御膳の足を逆さまにしたような形な為に、昔から「膳足」として親しまれてきた石であるという。ただ当時の感覚では御膳の足に見えるのは当然だが、現代の感覚ではハイヒールを逆さまにしたようにも見える。ヒールの部分の石の隣も石なのだが、草に覆われていている為によくわからないが、その草を取り除けば、女性のハイヒールにも見えてしまう。
ところで、この膳足石の場所には、ムジナ退治の話が伝わっている。
塚沢の田下部落に鉄砲の名人がおり、ある日の夜、無尽和尚の寺屋敷の辺りに行くと、上の方で灯りが見えるので行って見ると、膳足石の上に行灯を灯して、若い女が髪をけずっていたという。化け物であろうと鉄砲を撃ったところ、その弾をフワッと払われ、女は笑いながら再び髪をけずり始めたという。何度撃っても同じ結果になるので男は家に戻り、鉄砲の虎の巻を見たところ、そういう場合は人を撃たずに灯りを撃てと書き記されていたという。翌日の夜に、やはり膳足石へ行ったところ、やはり灯りが灯され女がいたので、今度は灯りを目がけて撃ったところ、見事に女に命中したという。しかし化け物と思って撃った女は、そのままの女の姿で倒れていた為、鉄砲撃ちは人を殺してしまったと、へたへたと座り込んでしまったという。だが、いつの間にか寝てしまった鉄砲撃ちであったが、太陽が昇り明るくなった目の前にいたのは大きな貉の死骸であったという。
この話と殆ど似たような話が、綾織町の笠通山にも伝わっている。
「大貉退治」
ここで気になるのは、無尽和尚と貉の関係だ。この膳足石は無尽和尚の寺屋敷近くの話である。また、この近くには無尽和尚の母親が貉であり、死ぬ際に人の為に成りたいという事で、乳母石に変わった話が伝わっている。また、上郷町に伝わる曹源寺に巣食った貉を退治したのもまた無尽和尚であった。これらは、何を意味しているのであろうか?