうだ。その人は、あまりに奇妙な現象が続く為、逆に日常の一部となってしまい、まったく気にしなくなったという。だが、友人なり、親戚なりが、親切にもお払いをしてくれるお坊さんを、世話してくれたそうなのだ。そんな経過であるお坊さんが、恩徳の地へと赴き、熱心にお払いの為のお祈りをあげたのだそうだ。そしてその後に、お坊さんが言うには…。


「この霊は、数十年前にこの家にて殺された、山伏の霊です。その山伏の霊力があまりに強い為、わたしの力ではどうすることもできません。ただ…遠隔の地にいる、ある高名なお坊さんならば、どうにかしてくれるかもしれませんが…。」 


このお坊さんの言葉を聞き、その人は、『そんな高名だけで、どうなるかわからん坊主に高い金を払うくらいなら、いっそのこと引っ越してしまおう!』 と思い、現在に至ったのであるそうな。
「わたしの怪奇体験談(その1)」_f0075075_845099.jpg

        
 わたしはその話を聞き、益々その幽霊屋敷へ行きたくなった。そこでわたしは、その屋敷までの道を丹念に聞き出し、深夜に友達と共に〃そこ〃へのドライブを決行することにしたのだった。 聞いた通りに車を走らせるわたしたち。すると、だんだんと外燈らしきものが失せてきた。そう、山の中に入って来たのだ。

ヘッドライトのみが周辺を照らす世界。わたしたちの目にはただ、アスファルトのみが闇の中に光って見えるだけだった。だが恐怖心と共に、こんなところに果たして、民家らしきものがあるのだろうか?といった疑問が頭の中を駆け巡った。
 
何度も、何度も、曲りくねった山道を走るわたしたち。突然、ヘッドライトに白い壁が浮かびあがった。なんでも突然というものは驚くものである。心臓にも悪い。必然的にみんなはその時「わっ!」という言葉を発した。
 
その突然の白い壁が、わたしたちに異常なまでの恐怖を与えたからである。そしてその白い壁こそが、目的である幽霊屋敷の壁であったのだ。その時のわたしたちの心理状態は、『いつ出る!?いつ見える!?』という恐怖と好奇の入り交じったものと『こんな場所に家などあるわけないさ。』というものだった。そんな心を白い壁が戒めてくれたのだった。
 
真暗な山道の脇に車を止め、わたしたちは懐中電灯の明りを頼りに、その家へと向かった。すると下方から、犬の吠え声が聞こえてきた。どうやら、他にも民家があるようだ。よく見るとかすかに明りが漏れている。しかし、わたしたちにはこの屋敷しか眼中にない。さっそく中へ入ろうとした。だが、鍵がかかって中に入れないのだ。屋敷の周りをわたしは入れる場所を探すべくうろついた。だが、である。仕方が無くこの日は、屋敷の前での記念撮影のみにとどめることにした。
 
闇夜に何度もストロボの閃光が走る。すると、先程の犬の吠え声が近づいて来るではないか…。どうやらわたしたちの声と、ストロボの光りとが、下方の住民たちに不審感と不安感とを与えたようなのだ。犬を引き連れ、恐る恐る住民たちはわたしたちの下へと歩み寄って来た。これはまずいとばかりに、わたしはすぐさま話しかけた。


「すみません。実は、この幽霊屋敷の噂を耳にし、肝試しを兼ねて、ここまで来たんですが…。少々、騒がしかったですか?」


住民は、わたしの言葉に答えて言うには「いや、それならいいんだ。今度は何事が起きたのかと思ってな。この家は、昼でも薄気味悪くて、わしらも近づかない様にしているんだよ。」 
この住民の言葉が、益々この〃幽霊屋敷〃という信憑性を、わたしに持たせる結果となったのだった。
                  
