遠野の不思議と名所の紹介と共に、遠野世界の探求
by dostoev
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「遠野物語7(姥神)」

f0075075_0402251.jpg

上郷村の民家の娘、栗を拾ひに山に入りたるまま帰り来らず。家の者は
死したらるならんと思ひ、女のしたる枕を形代として葬式を執行い、さてニ
三年を過ぎたり。然るに其村の者猟をして五葉山の腰のあたりに入りしに、
大なる岩の〇ひかかりて岩窟のやうになれる所にて、図らず此女に逢ひ
たり。互に打驚き、如何にしてかかる山には居るかと問へば、女の曰く、
山に入りて恐ろしき人にさらわれ、こんな所に来たるなり。遁げて帰らんと
思へど些かの隙も無しとのことなり。其人は如何なる人かと問ふに、自分
には並の人間と見ゆれど、ただ丈極めて高く眼の色少し凄しと思はる。
子供も幾人か生みたれど、我に似ざれば我子には非ずと云ひて食ふにや
殺すにや、皆何れへか持去りてしまふ也と云ふ。まことに我々と同じ人間
かと押し返して問へば、衣類なども世の常なれど、ただ眼の色少しちがえ
り。一市間に一度か二度、同じやうなる人四五人集り来て、何事か話を為
し、やがて何方へか出て行くなり。食物など外より持ち来るを見れば町へも
出ることならん。かく言ふ中にも今にそこへ帰って来るかも知れずと云ふ故、
猟師も恐ろしくなりて帰りたりと云へり。二十年ばかりも以前のことかと思わ
れる。

                     「遠野物語7」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
五葉山の頂手前には、姥石神社というものがある。その姥石神社の御神体が、背後にある岩屋となる。沿岸地区には、難破船が多くあったらしく、また流れ着いた西洋人の話も多い。そして、その西洋人と地元の娘の結びつきもまたあったのだという。昔から「余所者は、幸せを運ぶ場合があるが大抵は、災いを運ぶ者である。」という認識のもとに立てば、漂流者である西洋人との結びつきによって、地域の娘を奪われるというものは、災い以外の何物でもない。

虐げられた娘、行き場を失った娘が山へと逃げる話は「遠野物語」に掲載されないものの中にも見出せる。この「遠野物語7」における行方不明となった娘もまた、その類となり、山にその意識を祀られた存在では無かったのか?

山に棲む者は、山姥となる。これは山神が本来女であり、様々なものを生み出してきた存在。つまり古くから山に生きてきた女のイメージから、その姿は若い娘ではなく、年老いた姥となっているのだろう。そのイメージ故に、年老いた姿となって人前に現れる。

「遠野物語7」における娘がいた岩窟とは、現在の姥石神社の御神体となっている岩屋であろう。山に逃げた女が山の神と結びつき、物語を生み、娘もまた山の主の一人として、山姥と変身し、信仰されたのかもしれない。
by dostoev | 2010-12-10 00:51 | 「遠野物語考」1話~ | Comments(0)
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