ある日から客が、3日程滞在していた。
一泊目の翌朝仕事に出かけたので、部屋の片付けに
部屋に入ったところ、部屋の畳中に長い女の髪の毛が
沢山落ちていた。その日の晩、その部屋の客が帰って
きて夕食を食べている最中に聞いたところ、昨夜は部屋
に女性を連れ込んだわけでもないそうだ。
そのまま一緒に酒を飲み、夜遅くまでその客と語り合った
のだが、最近不倫が妻にばれてしまったそうである。悩ん
だ挙句、付き合っていた女性とは別れ妻を選んだ為に、
彼女から怨まれていたそうである。
その為なのかどうかわからないが、翌日もその客が出か
けた後に、部屋には長い女の髪が残っていた。その日の
夕方帰ってきたその客に再び髪の話しをしたところ、押し
黙ったまま、ただ「済みませんが帰ります…。」という事で、
急遽その日の宿泊をキャンセルして帰って行った。
女の髪は、霊的な象徴として存在する。それ故か、女の髪
は生き様と情念を伝える霊的な媒体と成り得る。その為な
のか、別れた女性の情念が時空を超えて髪だけを具現化し
て伝えたのかもしれない。