 わたしは、その幽霊屋敷へと行く準備を始めた。借りもののビデオ・カメラ(日立)とそれに伴う備品。一眼レフ(ミノルタXD)、三脚、ストロボ。ろうそく五本、懐中電灯二本。蚊取り線香、寝袋、ラジカセ。オニギリ6個、缶ジュース二本、缶ビール三本。完壁な装備である。これらの機材をフルに活用して、わたしは幽霊の正体を見極めることにした。                 

 ここで思いもよらぬ事態が発生した。いつでも思いもよらぬ事態というのは起きるもので、その時のその事態とは、行動を共にすると信じていた友が、揃いも揃って、幽霊屋敷探検を拒絶したのであった。
 
こんなことでわたしは、幽霊屋敷探検を諦めたくはなかった。一人で行っても良いのだが、幽霊が出た場合、また超常現象が起きた時、わたしの他に証人がいなければ、わたしのこの貴重な体験は、嘘と化してしまう。真実を嘘と思われたくない為、仕方無く、わたしは新たなる同行者を求め、駆け回ったのだった。
 
そのわたしの努力の結果、菊池誠(マッコ)、阿部浩康(ヤス)、正一守(ショーイチ)そして、わたしを含む四人が集まった。わたしが集めたこの三人は比較的おとなしい部類に属する人種である。つまり、当然…隊長はわたしである!
                    
 八月二十日、午後六時。例の〃待月〃でわたしたちは待ち合わせた。その日は、真黒な雨雲が空を覆い、風も不気味な音をたて、泣き叫んでいる。なんとも素晴らしい、幽霊屋敷探検の日よりであろうか。わたしは、心に何かの予感を感じながら、見送る人々を背に、〃待月〃を後にした。
 
遠野駅前を通り過ぎ、脇目も振らずにわたしたちは、目指す恩徳へと向かった。途中にあるカッパ淵の手前に差しかかった時、わたしたちの車は、激しい雷雨に見舞われた。

『天は、我々に味方し賜うたっ!』わたしは、喜び勇んだ。さらに常堅寺から、黒猫が飛び出して来たではないか。幽霊を目指すわたしたちにとって、雷雨+黒猫というのは怪談映画を観る限り、果てしなく幽霊に近づくのだ。さらに蛇も出て来るとか、カラスが鳴くとか…細かい味付けも欲しいところである。何故なら、やはりこれだけの装備を施して行くのだから、何も出なかったでは済まされないのだ。

とにかくわたしは、幽霊が見たくて見たくて仕方が無かった。幽霊は信じたいが、この目で見たことがない為、どうしても信じることができなかったわたしにとって、この機会こそが、わたしの欲求を満たす機会なのだ。だがそれと共に、もし幽霊を見たのならば、その幽霊の姿が永久にわたしの脳裏に焼き付くのではないのか?といった不安の気持ちも無い訳ではなかったのだが…。
                   
 とうとうわたしたちは、恩徳に着いた。雨の中、幽霊屋敷を見下す道路から、それを見つめた。素晴らしいことに、この天候による幽霊屋敷の佇まいは、益々その不気味さを助長させている。わたしは雨の中、駆け足で屋敷まで行き、内部から侵入できる箇所を探した。その求める箇所は、納屋らしき部屋の上部にあった。それは小さな穴であったが、わたしが侵入するには、十分な広さを持っていた。わたしはそれ目がけて這い上がった。Gパンを釘に引っ掛けはしたが、どうにか内部に侵入することが出来た。わたしはすぐに玄関まで行き、内鍵を開けてから皆を呼び寄せたのだった。
                   
 屋敷の内部は荒れ果てており、カビ臭さと湿気とが、わたしたちを迎え入れた。この屋敷の壁には、時代を感じさせるポスターが貼ってあった。それは知る人ぞ知っている旧御三家は、西郷輝彦、船木一夫、橋幸夫、そして、加山雄三。さらには、旧時代のプロレスラーのポスターが…。

 わたしたちが、屋敷の隅々まで探索したところ、あるものを発見した。それはお札である。各部屋の柱に、ベッタリと〃それ〃は貼ってあった。まるで霊を封じ込めるかの様なお札が…。わたしは、皆に内緒で、そのお札を剥がす決意を固めた。そうでなければ面白くなかろう。しかしその時のその決意、その行為が、後々までわたしに響いてくるとは考えもしなかったのだ…。

 わたしたちは、連なった三つの部屋の真中を、定住の場所にした。皆は、持ちよった荷物を整理している。わたしは、皆がその場所に落ち着いたのを見計らい〃もう一度、念入りに探索する〃を名目に、各部屋のお札を剥がしにかかった。わたしたちの定住の場所だけを残して…。

 時間的に、幽霊が出るにはまだ早いであろうという、皆の一致した提案の基に、とりあえず、腹ごしらえと、酒ごしらえをすることにした。しかし、このリラックスしたムードの中にも、やはりわたしたちは、幽霊屋敷の中に居るのだ、という意識の緊張はあった。その意識の結果が、わたしたちに怪談を話させることになったのである。

 あらゆる怪談話が飛び交う中でわたしは、教訓的なある事件の話をした。この話は、新聞にも載ったのだが、ある大学生がやはり、とある幽霊屋敷の話を聞きつけ、その幽霊屋敷に泊まった時の話だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー                  
 その大学生たちは5人であった。屋敷にはやっては来たが、何の気配もない。そこで大学生たちは持参した酒でドンチャン騒ぎを始めたのだった。いつの間にか大学生たちは、酒の作用により、寝入ってしまったのであるが…。一人、真夜中に起きた者がいた。どうやら、オシッコに行きたくなった様なのだ。

静寂に包まれた屋敷内  そう、その者はこの静寂によって、自分が幽霊屋敷にいることを覚えたのだった。他の者たちは、寝息をたててグッスリと眠っている。その者の頭の中には〃一人ぼっち〃〃静寂〃そして〃幽霊屋敷〃という意識が駆け回ったことであろう。その意識が、余計な想像力を掻き立てたことであろう…。

 造りの古いこの屋敷の便所は、渡り廊下を渡った離れにある。部屋から便所への道程はかなりのものなのである。ましてや幽霊屋敷という意識が、その道程を、いっそう長いものに感じさせる筈である。恐怖に怯えたその者は、寝ている友を起こそうとした。〃道連れ〃を求めたのである。だが、酒が入っていた為か、なかなか起きようとはしなかった。そこで覚悟を決めたその者は深夜、一人で〃幽霊屋敷〃にある便所へと向かったのである。

 わたしには、びくびくしながら歩くその者の姿が、思い浮かばれる…。わたしがまだ幼き頃、一人夜道を歩いていると、妙に後ろが気になって仕方がなかった。歩く程に想像力は逞しくなり…。

『後ろから、誰かがつけてるんじゃないか…。』

『もしかしたら、妖怪じゃ…。』


 などと考え、だんだん早足になり、ついには走って家まで帰った覚えがある。

その大学生は懐中電灯の明りを頼りに、どうにかその者は、便所に辿り着くことができた。便所は汲み取り式で、悪臭を放っていた。中には小さな窓があったが、ガラスはギザギザに割れている。その者は、早く用を済ませようと、習慣通りにドアを閉め、その用を足した。その時である。〃トントン〃と、ドアをノックする音がしたのだ。

『誰もいない筈なのに…。』 


という意識と〃幽霊屋敷〃という意識の衝突が、その者の持つ恐怖を、極限に追い詰めたのであろう。その者は逃げ出す為に無我夢中で、ガラスの割れた小さな窓に飛び込んだ。その結果その者は、ガラスで首をザックリと切り、出血多量で死んだのである。

 ところで、ドアを叩いた者と言えば、結局すぐ後から目覚めた友であった。怯えの心が、平常心を失わせた為の死であったのだ。映画『砂の惑星』でポール・アトレイデスが言った言葉にこの様なものがあった。「恐怖は心を殺し、すべてを無にする。」まさしくこの言葉こそが、この事件の真相なのである。
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 どうのこうの話しているうちに、時刻は九時をまわった。わたしは、ビデオ・カメラをスタートさせるべく、録画スイッチを入れた。そしてわたしたちは、真中の部屋にかたまりじっと〃それ〃を待つことにした。

 ふと気づくと、台所に通じるドアが開いている。わたしは、何故か気になり、ショーイチに、そのドアを閉めてくるのを命じた。ショーイチは初め拒んだが、〃身分〃的には一番下っぱの為、シブシブわたしの命令に従った。断っておくが、このグループの中でショーイチという存在は、奴隷的立場にある。だがけっしてイジメている訳ではないのだ。暫くすると…。

「ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!」

 という、激しくドアを叩く音が響いた。わたしは、またショーイチが何か騒いでいると思い、音のした方向を見やった。すると、ショーイチが呆然と立ちすくんでいるではないか。わたしは、ショーイチから何があったのか聞きだした。ショーイチが言うには、ドアを閉める為、そのドアに向かって行った瞬間、ドアが激しく鳴りだしたという。

 その時のショーイチは、あまりに突然の出来事の為、声を発することが出来無かったのだが、皆で〃それ〃を確認した時、初めて「ワーッ!」という声を発した。わたしたちも連鎖反応により、思わず「ワーッ!」「ワ~ッ!」「ウワ~ッ!」という声を、この屋敷内に発したのだった…。

 しかしどうであろう、遂にお札を剥がした成果があがったのだ。わたしは恐怖の中にも、喜びの心が芽生えてくるのを感じとった。もうこうなったならば、『何でも、来るなら来いっ!いや、来てくれっ!』である。わたしがどこまでこの恐怖に耐えれるのか、この恐怖の中に、どこまで喜びを見つけ出すことが出来るのか。これが、わたしに課せられた命題であった。

 わたしたちは真中の部屋に、並んで横になった。廊下側を頭にして。その時であった。廊下から〃ミシッ、ミシッ、ミシッ〃と言う、誰かが歩く足音がしたのである。わたしたちの間で一瞬、会話が止まった。長い間がその時あったが、怖さで声が出なかったと言うよりも、意外と冷静に〃その音〃を頭の中で分析していたでのあろう。


「今の〃あれ〃だよな…。」

「ああ、多分そうだろう。」

「やっぱり、〃あれ〃しかないよな…。」

「ああっ…。」



 その後わたしたちが、いっそう身を寄せ合ったのは言うまでもない。
                   
 雨音が激しくなってきた。それと共に、この幽霊屋敷内に、無数の雨漏りの音がこだまし始めた。その為、わたしたちは、戸惑いを覚えた。それは自然の音と、反自然の音とが、聞分け辛くなったからだ…。

 わたしたちの神経は、異常に尖ってきた。一音ごとに、ビクつく時が続く。神経が尖らない方がおかしいくらいだ。だが、ハッキリ、クッキリした〃あの音〃は、あれ以来聞けないでいる。と、その時であった。車のエンジンの音が聞こえてくるではないか。確か、「後から遊びに行く。」と、〃拒絶〃した友は言っていた。わたしたちは驚かそうと、点いていたビデオの照明と、ロウソクの明りを消した。

 車のドアを閉める音が聞こえ、足音がこの屋敷に向かって来るのがわかった。息を殺し、潜むわたしたち。足音が、屋敷の前で止まった。驚かせるという〃期待〃に胸ふくらませるわたしたち。と、ガラスを叩く音が、この屋敷内に響き渡った。だが、音はそれのみで途絶えた。それでもわたしたちは待った…。

 だが、である。おかしいのだ。そんな筈はないのだ!確かに、車の音、ドアの閉まる音、足音、窓ガラスを叩く音。わたしたちの四人が四人とも、それらの音を耳にしているのだ。拘泥を残しつつも、〃それ〃は一応、空耳として片づけたのであった…。
by dostoev | 2013-04-05 08:58 | わたしの怪奇体験談
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